「映画の未来へ」を合言葉に多彩な映画を紹介する第8回東京フィルメックスが25日閉幕した。上映作は37本。ワールドシネマの最前線を示す新作から社会派・山本薩夫の卓抜した娯楽性を伝える回顧特集まで、小規模ながらも吟味されたプログラムで様々な発見をもたらした。

アジアの俊英が競うコンペティション部門は10本が参加。最優秀作品賞にイスラエルの静謐(せいひつ)な家族劇「テヒリーム」、審査員特別賞に香港の娯楽活劇「アイ・イン・ザ・スカイ」という対照的な作品が、ともに審査員の全員一致で選ばれた。
ヘブライ語で詩編の意味の「テヒリーム」は、71年生まれのラファエル・ナジャリ監督の第5作。厳父の突然の失跡が敬虔(けいけん)なユダヤ教徒一家にもたらす葛藤(かっとう)を描く。宗教的背景に難解さもあるが、10代の息子の心理を丁寧に追い、指標なき時代をどう生きるかという普遍の問いを投げかけた。
「アイ・イン・ザ・スカイ」は、ジョニー・トー監督「PTU」などの脚本家・游乃海(ヤウナイホイ)が初監督。サイモン・ヤム率いる警察監視班とレオン・カーファイ率いる強盗団の攻防を描く。ひねりの利いた物語と、膨大なカットを滑らかにつないだ緊迫感ある演出。特別招待のトー監督「Exiled放・逐」も観客賞で、師弟そろって受賞となった。

「今後の映画の重要な方向性を示す作品を選んだ」と審査委員長イ・チャンドン監督。ほかにも、カンヌ映画祭新人賞の「ジェリーフィッシュ」、若者の成長を新鮮な語り口で描く「ドラマー」「13歳、スア」、素人監督が故郷の人々に寄せる共感が胸をうつ「最後の木こりたち」など、見どころある作品が多かった。
ファンとゲストを結ぶ企画も充実していた。連日のトークショーは、各国の映画事情や国際共同製作、映画教育など多彩な話題を提供。詳報は公式サイトにも。大量宣伝の大作が市場を席巻しているけれど、映画にはもっと多様な可能性がある。主催者と参加者がそんな思いを共有していることが随所に感じられる9日間だった。
(深津純子)
掲載:2007年11月28日朝日新聞朝刊紙面
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