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映画散歩

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「人と人とのコミュニケーション」がテーマです
「ベクシル−2077日本鎖国−」〜曽利文彦監督インタビュー

ベクシル
©2007 ベクシル製作委員会

3Dライブアニメ「ベクシル−2077日本鎖国−」が8月18日より公開される。映画「ピンポン」で新たな映像表現を見せ、デジタルの先端をいく映像クリエイターでもある曽利文彦監督に、公開前に「ベクシル−2077日本鎖国−」の魅力を聞いた。



曽利監督
―― なぜ「鎖国」というテーマを選んだのですか?

最初にきっかけとなったのは、国の「鎖国」というよりも、個人レベルの話なんです。今、コミュニケーションがどんどん少なくなってきている、いろいろな技術の進歩によって、メールや携帯などの発達で、顔を合わせて話をする機会がどんどん減ってきています。直接対話をすることは面倒だし、大変なので、テクノロジーによってバイパスしてしまおうという流れがここ10年くらい多くなってきていると思います。

でも、直接対話をはしょってしまうと社会全体が崩れてしまうのではないか。直接コミュニケーションしなければ、自分の情報を伝える必要が無くなってくる。個人が知らないうちに孤立化していく。そんな状態を分かりやすくビジュアル化するのは国という単位での孤立化で、それが「鎖国」につながりました。 。

―― 実写を意識してアニメーションを作られている気がしたのですが、監督の作品「ピンポン」のように実際の人を使うという考えは無かったのですか?

実写でやれるようなスケールではありません。予算規模から考えても、ハリウッドレベルでもなかなか映画化は難しい話です。だからこそCGでやる意味がある。

ただ、演出論としては実写と同じ演出をしています。普通のアニメーションと違うのは、アニメーションはデフォルメの文化なので、いかに完成されたアニメーション表現で誇張していくかに面白さがあるのですが、そのような観点から考えると「ベクシル」は自分にとっては実写映画です。

普通のCGの映像だとカメラも物理法則に従って動いてはいない。しかし、「ベクシル」のカメラワークは実写で動ける範囲のカメラワークだったりする。そのままコンテを実写で撮影できるという内容になっています。

―― 作品の中で、日本だけは昔の風景、戦後まもなくといった設定になっていますが?

コンビニやスーパーに行って物を買うのに口を聞かなくても物が買えるし、ネットで買ってしまえば当然会話もなく買える。そういう街へどんどん変わっていくだろうし、実際にそうなっている。「ベクシル」が住んでいるのはロサンゼルスですが、コミュニケーションが疎遠化して人が会話をしない街として登場してきています。

それと対比して、いつまで戻ればコミュニケーションがあったのか、と思った時に出てきた答えが、映画に登場する東京という街だったりします。そんなに昔じゃないような気がするし、なんとなく自分達の記憶の中にもあるような街だったりする。

―― コミュニケーションという言葉を意識されていますが、この映画の中心は「人と人とのコミュニケーション」ですか?

そうです。

映画作りとはコミュニケーションなんです。映画はいくらCGを使って技術が進んでも結局、人と人がぶつかり合って創作していくものです。文学や絵画と違ってパーソナルな創造物ではないのです。

何十人ものスタッフが思いをぶつけ合って山のようなコミュニケーションを経て映像になっていく。そういった映画作りそのものが社会の縮図みたいなところがあって、映画作りから人のコミュニケーションを取ったら映画はできません。ネットで会話して、携帯で話してそれで映画ができるかと言うと、そんな形で出来あがった作品はロクなものではない。

曽利監督
―― なぜ声優に黒木メイサさんを選ばれたのか、作る際に黒木さんを意識して作られたのですか?

良く聞かれる質問ですね。黒木さんにお願いした時は、既にベクシルというキャラクターがあって、映像もありました。ベクシルの向こう見ずで、完成されていないというか、初々しいこれからの人材という部分を声優にも求めるし、ベクシルにオーバーラップするような役者さんに演じてもらいたいという思いがあった。

そんな思いの中で、黒木さんというこれからどんどん大きくなる女優さん、しかも目の鋭さや外見がベクシルとオーバーラップするようなイメージ、そして出てきているオーラがベクシルそのものだと思った。

実際にお願いしてから、出来上がった映像を見てキャラクター作りをするのですが、その中で、不思議と表情とかが似ているような気がしてくる。意識して黒木さんに似せたわけではなく、本当に不思議なんですが似ている気がする。ふっとした表情などが似ていたりするんです。偶然と言えば偶然なんですが、何か運命的なものを感じました。

―― 「どらく」のターゲットとしているシニア世代の方に向けて、一番楽しんでもらいたいポイントや楽しみ方のこつなどがあれば教えてください。

我々より上の方だと、学生運動とかを経験しているかもしれません。ベクシルにはレジスタンスも出てくるので、何かひとつの目的に向かって集団で、自分自身を隠しながら、全体の目的のために自己犠牲を払うみたいな部分でいくと、気持ちが熱くなれる部分が「ベクシル」にはたくさんあると思います。

どらく世代の方はアニメを見ない方が多いとは思いますが、「ベクシル」はアニメとは全く違うものなので、食わず嫌いではなく、一度試しにご覧頂くとすごく気持ちが熱くなれると思う。どちらかと言うとどらく世代の方が燃えるのではないですかね。普段、もしかすると聞かない音楽とかが入っている。テクノ、ハウス、ダンスミュージックがふんだんに使われていますが、いかにそういったものにハートがあるかということを「ベクシル」を通して理解してもらえると思います。

―― 音楽は映画の中で重要な位置づけということですね?

音楽のない映画はつまらない。音楽が無い段階で、音楽が聞こえてくるような映像を作ることが重要だと思っています。いつもスタッフに言っているのですが、音楽を付けていない段階で気持ちの良い映像は、音楽が乗ることで何十倍にも気持ちが良くなるのだから、音楽が無い段階でいかに映像として良いかはアクション映画の鉄則であると。

曽利監督
―― 今回の映画でやり残したこと、次回チャレンジしたいと思ったことはありますか?

やりきった感があります。次やるとしたら技術的なことではなく、スケールやお話に純粋にたどりつくのではないかな。今回の作品を完成させて、演出家として安心した部分はあり、この表現はおもしろい、と思っています。

―― 最後に読者へのメッセージをお願いします

「ベクシル」は単純なストーリーでめんどくさいことにはなっていないので、アクション映画として楽しんでもらえれば嬉しいです。


(文・どらく編集部 三橋有斗 写真・藤坂樹理)


★「ベクシル−2077日本鎖国−」は8月18日(土)より全国ロードショー

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