最初は本屋さんに売り込みに行っても相手にしてもらえなかったのですが、生活雑誌のブームも追い風になってか、徐々に売れるようになっていきました。ネットでの通信販売だけではなく、若い店長さんたちがおもしろがってくれて、バックナンバーまで置いてくださる書店も増えてきた。ありがたいことです。
基本的には私がおもしろいと思ったことしか掲載していません。生活全般のことが中心なのは、私は43年間イラストレーターとして仕事をしてきましたが、その一方で主婦業もこなしてきた。家のことも好きだし、日常というものに対して、ごくごくふつうに興味がありますから。その好奇心がそのまま誌面に出ていると思います。
そうです。村上春樹さんや佐藤雅彦さんなど、これまでにさまざまな方々に登場いただいているのですが、人選も単に私がファンだからというのが基準です。有名無名関係なく、私が「この人すごいな!」と思えば、会いに行く。どちらかと言えば雑誌をつくるためというより、「会いたい人に会ってきたから、みんなにそれを教えたい!」という感覚が強いですね。
最近だと大貫妙子さん。ミュージシャンの話を聞いてみたいと考えたときに真っ先に浮かんだアーティストです。仕事の仕方がとても地道で誠実そうだなと思っていたから。実際にお会いしてみると、ステージへあがるときの思いや、音楽に対する姿勢など、こと細かく話してくださってうれしかった。いい意味で正直で、ごくふつうの感覚を持ち合わせていて素敵な方でした。感激がしばらくさめやらず、ああ、「アルネ」をつくって良かったなって思いました。
ひとりでやっていると善し悪しの判断が難しく、それがプレッシャーになって夜寝られないこともあり、超大変。加えて体力的なこともあるので、あと3年くらいかな。まあでも、今はおもしろいから、続けていきたいという気持ちのほうが強いですが。
「60歳を過ぎてイラストの仕事が少なくなった」という話をした通り、外からいや応なく年齢を意識させられることはあります。でも、私にとって年を重ねるということはあくまで昨日の続き。いきなり60歳になったわけではないですから。それに、60代だからといって60代らしく生きるなんてことはできないです。私は私らしく生きていければそれでいい。その思いは昔からぜんぜん変わっていない。
43年間イラストの仕事をしてきたという、私の中の事実が支えになってくれているんだと思います。60年代からその時代その時代の仕事をさせてもらってきたこと、必死で取り組んできたことが大きな力になっている。それがなかったら「アルネ」もつくっていなかったでしょうね、きっと。
そうですね。学生で、素人だった私が「平凡パンチ」のイラストを任されるようになって、仕事というものは、自分のセンスや判断だけでやっていけるものではないということを教えられた。と同時に、私もこの雑誌の一部なのだと。でもそれを認識したことで、自分にも仕事にも厳しくなることができた。だから、絶対に「これでいいや」と現状に甘んじたりするのは嫌でした。自分に厳しくしないと結局、足踏みか後退するしかないですから。
これからのことはまったく考えていないですね。今やりたいことをやっていければ、それで幸せ。3年後こうしようなどと考えたりしないです。案外人って、みんな先々まで決めたりしないものなんじゃないでしょうかね。

1966年にニューヨークへ行ったことでしょうか。1ドル360 円の時代に、正規の料金でチケットを買って行きましたから。大きな投資だったけれど、とてもカルチャーショックを受けたし、あのとき4カ月間暮らしたことがその後、私という人間の形成に深く影響していると思います。
「アルネ」に登場いただいている方々すべて。「こだわりがあってステキ。会いたいなあ」と思った人たちばかりなので。
フィリップロス、トルーマン・カポーティー、ポールオースターなどの作品も数多く読んだし、日本の作家では、山本周五郎さんや、有吉佐和子さん、瀬戸内寂聴さんに傾倒していた時期もあります。本は大好きで、いいなと思うと一気にその方の作品を読むタイプなので、ものすごく影響を受けている本もあると思うのですが、「これです!」と特定のものを挙げることは難しいですね。
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