三峡ダムや上海など中国でどんな環境変化が起きているのか。そして私たちの星の未来は? そんな問いかけを、写真を通して訴えかけたドキュメンタリー映画「いま ここにある風景」。映画の主役で、U2のボノとともに「地球環境に貢献する人物」賞を受賞したカナダの国際的写真家、エドワード・バーティンスキー氏が、7月12日(土)の公開を前に記者会見を開いた。

エドワード:本作「いま ここにある風景」がアジアで初めての、それも日本で劇場公開されることになり本当にうれしいです。これを機会に他のアジアの国々でも公開されることを願っています。
この作品は、人間が環境に対してどんなインパクトを与えているのかを見つめた作品です。地球に65億人いる中で、このままのスケールで拡大していけば、後々どうなるか。いま地球は我々の人類の一つの成功の結果として、非常に苦しんでいます。この現状に、決して悲観的にならず、そして、誰かに責任を求めることもなく、非常に人間らしく多面的な問題として描いた作品です。
司会者:写真と映像とで、メッセージの伝え方の違いは感じられましたか?
エドワード:写真というものは動きや言葉がなく、ただ静かにそこに存在します。私自身のアイデアを写真の中に込めることもできますが、見た人の解釈で初めて完成するのだと思います。もちろん見ている方によって解釈は変わります。反対に映像は時系列、時間がありますし、言葉もあります。つまり見ている人が今どの場所にいるのかという文脈みたいなものを与えてくれます。今回の映画に関して言えば、どういう風にしてこの作品を見たら良いのかという前提が、その段階で設定されるわけです。それはスチール写真では不可能です。つまり、スチール写真に見る映像を映画というメディアで表現しているのです。
司会者:エドワードさんのこだわったポイントはどこでしょうか?
エドワード:冒頭にある工場は、私が足を踏み入れた中でも最大規模の工場です。ここで撮影したのは、産業がここまで大きく成長してしまったという部分を見せるためです。また、日本やアメリカなどの先進国で学んだ様々な知識や製造工程などに関するノウハウが、今では中国の産業に移行している。先進国では想像できないような、大きなスケールで行われているということを見せるシーンでした。ただ、オープニングで8分間もの長いシーンを見せたということについては、ジェニファー監督も、そして、撮影監督のピーター・メトラーも素晴らしいアイデアだったと思っております。見ている人はだいたい4分間くらいで飽きてくるものですが、今回のこの8分間を気に入ってるのは、見ている方が8分間の間に瞑想(めいそう)するかのような状態に置かれるためです。
司会者:目に見えにくい環境問題を写真でどう撮るか、どのように考えましたか?
エドワード:環境のダメージというものを、どうやって写真で撮っていくか考えました。意識的にありがちな画というのは避けました。中国の写真を見ていただくと、空が写っていると思うのですが、空は決して青くないということに気付かれたと思います。それは石炭を燃やして空が煙っているからなのです。これは中国に限らずに、どの国でも同じような状況にあり、キレイな青い空は、だんだん見られなくなっています。実際に、産業革命の初期の頃、空気汚染のために亡くなった方がいるという事実も残っています。産業革命から、環境に対する不幸というものが、既に見られていたと思います。
自分がいろいろな視点を持って描くということは、今までの歴史と我々を再びつなげるかけ橋となり、人類の住む世界を明るくするためと考え、この作品を撮りました。
司会者:世界中でご覧になる方々へメッセージをお願いします。
エドワード:作品を見た中国の方も随分いらっしゃるとは思うんですが、実際この作品を撮影している時に、自分のアシスタントをしてくれた中国の方々にも、話や意見を聞きました。そして、「もしこの作品が中国で公開されることになったとしたら?」と聞いたところ、大多数の意見は、やはり「あまり喜ばれないだろう」と言われました。やはり自分たちが置かれている生活が変わっていく中で、産業社会に変わっていく様子は、決して中国の人としては祝福するものではありません。自分としては、そういった部分を常に作品の中で問いかけていますので、ご覧いただきながらお考えください。

(更新日:2008年07月02日)
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