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世界遺産劇場 第五回 紀伊山地の霊場と参詣道 ステージなび 編集部イチオシ!

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紀伊山地は太平洋に張り出した紀伊半島の大部分を指し、標高1000〜2000メートル級の山脈が東西あるいは南北に走り、年間3000ミリを超える豊かな雨水が深い森林を育む山岳地帯で、神話の時代から神々が鎮まる特別な地域と考えられていた。また、仏教も深い森林に覆われたこれらの山々を阿弥陀仏や観音菩薩の「浄土」に見立て、仏が持つような能力を習得するための修行の場とした。その結果、紀伊山地には起源や内容を異にする「熊野三山」、「高野山」、「吉野・大峯」の三つの霊場とそこに至る「参詣道」が生まれ、都をはじめ各地から多くの人々の訪れる所となり、日本の宗教・文化の発展と交流に大きな影響を及ぼした。「熊野三山」、「高野山」、「吉野・大峯」は、古代以来、自然崇拝に根ざした神道、中国から伝来し我が国で独自の展開を見せた仏教、その両者が結びついた修験道など多様な信仰の形態を育んだ神仏の霊場であり、熊野参詣道、高野山町石道、大峯奥駈道などの参詣道とともに広範囲にわたって極めて良好に遺存している文化遺産である。

熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社(上記3社を総称して熊野三山という)に、中世初期の上皇、女院(上皇の后)などが、何度も繰り返し参詣した道が起源で、熊野への参詣は庶民にも広まり、後世には「蟻の熊野詣で」といわれるくらい流行していく。なかでも白河・鳥羽・後白河・後鳥羽の四上皇が熊野詣でに熱心だった。それぞれ二十回以上も参詣(最高が後白河の三十四回)したとされる。参詣といっても、多いときはお供を千人も連れ、泊まるところは「王子」といわれる豪華な仮設宿舎を作り、退屈しのぎに和歌の会から白拍子の舞いの宴会、相撲大会などを行い、贅のかぎりを尽くした旅であった。

一方で、熊野詣でをする世俗の人たちとは別に、熊野の道を修験として歩いた人たちがいる。修験道に励む人たちで、密教の教えに従い、険しい山の小道を選び、苦行しながら三山に詣でるのだ。なかでも一般的なコースとして、吉野の金峯山寺(きんぷせんじ)から熊野本宮に抜ける道を「大峯修行」と言われるが、いったん山道に入ったら三、四日間、下界に出ることはできない。熊野の山は外から見ると、「照葉樹林」といわれるくすのきや朴の木など葉に柔毛が生え、太陽にあたると光り輝く「いやしの森」と呼ぶにふさわしい顔を見せるが、一旦修験の道に分け入っていけば、森に包まれた暗く険しい道が伸び、違った表情をみせる。

修験の出発点である吉野は千本桜で有名である。奈良県の深奥部に位置することもあり、昔から政権争いに負けた人たちの亡命の地になった。天智天皇の猜疑を避け、出家した大海人皇子(のち、天智の子、大友皇子を倒して天武天皇になる)。頼朝の追及を受け静御前とともに逃避行をする源義経。足利尊氏に破れ逃れた後醍醐天皇など。

失恋や出世競争の脱落などで世をはかなみ、出家しようという人びとが小さな庵を立てわび住まいをするのも吉野だった。日本最高の歌人の一人、北面の武士から出家した西行法師も吉野わび住まいのはしりとされる。「願わくば 花の下にて 春死なん その如月(きさらぎ)の 望月(もちづき=満月)のころ」。どうせ生まれてきてしまったのだから、最後はこのような清らかで、華やかな心持で死んでいきたいものだ。と歌に表されるように、都を離れた人々にとって心のやすらぎの場となってきた。

「道」が世界遺産になっているのは、日本ではここだけだ。第5回世界遺産劇場「紀伊山地の霊場と参詣道」は、「古道」の広がる和歌山県・熊野本宮大社旧社地大斎原、奈良県・金峯山寺蔵王堂、三重県・熊野古道センターにて、各会場、趣向を凝らして開催される。「霊場」として、神仏習合の場所として世界に認知された聖地で奏でられるハーモニーを存分に堪能したい。

世界遺産劇場 第五回 紀伊山地の霊場と参詣道、出演者紹介

奈良公演

押尾 コータロー 角松 敏生

三重公演

村治 佳織
撮影:小林みのる
畠山 美由紀

和歌山公演

林 英哲
PHOTO:Kazumi KURIGAMI
由紀 さおり
安田 祥子
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