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ひとインタビュー難しいから、恋愛がテーマに 思い通りになる人生なら失敗 第二十八回 石田衣良さん

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指一本で世界を動かす快感

――小説を書いているときは楽しい?

楽しいですよ。本当に楽しい。よく指1本でバスケットボールをくるくる回したりするでしょう。あれに近い感覚。自分の指1本で、一つの世界を動かしているような、そんな快感があります。書くこと自体の中にご褒美(ほうび)があるからこそ書き続けられる。

――ご褒美というのは?

達成感だったり、自分の能力をフルに活用し、形にできること。自分でもまったく予想していなかった展開へ進んでいったりするのも面白いし。僕の場合、テーマは自分で見つけています。だから余計にフリーハンドで自在に書く喜びというか、楽しさもある。

――書きたいことはどうやって見つけるのですか?

これは面白いと思った第一感からすべて始まります。その第一感をひたすら信じ続けながら、作り上げていく。面白いと思う瞬間は渋谷の百貨店のエスカレーターだったり、散歩の途中だったり、電車で移動中だったりと、すき間の時間が多いです。そういう意味では24時間四六時中、何か題材はないかというプレッシャーと課題を自身の無意識に与えているから、休んでいるときはないかもしれません。

――常にプレッシャーがある

結構楽しんでいます。だって、自分の能力を100%生かせることって、なかなかないと思うんです。小説家は、ときには120%もの力を出すことができるわけですから。

――ところで、恋愛小説の名手と言われていますが、やはり恋愛は大きなテーマですか?

恋愛はずっと書き続けたいジャンルの一つではありますね。仕事ってとてもラクじゃないですか。目の前のことをやればいいし、慣れてきたらルーチンでこなせる。人に任せることもできる。でも、恋愛はそうはいかない。付き合ってもなかなか相手を理解できなかったり、いつまでも壁に向かって耐え続けなければならないときもある。

ただ、そういう恋愛こそが人を成長させる。すごい力があるわけです。推理小説を否定するわけではありませんが、殺人事件を起こしてアリバイを考えたりするより、ずっと奥の深い謎解きがあると思います。

――自分の年齢は気になりますか?

いいえ、全然。ただ誰にでも、自分の殻を破って壁を越えなくてはいけない時期がある。僕にとってはそれが今だという意識はあります。何より、文章は書かないとうまくならない。量が質を保障する面もあるので、とにかく書き続けたい。ヘンに自分を大事にしすぎて、作品を絞ったりするのはもっともっと先のことでいい。

――将来、どんな作家になっていたいですか?

70歳の自分が何を書いているかは楽しみですが、将来、こんな作家になっていたいというのはないです。そんな夢を描いているようではダメだと思う。自ら限界を作っているようなものですよ。もし、今思い描いているとおりになったとしたら、むしろその人生は失敗なんじゃないかと思うほどです。

計画にとらわれず即興で

――先のことなど決めず、もっと柔軟に、自分の人生を歩んでいけばいいのだ、と

とかく年齢で人を分けたり、区切りをつけたりしようとするのは日本人の悪い癖(くせ)だと思う。

生きることに大事なのは、計画性と即興性のバランス。自分が進みたい方向、志向は誰にでもある。でも、その予定した計画にとらわれすぎず、その場その場を即興で、臨機応変に歩んでいく。それが真の生き方なのでは。

――では、団塊の世代に対してひと言

仕事でも遊びでも何でもいい。とにかく自分の好きなことをし続けていただきたい。よく自分たちの子孫に財産やら何かしら残したいという人がいますが、結局、人間が本当の意味で後世に残せるのは「生き方」だけなんじゃないかと僕は思っています。だから、どれだけ人生は楽しめるものなのかというところを、先輩として僕らに見せてほしいですね。

(写真)石田衣良さん3つの質問
質問1
これまでの人生で最大の買い物(投資)は何ですか?

20代の10年間だろうな。人生を棒に振ってもいいから、好きなことをしながら世の中を見てみたいと思って、そのとおり生きた10年間だった。実際、この20代での経験が30代、40代に大きく影響していると思います。

質問2
こだわりがある、という生き方をしていると思う人を挙げてください

こだわりがある人より、ヘンにこだわりのない人のほうがいいと思いますが。面白い人はたくさんいます。たとえば、最近お会いした中では安藤忠雄さん。デーブ・スペクターさんも面白い。個性があって、すばらしい仕事をしている人が僕は好きだし、話をしていても楽しいですね。

質問3
人生に影響を与えた本は?

1冊挙げるというのは無理。本っていうのは1冊では役に立たないですから。それよりもむしろ、読み続けることが大事だと思います。逆に1冊の本や1人の作家の影響を受け、それが透けて見えるようでは、プロの作家として長続きしないと思います。

アンケート 今回のインタビューについて皆様の「声」をお聞かせください。

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