朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ホーム設定

Special Contents ひと

  • インタビュー
  • フロントランナー
  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

記事を印刷
  • バックナンバー

ひとインタビュー60歳から始まった挑戦の人生 良いストレスが健康の秘訣 第三十三回 日野原重明さん

  • 縦書きスタイルで読む
  • ページ1
  • ページ2

今までの人生の延長じゃない

――「どらく」の読者には60代の方が大勢います

これからだよ。今までの人生の延長と考えず、これから新しい人生が始まると思えばいい。ブーバーの言葉をそのまま進呈したいね。子どもを教育するのは親か先生で、成人は社会が教育する。そして、60歳を過ぎた人間は、自分で自分を教育することになるんだよ。だからこそ、挑戦です。人間の体には3万6000もの遺伝子がある。その多くが使われないままなんです。それはあまりにもったいない。違った環境に身を置けば、うちに秘めた未開発の良き遺伝子が、思わぬ花を咲かせるかもしれない。人生とは未知の自分に挑戦することだよ。

――毎日18時間働いているそうですが

そう。だいたい午前2時に寝て朝の6時30分には起きています。原稿を書くために徹夜することもあります。午前中から予定もぎっしりだから睡眠は平均5時間弱だね。忙しいから、食事の時間も大幅短縮。朝はコーヒー、昼は牛乳とクッキー2枚だけ。夕食以外、食事に時間をかけていない。

――地方講演も多いですね

昨年は約160回。いずれも500人以上の方が集まる講演会です。昨日の長崎での講演も当初は1回の予定だったのですが、3000人以上の方が集まってくれたので急きょ2回講演になって。ただ、同じ話では両方聞く人が退屈すると思い、咄嗟(とっさ)に話の内容も変えました。

今朝、長崎から東京へ帰ってくる飛行機の中では、新聞掲載のための原稿を執筆した後、講演会でのみなさんの反応を詩にまとめていました。今、日経ラジオの短波放送で医師向けの詩の朗読番組をやっていてね。命や死、幸福をテーマにした「哲学詩」という新ジャンルなのですが、そのための詩です。いずれにしても、いつも移動中でも必ず仕事をしているね。

――疲れないですか?

全然。むしろ楽しくて仕方がない。僕は働けば働くほどプロダクティブで、達成感がある。その達成感がエネルギーになっている

カナダの生理学者、ハンス・セリエ氏がストレスには「良いストレス」と「悪いストレス」があると説いていますが、まったく同感。「良いストレス」というのは、人間を前向きに成長させてくれる。バネになる。僕は、他の人が負担に感じたり、嫌だと思うストレスをこの「良いストレス」にするのが得意なのかもしれない。だから疲れることなく仕事を続けられる。もしこのストレスが悪であれば、いくらうまく食事や睡眠時間を調整していても、こんなに健康ではいられないはずだよ。

――ストレスを前向きなエネルギーに変えるコツは?

仕事の依頼を受けた時、言われたままやるのではストレスになるから、そこで自分がやりがいを持てるように工夫したり、発想を転換して取りかかるようにするんだよ。相手に「こうしてほしい」と期待するのではなく、自分を変えて状況を楽しむ。それができるようになると、気持ちもさわやか、イライラすることもなくなる。僕はそうやっている。相手への対応、打つ手を変えることで、プラスのエネルギーを導き出せているんだろうな。

子どもと話すのが楽しい

――仕事によって心が満たされているからこそ、お元気なのだと

それと原稿書きなど、「その時すべきことをする」というのが大事。先延ばしにしない。それに費やす時間は同じですから。そんな発想で時間を有効活用しているから、ますます心の負担も少ないわけで。後は運動かな。なかなか歩く機会も少ないので、駅や空港ではなるべくエスカレーターには乗らないようにしてる。空港で動く歩道を行く人を、それを使わずに追い抜くのが好きでね。早足で歩くとドキドキしてきて、息も切れる。でも追い抜きに成功すると「やったあ!」ってね。これも一つの達成感。僕のエンジンを稼動するエネルギー源。

――95歳の今なお、いい意味での競争心を大切になさっている

誰もがやったことのないことをやるのが好きなんだよ。負けず嫌いだしね。

――ご自身の今後の活動は?

今、子どもたちと話すのが楽しくてたまらない。僕の話を深いところで理解してくれている。感性豊かだよ。これからは子どもたちに平和と愛の大切さを伝えることも私の使命。子どもたちの良いモデルであるよう、もっと人間として磨きをかける努力をしなければと。まだまだ私の命をいろんなかたちで使っていきたい。私の挑戦もまだまだ続きますよ。

(写真)日野原重明さん3つの質問
質問1
これまでの人生で最大の買い物(投資)は何ですか?

ウイリアム・オスラー博士の著書コレクション。私の心の師であるオスラーの著書や症例報告別冊も含めて主なものはすべて集めました。それに費やした時間とお金が最大の投資と言えます。現在、このオスラーコレクションはすべて聖路加国際病院に寄贈し、他の医師たちにも手にして読んでもらえるようにしています。

質問2
こだわりがある、という生き方をしていると思う人を挙げてください

小学生の時の恩師、谷口真一先生。大胆なグループ学習を実践された先生で、当時としては非常に画期的なことだったと思う。そのお蔭で生徒は役割と責任を果たすことを習得できました。今の私の教育観にも大いに影響を及ぼしています。もう1人は関西学院中学部の恩師、矢内正一先生。英語を担当されていましたが、同時に私たちに良寛の心を教えてくれた。シンプルな生き方の素晴らしさをそこで学んだ気がします。

質問3
人生に影響を与えた本は?

終戦直後、聖路加国際病院は米軍に接収され、私は小さなクリニックで診療に携わりながら、米国軍病院の図書室を使う許可を得て文献を読みあさっていました。その時、ウイリアム・オスラー博士の名前が頻繁に登場することに気づきました。オスラーは人道愛にあふれた診察を実践し、アメリカの医学教育を刷新、科学の中に感性を注入した素晴らしい医師。著書の中で「医学はサイエンスに支えられたアートである」「医者にとって一番大事なことは、いかなる時にも心を平静に保つことだ」と語っています。それらの言葉に感銘し、非常に刺激を受けました。今でも、医師とはどうあるべきかといった原点に立つ時、思い出すのがこのオスラーの教えです。よど号でハイジャックされた時も脳裏によぎったのはオスラーの著書タイトル「平静の心」でした。

アンケート 今回のインタビューについて皆様の「声」をお聞かせください。

前のページへ
画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。