書店でこの人の著作が山積みだ。「千の風になって」「自由訳 イマジン」「自由訳 般若心経」「青春とは」などがベストセラーとなっている。シンガー・ソングライターとしてデビューして約35年。いくつもの肩書を持つアーティストは還暦を迎え、ますます活動の幅を広げている。
(文・神山典士/撮影・田中史彦)
冒頭の4冊の共通点がわかりますか?
それはね、4冊とも新井のオリジナルではないということです。オリジナルは他にあって、新井はそれをただ再発見して、わかりやすい日本語に直して出版しただけだということなんです。
そう1200年も前からあるんです。でもそれを自由訳として出版しようなんて誰も思わなかったでしょう。難解だなとは思っても、わかりやすい日本語に置き換えようとは思わなかった。
イマジンだって、原文はたったの26行ですよ。それを新井は260行の詩にしているんです。そんなサーカスみたいなことができるのかという人もいましたが、これを読んで感動してくれる人もいる。そういう誰もやらないような作業でも、世の中の人々の役に立つなら、新井はやってもいいかなと思ってしまうんですね。
と、言うと?
そう言われてみると、確かに熟成期間は長いですね。言い方を変えると、年齢を重ねるのも悪くないということかな。思い出がそれだけ多くなるんだから。やっぱり物語が生まれる背景には歳月の重なりがあるわけで、昨日今日では物語は生まれないということなんですね。そういう意味では、時間というものは大変な主人公ですね。

1946年新潟市生まれ。電通の映像プロデューサーとして環境ビデオ制作の草分けとなる。故・森敦と出会い「組曲 月山」を発表。シンガー・ソングライターとしても活躍。77年「ワインカラーのときめき」が50万枚のヒットを記録。88年「尋ね人の時間」で第99回芥川賞受賞。98年長野冬季五輪で開会式のイメージ監督を務める。日本ペンクラブ常務理事として平和と環境問題を担当。作家、作詞・作曲家、歌手、写真家、陶芸家、画家など様々な肩書を持つ。
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