
日本では越路吹雪が歌ったことでも知られる有名な「愛の讃歌」など、残した名曲は数知れず。世界の歌姫エディット・ピアフ。彼女の波乱に満ちた生涯をつづった「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」が9月下旬に公開される。オリビエ・ダアン監督(以下O)と主演女優のマリオン・コティヤールさん(以下M)が8月に来日し、記者会見が開かれた。

O:この作品が、日本の皆さんにどう受け止められるかがとても気になっていて、気に入ってもらえることを願っています。
M:来日するのは今回で2度目です。前回も仕事でしたので、観光をしたり、東京の街を迷子になったりする楽しみがないのが残念ですね。ただ、海外のいろんなところでインタビューを受けているなかで、日本のジャーナリストの方の質問はすこし変わっているので、とても楽しみです。日本の洗練された感性も気に入っています。
O:成功をおさめた喜びがある一方、意外でもあります。脚本を書いたり映画を撮っていたりする間は、まさか世界中をPRして回るなんて思っていなかったですから。

M:最初は、アカデミーの最有力候補の一人といわれても、他人事のように聞いていました。でもなんとなく現実味を帯びてきたら、やっぱりわくわくする気持ちはおさえきれません。
O:撮影時、現場はスタッフを含めてみな200%全力を注いでいましたから、一体感という大きなエネルギーが生まれました。みんな集中していたので、まるで仕事をしてないかのように感じられたほどです。特にマリオンはすばらしく、完全にその役に入り込んでいましたね。

O:彼とは以前から知り合いでした。知り合ったころから仕事を一緒にしたいと願っていましたので、今回一緒に仕事ができて大変うれしかったですね。日本だけでなくイタリアをはじめ、いろんな国籍のスタッフでチームを構成していて、このフランス的なストーリーを組み立てていくのを見るのはたいへん興味深かったです。永田さんには、フランス人とは違った視点をもたらしてくれるのではと期待していました。実際、大変すばらしい撮影監督です。
M:実は、エディット・ピアフの人生について、それまでほとんど知らなかったのです。もちろんフランスでは非常に有名な人なので、歌は何曲か知っていましたが、彼女の人生についてはまったく知らないも同然でした。シナリオを読んだときに、初めて彼女の人生について知り、さまざまな本を読んだり、残っている資料、インタビュー映像などを見て勉強しました。そうしていくうちに、少し親密感が感じられたので、ピアフの偉大さに対するプレッシャーはなくなっていきました。
M:一人の女性ではありますが、それぞれの年代に個性がありますから、それを描き出すのは、女優にとってとてもチャンスだと感謝しました。大丈夫かなと不安に思っていたのは、まだ自分が知らない40代。しかもピアフは47歳でこの世を去っていて、そのころの容貌(ようぼう)は20歳くらい年上なのではと思わせるくらいでした。そんな私の知らないピアフの中にあるすばらしいエネルギーを見つけ出しながら、自分の中でうまくバランスを見つけていった感じなんです。最初は不安でしたが、40代のピアフと自分との合致点、こうすればいいんだという目印を見つけたとき、ものすごい喜びに変わっていきました。
M:職業や人生に対する情熱の大きさ。観客と感動を分かち合いたいという思いが強いところが共通点でした。違う点はたくさんあります。なかでも孤独に対する態度でしょうか。私は孤独がそれほど怖くありませんし、どちらかといえば好きな方ですが、ピアフはまったく逆。一人になることをおそれていたところがあります。もう一つの違いは、情熱がしばしば度を越すところ。ピアフは、自分の人生や健康を犠牲にしてまで、舞台に立ちたい、歌い続けたい。そうでなければ生きる理由がないと、芸術に一途なところがあります。私も情熱は人一倍持っていますが、もし女優という職業をやめたとしても、彼女ほど自分の存在理由を見失うことはないと思いますし、女優という職業のために自分の健康を損なうような破壊的な生活はできませんね。

M:撮影4日目にして40代、1960年のシーンを演じなければなりませんでした。すでに体も弱って、髪の毛もオレンジになってと、すぐに年をとったシーンがあり、一週間くらいはなかなか自分の目印を見つけられなくて、試行錯誤でした。でも、いけそうだという瞬間は自然にやってきました。準備は十分にしておかなければならないけれど、実際に撮影現場に入ったら、考えずに体ごとぶつかっていくことが大事だと思います。そうしたことで、試行錯誤の瞬間はすぐに喜びの瞬間に変わり、自然に演じられたのです。
★「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」は9月29日より有楽座ほか全国拡大ロードショー
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