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映画散歩

スペシャル 編集部オリジナル企画

「譜めくりの女」ドゥニ・デルクール監督インタビュー
「間」が想像力をかき立てる


観客の拍手を浴びるピアニストとかたわらの「譜めくり」。緊張感高まる演奏会の舞台裏で繰り広げられる2人のドラマ――スリリングな設定に置かれた女性2人のあこがれや絶望、愛、憎しみをきめ細かく描いた「譜めくりの女」。

3月のフランス映画祭で来日したドゥニ・デルクール監督に、本作のみどころなどをインタビューした。映画監督だけでなく、ストラスブール国立音楽院の教授としても活躍。過去の日本での滞在経験が、今回の制作に大きく影響を及ぼしたという。




―譜めくりを主人公にしたのはなぜですか?

譜めくりは基本的に陰に隠れた存在で、実生活ではそれほど重要ではないだろう。ただ、ピアニストと譜めくりという、いわば陽と陰の関係は、映画としてはとても絵になる存在だと考えた。

異なる性質を持った2人が舞台に一緒にいて、観衆に見られている。加えて、ピアニストは背後に譜めくりが立ち、観客とは違う視線も感じながら演奏しなければならない。話の展開によっては主客を逆転させることができ、一つのジャンルが形成される映画になるのではないかと思った。

私の親類のピアニストにもアシスタントとして譜めくりがいるが、「私もアシスタントに食い尽くされてしまうかもしれない恐怖を覚えた」と言っていた。

―2人の女性に演技を指導する際、特に意識したところはありますか?

2人には「日本人のように演じてくれ」と頼んだ。2004年、京都に半年間滞在し、日本の伝統芸能に触れたり世阿弥の「花伝書」を見たりした。その時、日本文化特有の間(ま)というものの存在にとりつかれてしまった。何かをやり続けることよりも、的確に間を取ることが、どれだけ芸術の中で有効かということを知った。

だから、2人には間を作り出すようにと強調した。それによって、観客が想像力を刺激され、2人の女優の内面に入り込んでいきたいと思わせることになると考えた。2人は期待にこたえて演技してくれた。

また、動作をゆっくりすることも指導した。速くするよりもゆっくりする方が、ずっと観客に訴える力が大きい。ほかには、メラニーのほほえみ方。大げさな表情はしないけれど、どんな意味が込められているかを考えながらほほえみ方を探し、2カ月費やした。ただでさえ難しいのに、「日本的に」と繰り返し言い続けたから、反発を受けたけれど。

―ピアノを題材にした映画にもかかわらずBGMが少ないと感じました

全く音のないシーンもあったが、これは緊張感を高めるため。沈黙が支配するシーンというのは、映画を見ている人に、何かが起こるかもしれないという緊張感を植え付ける。

空いているところを埋めるような音楽というのは、私は好きではない。ここぞというところにぴったりの曲を入れるのが私のやり方だ。

私はどんどん内容を削ってシナリオを完成させていくタイプ。1回書いてみて、ここはいらないとか、ここでのセリフはそぐわないというところは、どんどん削っていく。すると、一種の「穴」みたいなものができるが、その穴を観客が自分の想像力を駆使して埋めていくという作業こそが、映画を見る楽しみなのではないかと思う。

―この映画で観客に伝えたいことは何ですか?

いっぱいありすぎて絞るのは難しいけれど、まずは「情熱には気をつけろ」ということかな。あと、「音楽は生活や人々の人生を甘美にする」と言う人がいるが、それは違う。人生はそんな生やさしいものではないよ。


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「譜めくりの女」
©Philippe Quaisse

「譜めくりの女」

物静かな少女メラニー(デボラ・フランソワ)の夢は、ピアニストになること。しかし、パリ音楽院(コンセルヴァトワール)の実技試験で、審査員である人気ピアニストのアリアーヌ(カトリーヌ・フロ)がとった無神経な態度に激しく動揺し、ピアニストへの夢を封印する。十数年後、美しく成長したメラニーは、慕い、ひそかに憎しみ続けたアリアーヌに再会。そうとは知らないアリアーヌは、メラニーに演奏会の成功の鍵を握る「譜めくり」を依頼し、やがて絶大な信頼を得るようになる。だが、メラニーの心の奥底では、密かな憎しみが続いていた……。

2006年カンヌ映画祭「ある視点」部門に正式上映され、高い評価を獲得した。


4月19日(土)よりシネスイッチ銀座、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー


(文:どらく編集部 勝井善明)

(2008年04月09日)

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