
出会いがいつであったにせよ、人生にアバの音楽が流れていた人は、幸せである。人生の深い哀歓を歌い上げるアバの名曲の数々は、うれしいとき、悲しいとき、その人の心に寄り添ってくれたに違いないから。
70〜80年代、美しくドラマティックなメロディラインと歌詞、そして歌声で、世界を席巻したスーパー・ポップ・グループ、アバ。82年の活動停止後もなお人々を魅了してやまない彼らの全盛期のステージが甦る夢のエンターテインメント・ショー、「ABBA GOLD」を、四月の来日公演より一足早く、ドイツ・マンハイムで観た。


歌唱や演奏、振付はもちろんのこと、当時の衣裳、照明、舞台装置、そしてメンバーがMCで語る英語のスウェーデン訛りまでが忠実に再現されたステージは、瞬く間に観る者をアバの世界へといざなってくれる。しかも、聴きたかった名曲すべてが網羅されているという構成は、実際にアバが活躍していた時代にはありえなかったもの。アグネタ、ビヨルン、ベニー、フリーダ、四人のメンバーを演じる出演者は、ロンドン・ウエストエンドのミュージカルの舞台や、音楽業界でキャリアを積んできた実力派揃い。自らの深い愛をも真摯にこめて、アバの楽曲に新たな命を吹き込んでゆく。


劇場を埋め尽くしたマンハイムの観客は、オープニング・ナンバーの「ウォータールー」から大盛り上がり。「マンマ・ミーア」、「マネー、マネー、マネー」、「ザ・ウィナー」、そしてラストの「ダンシング・クイーン」まで、次々と繰り出される、時代を超えてなおきらめきを失わない名曲、ヒット曲の数々に、歓声をあげ、手をふり、立ち上がって踊り、全身で喜びを表現する。そんな彼らと共にステージを楽しむうち、自分自身、幸せな気持ちに包まれてゆくのがわかる。もちろん、CDを聴き、DVDを観ることによっても、アバの音楽にふれることはできる。しかし、これほどまでに心深く響くアバの音楽がこの世にあった喜びを、舞台上のパフォーマー、客席の観客、会場が一体となってわかちあうことは、アバがおそらくは再結成しない以上、ありえなかった夢である。「ABBA GOLD」は、そんな、ほとんど不可能に近い夢をかなえてくれる。そしてもちろん、このショーでアバの音楽に初めてふれたとしても、決して出会いが遅すぎるということはないのである。
(ライター 藤本 真由)
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