白いツナギ服にサングラスとリーゼントヘア。デビュー当時の「ワル」の印象があまりに強烈だけれど、その足跡をたどると、この世界でも稀有(けう)なメロディーメーカーであることが実感される。自身のバンドのロック、山口百恵さんらに提供した歌謡曲、蜷川幸雄さんの舞台音楽、幾多の映画音楽、最近では「ドラえもん」のアニメソング。還暦を迎えた今もなお、まだまだその幅は広がっている。
(文・神山典士/写真・田中史彦)
僕は曲を書いていればハッピーな人間なんです。コンサートをやったり、映画やテレビの撮影があったり、マスコミの取材があったりして、いつも自由に書いていられるわけじゃないけれど、人が普通に日記を書くように今も僕は曲を書いています。
この前、嫁(阿木燿子)が監督をした映画の音楽を作ったんですが、アラブ音階で書いてくれとリクエストされました。アラブ音階ってドとレの間に8音階もある。西洋音楽でいうグリッサンドのように音が連続して上下するんです。そういう音階を意識した曲を、60歳のこの年齢になって初めて作りました。そう考えると、まだまだ一部分だと思いますね。
今まで書いてきた曲のジャンルが、世の中の音楽の中のまだ一部分でしかないという意味です。僕はこれまでに4千曲以上書いてきたそうですが、まだまだ世界中には聴いたこともないような音楽がたくさんある。日本の音楽だって、まだ雅楽には挑戦していませんし。僕は最初はアメリカンミュージックからスタートしましたが、今はどんな国のどんな種類の音楽でも面白くなっています。今までに書いたことのないジャンルにどんどん気持ちが向かっているという感じです。
蜷川幸雄っていう人は意地悪な人でね。「宇崎、今度はメロディーがいらないんだよ」なんて言うんです。「俺はメロディーメーカーだよ」と言うと「わかっているけどメロディーはいらない。武満徹さんみたいなの創(つく)ってよ」と。じゃ武満さんに頼めよって思うんですが、やってみるとこれが楽しい。シャッターを降ろす音を録音したり、楽器ではないものをたたいたり。武満さんの本を読んで感化されて思い切って自分流にやってみると、これがまた勉強になる。
蜷川さんはいろいろな作曲家と一緒に仕事をしていますが、僕以外はクラシック畑の人がほとんどでしょう。それがちょっと変わったものを作りたい時に決まって僕に頼んでくる。蜷川さんにとって僕は、最後の滑り止めなんでしょうね。
あの時代は濃密でした。百恵さんと組んだ何年間かはそれまでやったことのないテーマ、メロディーに挑戦し続けました。レコード会社のプロデューサーやディレクターたちと話し合って、思いも寄らない世界を歌にしていきましたから。
でも百恵さんはいつの時でも、いったいいつ寝るんだろうなというスケジュールの中でスタジオに現れて、思わず「そうきたか」とうなるような歌を聴かせてくれる。なるほどね、というレベルの歌手はたくさんいましたが、どんな曲を与えても宇崎節ではなくて自分の節にしてしまうのは彼女だけでした。
シングル曲だけでもふたりで年に3、4曲は書いていました。レコーディングが終わったと思うともう次の依頼が来る。ところが秋は依頼がない。その季節は谷村新司さんや、さだまさしさんが書いていたんだな。僕らは変化球ばっかりで、もっと谷村さんのような直球の曲も書かせてよと思っていたんですが。

1946年、京都生まれ。芸能事務所のマネジャーやレストランでの弾き語りなどを経て、73年、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドを結成しデビュー。「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のヒット曲を生み出し、作曲家としても76年に日本レコード大賞作曲賞受賞。76年から引退まで、山口百恵の作品を60曲以上作曲。映画でも「駅―STATION 」などの音楽で日本アカデミー賞音楽賞受賞。役者としても同助演男優賞受賞。84年には竜童組、93年にはRUコネクションを結成。2002年には文楽との共演舞台「ロック曽根崎心中」を上演。06年蜷川幸雄演出「天保十二年のシェイクスピア」の音楽にて、読売演劇賞優秀スタッフ賞受賞。
ともに、詳しくは宇崎竜童さんの公式ホームページへ。
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