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映画散歩

スペシャル 編集部オリジナル企画

「劇場版テンペスト3D」原作者・池上永一さんインタビュー


小説ファンのみならず、有名作家らからも絶賛された小説「テンペスト」。舞台化、NHKでのドラマ化につづき、映画「劇場版テンペスト3D」として1月28日(土)より公開される。本作の原作者である池上永一さんに話を聞いた。

池上永一さん
池上永一さん
――このたびはインタビューのお時間をいただきありがとうございます

はい。どらくはシニア向けのウェブ媒体ということで、これまででナンバーワンになるくらい、原作から映画化についてまでお話しましょう。

――小説野性時代での連載時からダイナミックな作品と評判となった「テンペスト」ですが、原作を構想されたきっかけは?

本当のところをいうと、まず主人公の孫寧温が先にたったのね。女の子が男装をして宦官を名乗り王宮に上がる。少しエッチだなと――というのもあるのだけれど、仕掛けとして、本当のところは宦官から女の子にも戻ることができるという点がポイントなんです。側室として御内原(うーちばら/江戸将軍家の大奥に近い組織)についても描けるから一粒で2倍おいしい。いろいろ遊べちゃうなって。

話はそれるのだけれど、自分にとって、まだ1行も書いていない時期って、担保になるものがなにもないんです。だからおいしい要素というかお得感があるとがんばれる。誰も描いたことがないものを書き上げるわけだからワクワクする。

実は、琉球王朝についてそれほど詳しいわけでもなかった。公式の文書自体が数少ないこともあるし。ただ、逆に歌だけはとても多くて、数千あるといわれている。それは世界一多いといっても過言ではないですよね。

そこで、文書が少ないことがむしろ強みになると思ったのね。明らかじゃないのが多ければ、自分でどんどん構想できる。特に御内原などは文書に何も残っていないんですよ。文書がないとなると、むしろ創作意欲が燃えるんだよね。

池上永一さん
――「テンペスト」というタイトルの由来は?

最初は「竜神の娘」というタイトルでもいいんじゃないかと思ってたんだよね。だけれど、なんかつまんないなと。

小説野性時代の当時の編集長は、「上巻『宦官 寧温』、下巻『側室 寧温』がいいんじゃないかと押してきたんだけど、それでは情緒が……。

そんな折に、ブレインストーミングのように、大学ノートにキーワードをバーっと書き出していたんだけれど、その中に「テンペスト」があって、これがいいと。

たしかに、シェークスピアやベートーベンなど西洋芸術でよく用いられるタイトルではあるんだけれども、名付けた瞬間から、まさにテンペストのように嵐のように作品を書き上げていく。出来てしまうと仕組まれたかのようにテンペストらしく展開されているわけだからタイトルって不思議なものだよね。

――本作においてこだわった点は?

自分は人間中吊り広告でありたいなと常々思っているから、寧温を描いていても、真面目である部分と面白い部分を両立させたいわけです。時には叙事詩的でありながら、時にはエロスも織り交ぜるというかね。人間の生理的な部分を描くとなるとエロスも必要だから。

まさに、地位、カネ、エロスの欲望。それを自分自身のからだや登場人物の声を通して現れたものが作品の力になると思うんだよね。

だからこそ、寧温からなんとしてでも王宮に戻りたい戻らねばという必死さがにじみ出てくるわけなんですよ。こういう生の感覚にはこだわったかな。

また、時代考証をお願いするにあたっては、琉球の風土をとにかく美しく描きたいということにこだわったね。

池上永一さん
――独特の存在感がありますが、ご自身の作風についてどのように思われていますか?

自分は、めくるめくスペクタクルというか物語性に溢れる世界を過剰に書き上げたいし、自分自身も過剰でありたい。ともすると、一般的な作家の方々の作風からは逸脱しているのかもしれないけれど……。

本作は、小説野性時代が新創刊されるタイミングもあり、荒れ地のような何もない場所だから何をやってもいいと言われました。ぼくはそう言われると俄然張り切るタイプなのでありがたかったですね。もし、この荒野にお城をつくれといわれたら、見渡す限りをお城で埋め尽くしたい、と思うタイプです。雑誌名も野性時代だし、新創刊ということもあり、作風も野蛮なくらいでちょうどよいだろうと。だから、本当に自由に書かせてもらったなあ。

自分の才能を来世とか来々世から前借りしていると思ってやれば、実力以上の作品が書けるものなんだなと思う。ま、才能リボ払いというかね(笑)借りすぎて枯渇しそうですが。

そして、僕の作品を読んでくれている人をワクワクさせたい。夢中で読んでくれるあまり、睡眠不足になったり、トイレに行くのも忘れて膀胱炎になってしまって日本中の泌尿器科が儲かるくらい本に釘付けにしたい(笑)

――そんな池上さんが尊敬している作家はいらっしゃいますか?

山田風太郎さんは物語の天才だと思う。読んでいてわかるのは、創作本位で自由で破たんすることを恐れずに書き進めていること。エロスだって躊躇(ちゅうちょ)なく描く、尊敬しますよね。

池上永一さん
――最後に、作品に戻りますが、映画「劇場版テンペスト3D」を通して伝えたいメッセージをお願いします

テンペストが舞台、テレビドラマ、映画とどんどん大きくなって、自分の手を離れてしまったような気がしたり驚いてもいるのだけれど、この作品は自分自身、バルブを全部解放したような作品だし、そのように書かせてくれた作品でもある。そんなエネルギーに触れてほしいですね。

自分は沖縄県出身で、苦労の多かった祖父の時代、復帰世代にあたる自身の時代の双方を知っているんです。歴史に翻弄され続けた琉球王国、沖縄ではあるのだけれど、そこにあった外交手腕、教養水準の高さ、歌の美しさ、自然の豊かさをなどがみなさんに伝わればと思っています。

今思うと、テンペストの登場人物は、誰ひとり自分の思い通りの人生をとげた人はいなかったのではないかという気がする。しかし、そこから寧温や琉球王朝の切なさや美しさを感じ取ってほしいですね。


劇場版テンペスト3D
© 2011「劇場版テンペスト3D」製作委員会

「劇場版テンペスト3D」

小説ファンのみならず、有名作家らからも絶賛された、池上永一原作の「テンペスト」が舞台化、ドラマ化に続いてついにスクリーンに登場。

19世紀末の琉球王国で、国を守るために男として生きる真鶴のエンターテインメント大河ロマン。女に生まれたばかりに、学問を禁じられた真鶴。美しく、頭脳明晰(めいせき)に育った真鶴は、父の願いをかなえるため、性別さえ偽り、政治と愛憎の渦に自ら立ち向かうのだった……。

舞台、ドラマに続き、主演を務めるのは仲間由紀恵。その他のキャストは、ドラマから続く谷原章介、塚本高史、高岡早紀他。監督も引き続き吉村芳之。

     ◇

琉球王朝の時代、孫嗣志に不思議な力を持った女児が誕生する。世継ぎ誕生を願っていた嗣志は落胆し、名前さえつけなかったが、娘は自ら真鶴と名づけ、女子には禁じられている学問を身に着けていく。

父は、世継ぎとして、義兄、嗣勇を養子として迎える。しかし、嗣勇は、出家をしてしまう。人知れず、政治を学んでいた真鶴(まづる)は、自分は女を捨て、父が悲願する世継ぎになるべく、男、孫寧温(ねいおん)として生きる決意をする。

●1月28日(土)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー(配給:角川映画)

公式サイト:http://tempest-3d.jp/


(どらく編集部 文・写真/三浦英幸)

(更新日:2012年01月27日)

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