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19世紀半ば、美しいシチリア島、カターニャの地で繁栄していた一族があった。国王の代理をつとめるスペイン副王の末裔(まつえい)である名門貴族・ウゼダ家だ。イタリア統一を目前にした時代、抑圧的な家父長制のもとに生まれた嫡子とその父の激しい対立を軸に、さまざまな人間模様を織り込んだ「副王家の一族」のねらいを、ロベルト・ファエンツァ監督に聞いた。

原作は、ナポリ出身のフェデリコ・デ・ロベルト(1861〜1927)が1年で書き上げた「副王たち」。伊文学の名作「山猫」に影響を与えたといわれる小説だ。1894年、あたらしいイタリアが生まれようとしていた、劇中とも重なる時代に著されたこの小説は、ほとんど評価されず、100年たって読者に受け入れられるようになったという。
ようやく日の目を浴びてきたこの原作について、ファエンツァ監督は「イタリアをはっきり表している」小説だと語り、それを<レントゲン>にたとえる。
「そう、イタリアのレントゲンといってもいい。家族、教会、政治という圧迫が非常に強い三つの力を、(原作は)はっきり描き出している。だが、誰も救われない。政治、国、教会すべてがネガティブな物語だから惹(ひ)かれたんです」


本作の主役は、華やかなオーラをまとったひとりの男だ。ウゼダ家の嫡子である長男コンサルヴォ。演じたアレッサンドロ・プレツィオージは、イタリア一美しい男と呼ばれる美男子で、スクリーンに現れると誰もが目をひかれる。
「この役にぴたりとはまる俳優を使うより、美しさを持った人間を表したかった」と、同監督は選んだ理由を語る。人間の醜悪な部分も多く描かれたこの作品の主役に監督が求めたのは、なにを置いてもまず「美しさ」だった。
対する父親の役には、「予想できないものが欲しかった」と、喜劇俳優のランド・ブッツァンカを起用。「彼の持っているグロテスクなものとコミカルなもので、この人物、この物語の悲劇性を和らげたかった」という。
華やかな美しさを放つのは、人間だけではない。邸宅、衣装、インテリア、どれをとってもため息が出るほどの荘厳さと洗練された美しさでキャストを囲んでいる。「洗練されていることは文化の一部」だととらえ、過去の栄華をきちんと表現したかったという監督のこだわりどころだ。
劇中の一家の邸宅は、ウゼダ家が実際に住んでいた家を使用した。衣装は「マリー・アントワネット」で3度目のアカデミー賞を受賞しているミレーナ・カノネロが担当。4時間おきにシャツの襟をぬらし、少しの乱れもないように常に整えるなど、当時の豪華さを再現するのに、細部にも手間ひまを惜しまなかった結果が、イタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の4部門(美術、衣装デザイン、ヘアメーク、メーキャップ)受賞に結実したのだろう。


ロッセリーニやヴィスコンティも映画化を望んだというこの作品。ファエンツァ監督が15年かけてでも撮ろうと思った何よりの理由は「挑戦」だったという。 イタリア国内での公開時には大きな論争を呼んだという。予想していなかった攻撃に批判。「セリフはすべて原作からとったのに、人間はいつの時代も同じことで怒るものだね」と、いたずらな微笑を浮かべる。
そして、こんな解説を加えた。
「この作品は、イタリアのDNAを物語っていると思う。描いているのは、過去のイタリアだけれど、現代のイタリアもまったく同じです。イタリアは同じ歴史を繰り返す、額縁から出られないような国。150年前に起こったことが今も起こっているし、前進というよりは後退している気がする」
ファエンツァ監督は、現在のイタリアに対する<問題意識>を持っていることを隠さない。

「副王家の一族」
ブルボン王朝支配下、イタリアへの統一を目前に控えた19世紀半ばのシチリア―。かつてのスペイン副王の末裔であり、シチリアの名門貴族であるウゼダ家では、絶大なる権力を持つ極めて封建的な父と、嫡男であるコンサルヴォが激しく対立していた。遺産相続のために父に失脚させられる叔父、母の死を悼むことなく父と再婚をする叔母。そして父のために自らの恋をあきらめ、政略結婚をさせられる妹。イタリア統一の時代を迎えてもなお、したたかに生きる父の生き方を否定しながらも、一族の枠から逃れられないコンサルヴォ。当主となった彼が一族を守るため、選択する道とは――。

11月7日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー
(文・どらく編集部 河邉愛)
(更新日:2009年11月04日)
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