イギリスのニューウェーブロックバンド「ニューオーダー」の前身として有名な伝説のパンクロックバンド「ジョイ・ディビジョン」。そのボーカリスト、イアン・カーティスが駆け抜けた波乱の人生を衝撃的に描いた本作は、青春期の若者の痛みを描いたドラマとして仕上がっている。2007年カンヌ国際映画祭のカメラドール・スペシャル・メンション賞受賞や、英国インディペンデント映画賞では作品賞をはじめ最多5部門を受賞し、音楽ファンのみならず多くの人を魅了している。
今回は、世界有数の写真家で本作を監督したアントン・コービン氏の来日記者会見の模様をお届けする。

コービン監督:今日はご来場ありがとうございます。自分が監督を務めた本作が日本で公開することになって大変うれしく思います。
司会者:なぜ「ジョイ・ディビジョン」のイアン・カーティスを題材にしたのでしょうか?
監督:もともと私は写真家ですが、ほかにグラフィックデザイナーなどさまざまな仕事をしてきました。次にどんな仕事をしたいかなと思ったときに、映画の仕事をしてみたいと思いました。そこでいくつかの脚本を読みましたが、どれも正直言って、しっくり来ませんでした。そしてある日、本作の脚本に出会ったときにこの作品だったら、自分に撮れるかもしれないと思いました。私はもともとオランダ出身ですが、以前にジョイ・ディビジョンの音楽を聴いてとても感銘を受けました。イギリスに移住したのは、ジョイ・ディビジョンの音楽に出会ったからと言っても過言ではないでしょう。イギリスに移ってからは、実際にジョイ・ディビジョンのメンバーに会って仕事をする機会を得ました。イアン・カーティスにも実際に会ったことがあります。
司会者:映画は全編モノクロですが、どのような意図がありますか?
監督:決して予算を抑えるためではないですよ(笑い)。ジョイ・ディビジョンのメンバーはいつも黒っぽい感じの服を着ていたり、アルバムのデザインも白と黒を強調していたりと、70年代後半のイギリスはグレーっぽい色合いを思い起こさせていました。そのため、この映画はモノクロの方が適切かと思いました。
司会者:実際にイアン・カーティスに会ったときの思い出やエピソードを教えて下さい。
監督:79年にジョイ・ディビジョンの写真撮影のためにイアンに会いました。彼はとてもシャイで、その時はとても内にこもっているようなイメージで、疲れているように見えました。後になって、もしかしたら当時の彼は色々な悩みを抱えていたのかな、ということを知りました。
司会者:初めて映画を作るにあたって、既存の映画監督に影響された部分はあるのでしょうか?
監督:ジャン・リュック=ゴダールや、アンドレイ・タルコフスキーなどが好きな監督ですが、あえて多くの映画を見ることは避けました。やはり映画監督としては経験豊富ではないため、この時点でいろいろ先を観てしまうと影響を受けてしまうと思ったので、好きな映画監督の作品は見ませんでした。1つだけ気に入った作品がありまして、ケン・ローチ監督の「ケス」という映画です。小さな少年が主人公で、彼の演技が素晴らしくて、ドキュメンタリー映画かと思うほどとても説得力がありました。
司会者:本作では音が静かな作りをしている部分もありましたが、映画でのサウンドの使い方についてお聞かせください。
監督:本作は音楽映画ではありませんが、音楽の使い方にはとても気を使いました。特にライブ・パフォーマンスの部分などですね。最近の映画は、どのシーンでもだいたい音楽が使われていると思いますが、私はあえて冒頭の部分ではあまり音楽を入れないシーンを作りました。その方がかえって観客の皆さんが集中してくれると思いましたし、効果的だと思ったからです。

司会者:イアンが亡くなって二十数年が経過しますが、いまでも愛され続けているのはなぜだと思いますか?
監督:彼は偉大な詩人であったと思います。だからこそ今でも多くの人たちがジョイ・ディビジョンの音楽を聴いてくださっているのではないかと思います。プライベートな部分は、良いことだけではなく多少なりとも嫌な部分も持ち合わせていたと思いますが、すごく他人に親切な部分もあったと思います。
司会者:今後、監督として撮影したいアーティストはいますか?
監督:現在活躍しているアーティストは、今の姿を皆さんが楽しんでくだされば良いことで、あえて私が映画を作る必要性もないと思います。映画監督としてこれからも活躍したいと思いますが、次は音楽とは関係ない作品、できればフィクションを作りたいと思います。
司会者:日本のファンの皆さんへ一言お願いします。
監督:日本にはこれまで何度も訪れていますが、最後に来日したのは15年くらい前でU2のメンバーに同行した時でした。日本はとても大好きな国で、食べ物もおいしく、美意識が高い国だと思います。今回も多くのスタッフの方のおかげで、たくさんのファンの方たちにもこの作品を観ていただく機会を設けて頂いたことを、心から感謝しています。
(更新日:2008年2月20日)
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