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ステージなび

<東京の夏>音楽祭2009 日本の声・日本の音

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毎夏、世界中の音楽を一つのテーマをもとに紹介してきた<東京の夏>音楽祭。25回目となる今年は「日本の声・日本の音」をテーマに、現代の日本の音文化を見つめ直す。

多くの音楽家が出演するなかで異彩を放つのは、アニメ「鉄腕アトム」や映画「惑星大戦争」の音響効果を担当し、日本の音響クリエーターの第一人者として活躍する大野松雄。人生初となるライブでどんな映像と音の世界を作り出すのかを聞いた。

アトムの音をつくった音響クリエーター
初のライブパフォーマンスに挑む

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大野松雄 ©Kuge Yasuhide

ある音が聞こえた時、その音が何かと認識するのは、その音に関する何らかの記憶があるからだ、という。汽笛が鳴ったと気づくのは、自分が生まれてからある日どこかで、汽笛を聞いた体験があるから汽笛だと認識できるのだ。

しかし、記憶や経験がまったくない音を聞いた時、人間はどんな感情を抱くだろう。「この世ならざる音」を追い続けたい――電子音響デザイナー・大野松雄が音響の仕事に携わって以来、常に求めてきたものだ。

文学座研究所の1期生として1949年に入団した後、NHKに入局して効果音を担当したが、その頃耳にしたシュトックハウゼンの「電子音楽」にショックをうけ、わずか1年でフリーの音響マンに。映画や芝居の音響効果を手がけていたある日、発信器から出る「ピー」という電子音がふと気にかかり、専用機器で変化をつけてみた。すると、楽器では作り出すことのできない、初めて経験した音ができあがった。さらにいくつかの電子音を同時に変化させて鳴らすなどアレンジを加えてみると、これまで体験したことのない「音の世界」が生まれた。音響の世界に新たな息吹をもたらしたきっかけだった。

大野を一躍有名にしたテレビアニメ「鉄腕アトム」の放映が始まったのは63年。電子音やそれを加工した音だけではなく、自然に聞こえる音、人間や動物の声を電気的に変化させた具体音楽(ミュージック・コンクレート)も採り入れ、未来の世界を音で描いた。ただそれは、「音響効果ではなく、映像に対する音響表現だった」と大野は振り返る。「ピコピコ」という足音をはじめとする数々の創作音は、ブラウン管に映し出されるアニメ映像の「補助役」ではない。映像と同等にその世界を的確に描き出す「表現物」を作り出すのだ、という意識で取り組んだ。

その後も映画「惑星大戦争」(77年)など多くの作品の音響効果を手がけ、電子音響の第一人者として、多くの後輩から尊敬された。一方、博覧会ブームのさなかでは、音響ディレクターとしてパビリオン内で流れる音などにも携わり、未来を音で表現する代表格となった。

写真
ライブリハーサルで機材を操る大野

大野に「どんな世界を音で表したいと思ってきたのか」と問いかけてみた。「表現していきたいとかではなかった。ただおもしろいから電子音響やってみた、というくらいのもの。言ってみりゃ“遊びの延長”みたいにやっていましたから」。たしかに、手がけてきたものは仕事ではあるが、それはあくまで「好きなこと」。いまだ存在しない音を追求し続ける純な生き方が感じられた。

7月に開かれる初のステージライブを前に、創作拠点の一つとしている滋賀県湖南市の福祉施設の体育館で、「a point」のリハーサルが行われた。あらかじめ用意した電子加工音をサラウンドコントローラーを駆使して立体感を出しながら流すと同時に、プロジェクターを3機使って草原や海岸などの映像も流す約30分の立体音響作品だ。

「事前打ち合わせなしで、出たとこ勝負でやっても良かったんだけれど」。初のライブなのに意外な反応。本番当日の「何が起こるかわからない」世界を期待しつつも、心の中ではすでに新しい「この世ならざる音」を作り上げている気がした。

(文:どらく編集部 勝井善明)

次ページで大野松雄さんの作品の一部を動画付きでお楽しみいただけます。

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