アメリカの中産階級の女性の間で、読書会がブームだそうである。何人かが寄り合って、一冊の本を論じ合うのだ。一方で、19世紀初めのイギリスの女性作家ジェイン・オースティンの人気が衰えを知らないという。地主階級の娘の恋愛や結婚を描いた作家だ。そこで、丁度(ちょうど)ころ合いの女性たちに、オースティンの読書会を開かせる――着想は単純なのである。
原作がカレン・ジョイ・ファウラーのベストセラー小説で、脚本、監督がロビン・スウィコード。人生と芸術がからみ合う知的な娯楽映画といった体の作品である。
離婚歴6回のバーナデットと未婚のジョスリンが、夫から離別されたシルヴィアを慰めるべく、オースティン全6作品を読破する読書会を思いつく。バーナデットによれば「オースティンは人生最高の解毒剤」なのだ。シルヴィアの娘のアレグラ、高校教師のプルーディー、それに唯一の男性グリッグが加わる。
物語には趣向がある。6人の人生と、それぞれが基調報告を割り当てられた作品とが響き合う形になっている。例えば、ジョスリン担当の「エマ」の場合。大の世話好きのジョスリンと他人の縁結びを楽しむエマとが重なる。
スウィコード監督の語り口は、軽妙でリアルで、どこか優雅な味が捨てがたい。
ただし、オースティンという素材に過度に寄りかかっているのが気になる。今も昔も人間の本質に変わりはない、というテーマはテーマとして、現代の迷える中産階層が200年前の人物になずみすぎていないか。だれもが古い鋳型から自由に手足を伸ばしていないように見える。
それはそれ、演技のアンサンブルはいいし、後味もいい。
(秋山登・映画評論家)
掲載:2008年04月11日朝日新聞夕刊紙面
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