南仏ニースのキャバレーを舞台に、人生の光と影、親子の絆と溝が映し出されていく――今年のフランス映画祭のオープニングを飾った「輝ける女たち」の主人公、ニッキー(ジェラール・ランバン)やアリス(カトリーヌ・ドヌーブ)は、フランスで言うところの「団塊世代」だ。若いころに開放を求めて上の世代を否定し、自由を謳歌して生きてきた世代が、ひとつの死をきっかけに改めて自分の生き方と向き合う姿が描かれている。脚本も自ら手がけたティエリー・クリファ監督に、作品について聞いた。(聞き手:どらく編集部・山田亜紀子)

舞台に表れる華やかさと舞台裏という、外見と幻想の対比のために選びました。僕は舞台裏にすごく興味を持っているんです。それから、キャバレーはフランスでも消えゆく昔のものです。ですから、キャバレーを通じて見える懐かしい時代と、今を生きる若い世代のニノとマリアの暮らしぶりとも対比させています。そこにあるジェネレーションギャップを描きたかったんです。
フランスでも、ニッキーの世代はちょうど60〜70年代に性の解放や学生争議があり、解放を求めた世代。自由を味わえた世代なだけに、逆に大人になって振り返ると、「自分たちは何をしてきたんだろう」という思いが彼らにはある。一方の子どもたちも、親がどんな人生を生きてきたのかを聞くことはタブー視され、できなかった。それぞれが、過去に触れずに生きてきたのです。けれども、大切な人の死をきっかけに、みんなが過去の人生と向きい、お互いにコミュニケーションが始まった。遺産相続は自分の人生の収支決算でもあり、人の死は凝縮した時間をみんなが過ごす場面です。

家族であり、伝えていくこと、継承ということです。作品のなかで「あなたに似ないように、どれだけ苦労したことか」と息子が父親に言う場面があります。これが、この映画を最も集約しているせりふだと思います。大人になると、親を好むか好まないか、会うか会わないかということを、子どもが選ぶようになる。そこで、親も子も、どこから自分はやってきたのかという自分の根っこはどこにあるのか? 自分は何者なのか、とあらためて問い直し、自分と出会うのだと思います。自分を知るということは、とても時間がかかることですよね。
そうです。いろいろな対比を意識しました。地方都市のニースを舞台に選んだのは、首都のパリと対称的だからです。アルジェリア出身のニノにとっては、太陽と海の町であり、これもパリにはないものです。

ライトや舞台装置、衣装など、芸術的な面にはとても力を入れました。私の映画はとてもフランス的だと言われていますが、アメリカの50年代を強く意識しています。たとえば、ドゥグラッサー、ビリーワイルダーなどの作品が僕はとても好きで、そうしたものが反映していると思います。感情がぶつかり合う複雑な人間ドラマだからこそ、ドロドロしたものではなく、スタイリッシュに描きたかったんです。
脚本を書いているときからです。もっとも、実際に引き受けてくれるかどうかは分からなかったわけで、相手を説得することが必要でしたが、思い描いた通りにできました。
俳優は、偉大になればなるほど、撮影のときには役柄に徹するものです。ですから、苦労はありませんでした。おのおのが協力し合って、劇団のカンパニーのように動いてくれ、シンプルに制作が進行していきました。脚本に変更はありませんでしたが、俳優たちがより崇高なものにしてくれた、と思っています。
僕は日本が大好きです。日本の文化も食べ物も。巨匠・小津安二郎の影響を受け、インスピレーションを受けました。伝統と新しい進化するもの、親子といった複雑なものをシンプルに描く、手塚や谷口の漫画も好きです。言いたいことや複雑な絡み合いを心に直接語りかけてくるところがすごいと思います。フランスで日本のアニメ映画は大成功を収めていますが、僕はアニメや手塚治虫などの漫画も好きです。

オープニングの舞台挨拶で観客と接し、国境を越えて、観客に感情の高まりを与えられたことが分かった。監督として、これほど光栄なことはないです。僕は小津や今村(昌平)から影響を受けて作品をつくっている。それを日本の観客が観て、文化や慣習も違う人たちが感動してくれた。本や映画というのは、作品を通して友情のつながりを確認でき、対話ができる。つながりやコミュニケーションが普遍的なメッセージになることがすばらしいと思います。
★「輝ける女たち」は4月14日(土)よりBunkamuraル・シネマほかにて全国ロードショー
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