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ひとインタビュー難しいから、恋愛がテーマに 思い通りになる人生なら失敗 第二十八回 石田衣良さん

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書くことで壁を越えたい

石田衣良さんが小説を書き始めたのは35歳、コピーライター時代だ。フリーでも、そこそこ働いていれば収入があった。子どものころから描いていた理想の生活を手に入れたのに、満たされなかった。人生に物足りなさを感じている石田さんの背中を押してくれたのは、女性誌の占いのことばだという。翌日から書き始め、今日にいたっている。
(文・井上理江/写真・田中史彦)

――今は、どんな小説を書かれているんですか?

就職活動をテーマにしたものと、「4TEEN」の続編、「池袋ウエストゲートパーク」8作目と中年の不倫もの。それに加えて、あと5本くらい並行して書いています。

――同時に何本もまったく味の異なる小説を執筆されている

逆にそれができないと、日本でプロの作家で在り続けることは難しい。他の作家さんだって同じ状況だと思います。頭の切り替えは早いほうだと思う。本当に1、2秒で切り替えられます。

――その秘訣(ひけつ)は?

音楽です。頭を切り替える手っとり早い方法、それは感情や気持ちを先に切り替えることなんです。そうすると人間って案外スムーズに次へと気持ちを移行できる。その感情の切り替えに有効なのが音楽なんです。音楽は感情を揺さぶるものですから。

この小説にはこの音楽、と決めて執筆にかかると案外、いい作品が生まれるんです。執筆中はその小説のテーマに合わせて曲を選び、ずっと流していますね。

ロックで生まれた「池袋・・・」

――そうやって数々の名作が誕生してきた

「池袋ウエストゲートパーク」のようなスピード感があって、バチバチと瞬間を刻むような文章を書くときはヒップホップやロックを聴きます。「娼年」のときは、たらんと横たわるような雰囲気の小説にしたかったので、ドビュッシーのピアノ曲を聴きながら書いていました。面白いもので、音楽が変わると文体も全然違ってきます。

――ディテールがしっかり描かれながらも、臨場感あふれる作品が多いのは、音楽のたまもの

そうですね。それと僕自身、一つひとつをコツコツ丁寧(ていねい)に細かく書き上げるのが好きなんです。

――書きながら、感情移入して泣いていることもあるそうですが

そう。泣いたり、笑ったりしながら。そこまで心底没入している部分と、少し距離を置いて冷静に見ている部分と、半々くらいだとちょうどいいバランスだと思うのですが。

(写真)石田衣良さんプロフィール

1960年東京都生まれ。成蹊大学経済学部卒。広告制作会社を経てフリーランスのコピーライターに。97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、作家デビュー。2003年に「4TEEN フォーティーン」で直木賞、06年には「眠れぬ真珠」で島清恋愛文学賞を受賞。「うつくしい子供」「少年係数機」「波のうえの魔術師」「スローグッドバイ」「娼年」「骨音」「1ポンドの悲しみ」「東京DOLL」「アキハバラ@DEEP」「美丘」など著書多数。雑誌などでエッセーも数多く執筆。コメンテーターとしてテレビにも出演。

お知らせ
石田衣良さんの最新刊「美丘」

大学2年生の太一と、突然目の前に現れた女性・美丘(みおか)の物語。命を燃焼し尽くした恋人たちを描く、号泣の恋愛小説。角川書店/1575円(税込み)

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