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映画散歩

レビュー 映画評論家や著名人による映画レビュー

ヒトラーの贋札 〜ユダヤ人らのジレンマ描く

レンブラントの夜警
©2006 Aichholzer Film & magnolia Filmproduktion Alle Rechte vorbehalten

第2次世界大戦時のナチス・ドイツをめぐる秘話は尽きることがない。これは、よく知られているナチの贋札(にせさつ)作りをめぐるお話で、贋札作りに従事したユダヤ人の側から描いているところに新味がある。

1936年、ベルリンでパスポートや紙幣の偽造をやっていたユダヤ人サロモン・ソロビッチ(カール・マルコビクス)は、犯罪捜査局のヘルツォーク少佐に捕らえられ、強制収容所送りになるが、やがてヘルツォークの裁量でザクセンハウゼンの強制収容所に移される。ここは実はナチの贋札工場だった。

サロモンことサリーは、印刷技師のブルガーや若いコーリャなどとともにポンド紙幣の贋造(がんぞう)に従事する。イギリス経済を混乱に陥れる「ベルンハルト作戦」のためだ。

贋札がうまく作れないとガス室送りが待っている。成功すれば憎むべきナチを助けることになる。贋札製造に従事するユダヤ人たちのそういうジレンマが、監督ステファン・ルツォビッキーによってわかりやすく描かれる。

この映画でいちばんいいのは、物語の中心人物サリーを演じるマルコビクスの、転んでもただでは起きないような面構えである。極端に言うと、彼の抜け目なく、したたかな面構えと演技で、この映画は持っている、と言っていいくらいだ。対照的にサリーを利用したヘルツォークが甘く見える。つまり、ユダヤのつよさにくらべたら、ナチははるかにもろかった、と言うのが、この映画の結論となる。

(品田雄吉・映画評論家)

掲載:2008年01月18日朝日新聞夕刊紙面

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