石原裕次郎、市川雷蔵、勝新太郎など同世代スターたちとは異なる、独特の存在感が彼にはある。シリアスかつユーモラスな「必殺」シリーズの中村主水、淡々としながらも情の熱い「はぐれ刑事純情派」の安浦刑事。意欲的に活動を続け、二面性を持つキャラクターを自然に演じる藤田まことさんがお守りのように持ち歩くのは、戦死した兄からのハガキである。
(取材・文/田中亜紀子 撮影/田中史彦)
心の支えでした。映画俳優の父は浮世離れした人で、生みの母は幼いころに亡くなり、私は家庭の味を味わったことがありません。二人目の母にはついに亡くなるまでなじめず、一人継母に反抗する私は兄と姉の心配のタネでした。兄が戦死する1カ月前に来た最期のハガキにも私への心配ばかりが書いてあり……。お守りのようにコピーを持ち歩いていますが、今でも何かと心の支えになっています。
それもありますが、生活の苦労をしたので、てっとり早くお金を稼げれば何でもよかった。歌手も司会もコメディアンもモノマネも役者も、何でもやりました。私の芸歴約50年の半分は「雑歴」です。29歳で「てなもんや三度笠」の主役で人気が出ましたが、演技はろくにできず、演出家の方にあっち向け、こっち向け、刀を持て、振り下ろせとすべて指導していただいていました。
40歳で「必殺」シリーズが始まるまで、約4年のブランクがありましたね。土日だけ地方のキャバレーの巡業をして、あとの5日は芝居や映画を見に行ったり、読書をしたり好きに暮らしていました。ゴルフなど遊びも相当なものでしたが、時間があっても家庭のことは顧みず、家も子供のこともすべて妻に任せきり。そのころ、父親が亡くなって家は大変だったのですけどね。

1933年、無声映画時代の人気俳優、藤間林太郎を父に東京で生まれる。新地の看板芸者だった生みの母を幼いころに亡くし、戦時中に沖縄の海上で兄を亡くし、後に姉も亡くす。芸能界には歌手としてデビューし、司会者、コメディアンの鞄(かばん)持ちなどをしながら俳優に。62年「てなもんや三度笠」の主人公で一躍人気者に。73年「必殺仕置人」の中村主水役を射止め、昼はうだつのあがらない仮の姿で過ごすが真の姿は悪をほうむる剣の達人というキャラクターが当たり役となり、その後約20年「必殺」シリーズは続く。その他「京都殺人案内」「はぐれ刑事純情派」などの主演番組に加え、近年の「剣客商売」などで演技派俳優として活躍。2006年は松たか子さんと共演したゴールデンタイムのドラマ「役者魂」、映画「大奥」に出演。2002年に紫綬褒章受賞。
4月22日まで、藤田まことさんが明治座の「忠臣蔵〜いのち燃ゆるとき〜」に出演しています。200年あまり日本人の心に生き続けてきた「忠臣蔵」という物語を、「いのち」というテーマのもとに、今までとは全く違う新しい展開で、四十七士とその周囲の名もなき家族たちのいのちの物語として紡いでいくストーリー。「今回の忠臣蔵は、吉良側の事情や四十七士の家族側の事情など、忠臣蔵の裏を描いています」と藤田さん。作:宮川一郎、演出:石井ふく子。西郷輝彦、松平健、三田佳子、赤木春恵、淡島千景、横内正など豪華出演陣にも注目。
問い合わせは明治座チケットセンター
TEL 03-3660-3900
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