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作品名:「最高の人生の見つけ方」

やりたいことこそが人生の潤滑油
 
©2007 Warner Bros. Ent.

アメリカのサミュエル・ウルマンという詩人が言った。「青春とは、人生におけるある期間を指すのではなく、心の様相をいう。臆病(おくびょう)な自分に打ち勝ち、安易な道に流されず、冒険心を忘れない姿勢である。これは20歳の少年よりも、60歳の大人に備わった力であることが多い」。青春とは心意気であり心で感じるもの。そして酸いも甘いも知り、経験という失敗と、後悔という傷跡を背負った大人だからこそ、味わえる青春があるということだ。

そしてこの作品は、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン、70歳の男たちによる、まぎれもない青春映画だ。しかも、青春時代に戻るという過去への郷愁ではなく、これから青春してやるぞ、というハッチャケジジイたちの老練の青春物語なのだ。青春には、楽しさと切なさがいつもセットでついてくる。そして、それを越えると「人生」を感じる。だから叫ぶのだ。「青春のバカヤロー」と。だが、今回はほろ苦さと湿り気があった若い頃の「バカヤロー」とは違う、「どうだ、バカヤロー!」と挑戦的な笑顔がそこにはある。この「どうだ」がポイント。まさに経験に裏づけされた自信、人生に果敢に挑んだという自負、それがなければ言えないセリフだ。そんな「どうだ、バカヤロー!」の精神が、この作品にはあふれている。

大金持ちの実業家エドワード(ジャック・ニコルソン)とワーキングクラスの自動車整備工カーター(モーガン・フリーマン)。天と地ほども違う生活、経歴、人生、そして性格。だがたった一つだけ、共通点があった。それは、人生の期限を言い渡されたこと。末期がんで、余命6カ月。彼らは人生のデッドラインを知り、人生最後の冒険をするため病院から抜け出す。冒険の地図は、死ぬまでにやりたいことを書き出した「棺おけリスト」だった。

モーガンが演じるカーターは、家族のために自分の夢を犠牲にして働いてきた男。知的で口数少なく控えめなタイプで、リストに記した願いも「何か雄大なものをこの目で見る」「涙が出るほど笑う」など精神的な充足をもたらすものが多い。それに対し、ジャックが演じるエドワードは、今まで金を生み出すことに全人生をささげてきたファイターだ。「やりたいこと=実行すべきこと」という戦闘態勢で生きてきた彼は、「世界一の美女とキスをする」「スカイダイビングをする」など、実際にやることをリストアップしていく。

知的で何事にも動じないモーガンと、大胆不敵でクレージーなジャック。ハリウッドを代表する名優がそれぞれの得意キャラでコンビを組んでいる。しかも動と静のコントラストで互いの個性を引き出す。すばらしいに決まっている。50年以上のキャリアで磨きかけてきた個性の技は、生きる伝統工芸に近い趣すらある。熟練されたユーモアは、時にはコントのように軽快にばかばかしく、時には皮肉たっぷり辛口ジョークを飛ばし、そして笑いと笑いのすき間に一瞬だけ人生の真実と哀愁をしのばせる。そのメリハリ。物語上のリアリティーなどは大雑把なスター映画という観は否めないが、そこはご愛嬌(あいきょう)。それを見事にカバーする個性で、往年の名コンビのジャック・レモンとウォルター・マッソーのごとく、いつまでも枯れないユーモアの魅力を披露してくれる。

監督は『スタンド・バイ・ミー』の名匠ロブ・ライナー。かつて人生で初めて「死」と向き合った少年たちを描いた名匠が、今度は「死」を知り、「生」と向き合う老練の男たちを描く。「死」が少年時代という青春を終わらせることもあれば、「死」が最後の青春という「生」を始めることもあるのだ。

「できない理由」を探しているうちに人生を終えてしまっていいのだろうか。いいわけがない。だから「やりたいこと」をリストにして、それを人生の潤滑油にする。まださびてないぞ。オイル点検という「老いる点検」。しっかりオイルを入れて「老いる」防止に努めること。それが青春の心意気なのだ、とこの作品は伝える。そして、青春はいつだって大切なものを心にプレゼントしてくれる。

  

(Written by 柏木しょうこ)

(更新日:2008年05月07日)

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