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ひとインタビュー若手への投資、花開き「蜷川組」 辞めない老人役者と社会貢献 第三十一回 蜷川幸雄さん

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勉強、そして実験

豊穣――。齢(よわい)70を迎えたこの人の今を語るには、この一言で十分だ。連日、劇場には「今度の蜷川の企(たくら)みは何だ」という好奇心にあふれた観客が詰めかける。年間11本の作品をつくり、イギリスやギリシャでも公演を行う。まさに演劇の神に選ばれし人、だ。
(取材・文/神山典士 撮影/三浦健司)

――まさに疾走する70代ですね

いや、自分でも好不調の波はあるんですよ。でもここ4、5年は悪くないかな。自分で悪くない仕事ができているなと思える時は、劇場に大勢の人が来てくださるし、次々と仕事も来ます。やっぱり「上がり」でしか仕事は来ませんね。上がりの裏付けは、お客さんの数だと思います。

若い時はどんなに芝居をつくりたいと思っても、年に1本か2本しかできなかったのにね。人生は平均化できないものですね。

無茶やるのはしんどい

――今年の初めには稽古(けいこ)場が二つあって、往復しながら2作品をつくられたと伺いました。すごい体力ですね

ありゃ恥ずべきことでしたね。この年になってそういう無茶をやるのはしんどいです。年をとったことで難しくなったのは、照明はこの明るさでいいのかな、音はこの高さでいいのかな、などと周囲のスタッフに確認しながらやらないといけない点かな。視力とか聴力が少しずつ衰えているから、周囲との誤差を確認しないといけないんですね。その誤差が思うような範囲に収まっていてくれていればいいんですが、突然目が悪くなったりもするからね。今は落ち着いているので、その処理の仕方がわかったから安定しています。

――スタッフは作品ごとに違うのですか

いえ、演出助手、照明、音響、小道具、大道具、舞台監督など、毎回ほぼ同じスタッフで年間11本をつくっています。芝居づくりにおける「チーム蜷川」とでも呼ぶべきスタッフ陣が充実しているんですね。彼らがとても熟している。彼らとは若いころからもう何年もやり続けているから、僕が「あ」と言っただけで確実に応えてくれる。大まかな打ち合わせだけでパッパッと物がそろう。

――スタッフが成長して、任せられるようになったのですね

皆だいたい40歳前後になって、一番働き盛りですよ。若いとき彼らに投資しておいてよかったなと思いますよ。照明デザイナーなんて、豊島園の木馬の前でショーをやっていた時にスカウトしたんです。師匠の下でくすぶっていた時に、「いい仕事してるな」と思ったから声をかけた。そういう連中が今いい仕事をしてくれますね。だから僕ひとりで蜷川幸雄なんじゃなくて、彼ら全員を合わせて蜷川組、「蜷川幸雄」だと思っています。

(写真)蜷川幸雄さんプロフィール

1935年埼玉県川口市生まれ。55年劇団青俳に入団。67年に劇団現代人劇場を創立。69年「真情あふるる軽薄さ」で演出家デビュー。74年「ロミオとジュリエット」で商業演劇に進出し、以降立て続けに話題作ヒット作を生み出す。代表作には「ハムレット」「王女メディア」「近松心中物語」「NINAGAWAマクベス」など多数。海外進出においても第一人者で、「王女メディア」「オイディプス王」はギリシャで、「NINAGAWAマクベス」「タイタス・アンドロニカス」はイギリスで上演され、大喝采(かっさい)を浴びた。若手の稽古道場である「ニナガワ・スタジオ」は84年から続いている。2006年からは、55歳以上の劇団「さいたまゴールド・シアター」も主宰。

お知らせ
ガルシア・マルケス原作
「エレンディラ」公演情報

「百年の孤独」などでファンの多い、ノーベル賞受賞作家ガルシア・マルケス原作の「エレンディラ」。音楽・ビジュアル・ムーブメントが一体となった蜷川幸雄さんの演出に海外からも注目が集まっている。出演は、中川晃教、美波、國村隼、瑳川哲朗、ほか。2007年8月、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて上演予定。07年4月14日、一般前売開始。

問い合わせ先
/ホリプロチケットセンター
電話 03-3490-4949

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