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ひとインタビュー特別編 さまざまな価値観で生きている人々が存在していることを知る、これが大人の旅 草野満代さん

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その国に暮らす人の日常に浸れるのが一番幸せ

―― 年齢とともに、旅の楽しみ方も変わってきますね

もう、あそこまで過酷な旅はできません。年齢とともに、自分に対して甘えが出てきますから。楽しみ方も変わってくるのですね。

インドには仕事ですが、その後も2回行きました。マザー・テレサのお葬式取材でも。何かインドとは縁があるので、あと3回くらい行くのかも、と思っています。

―― 同じインドでも毎回、感じ方が違う?

いつも元気をもらって帰ってきます。最近、すごく発展してきた国だけど、まちは変化しても、人々のエネルギーは普遍。その濃さに、打たれるようにして帰ってくるんです。

―― 元気をもらう旅とか、癒しの旅などいろいろありますが、草野さんにとって、旅の一番の目的は?

その国に暮らす人々の日常に触れたいというのが大きいですね。最近、休暇を利用して日本のガイドブックには載っていないような、イタリアの何げないトスカーナの小さな町に行きました。カフェに入ると、地元のおじいさんのたまり場になっていて、日本で言う囲碁を打っている。昼時からワイン片手に。そういう日常に浸れるのが、一番幸せですね。本当に幸せ。

日本では、時間そのものをゆっくり感じられる瞬間って、なかなかないですよね。テレビの世界でも、1秒2秒でどれだけを言えるか試されている。でも、そうでない国や人の方が多くて当たり前なんだと、確認していく旅。トスカーナ行きは凝り固まった自分の価値観を、解きほぐしていく旅でした。イタリアの経済が停滞していても、このおじいさんたちの方がよっぽど幸せなんじゃないか、と思いましたね。

―― 「自分探しの旅」という意味合いがあるのですか

そうですね。最近は「携帯がつながらないと嫌」「日本を1週間も空けたくない」という理由で、外国に行きたがらない若い人たちが多いと聞き、驚きました。私のときは「なるべく、いろんなものを見たい」ばかりだったのに。自分以外の生き方を、若いときからたくさん見ておいたほうがいいと思うのですが。

決められた時間に名所旧跡をめぐるのではなくて・・・

―― 老齢だったり、足が悪かったりして、海外へ行きたくても行けない人もいますね。そういう人には、テレビの旅番組が仮想体験の場にもなる

テレビの役割も、まだまだ捨てたもんじゃありませんよ。おいしいものを食べるだけでなく、旅番組を通じて、知的好奇心とか、現地の人の生き方から、「こんなにいろんな国で、いろんな人が、いろんな価値観で生きているんだ」って見てほしい。自分のありさまを、確認する時間でもあってほしいと思います。

――「どらく」は、知的好奇心旺盛なビートルズ世代が読者層で、いろいろな情報や知恵を送り出すサイト。旅もまさしくその中のテーマですが、同世代以上の大人にお勧めの旅は

最近、オリエント急行に乗って、ウィーン、プラハ、ブダペスト、ブカレストを初めて訪れました。この東欧、中欧は何度でも行きたい場所ですね。

ただ単に、決められた時間内に名所や旧跡、美術館を巡る旅は、旅なれた日本人にはあきたらないでしょう。そこに、いかにものがたりが存在するか、そういうことを知りたいのではないかと思います。

そこにあるのは、やはり人と人のつながり。「そういう時代に、この街で、いろんな人が生きていた」という厚みがあるんですね。

たとえば、デザイナーのココ・シャネルを勇気づけたのが、イタリアのベネチアで出会ったロシアの芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフだったなど、才能と才能がぶつかり合った瞬間が都市のあちこちに痕跡として残っている。そこをきっかけに世界が広がってゆく。歴史が過去に戻るという話は、たまらなくそそられますね、本当に。

―― それが大人の旅?

年の功だと思う。だからその良さがわかる。クリムトの絵一つにしろ、通りすぎてしまっていたけれど、一つひとつに立ち止まれるのは年の功でしょう。1回見たから、あるいは、行ったからもういいや、ではなくて。本を読み返して、もう1回息を吹き返すように。

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