日本にフランス料理が本格的に入ってきてから約1世紀。今では世界でも有数のフランス料理大国となった。その中でも、平松宏之さんは独自の輝きを放っている。パリで獲得したミシュランの一つ星。国内に展開する高級レストランからカフェまでの食文化ヒエラルキー。今その視線は、世界に広がっている。
(取材・文/神山典士 写真/田中史彦)
世界24カ国が集まる大会ですが、11回目の今年、日本チームは初めて勝ちに行ったと言って良いと思います。僕はお金集めから始めて、選手養成のためにフランスから専任コーチを呼んだり器のデザイナーを付けたりもしました。
一番欲しかったのは、その国ならではの独自性が評価されるプリ・ディダンティテ(アイデンティティー賞)でした。結果は6位でしたが、一番欲しかったその賞が取れたのでとてもうれしかったですね。
フランス料理の場合、日本代表だからといってただ日本の食材を使えば良いわけではありません。日本人が日本の食材を使うとたいていは日本料理になってしまいます。そうではなくて、食材からはジャポン(日本)を想像させてそれでいてグー(味)はフランス人を満足させるものでないといけない。
逆に言えば、今のフランスは日本食材ブームなのですが、フランス人にはそれらをどうやって使えば良いかやはりわかりにくいんです。だから、海苔(のり)はこうやって使うとフランス料理に合うよ、鰹出汁(かつおだしじる)はこうやるとうまくマッチするよと教えたいと思いました。つまりあの大会は、日本食材のプレゼンテーションの場でもあると思ったのです。
プロの料理人たちは別ですが、一般の人たちは日本よりも香港や上海の方がフランス料理が盛んだと思っています。その証拠に、僕が2001年にパリに出店してわずか4カ月でミシュランの一つ星を獲得した時には、三つ星を取ったような大騒ぎになりました。「なぜ遠い島国の日本人がパリに来て星を取れたんだ」と、一般の人には不思議だったようです。
実際、日本でフランス料理を掲げている店でも、キュイジーヌ・ジャポネーズ・ア・ラ・フランセーズ(フランス風日本料理)の味が多いです。フランス料理というのは、がっちりした基礎を積み上げて、自分を出すのは最終的に少しでいい。その基礎があるかないかなのです。だから、ボキューズ・ドールという大会は、その基礎を世界に知らしめる大会でもあるのです。
実は僕は昨年11月にボキューズさんに呼ばれてリヨンに行きました。するとアラン・デュカスさんと僕の2人に対して「これからの世界のフランス料理界を支えてくれ」と言われたんです。デュー・ヴィヴァン(生き神様)とも言えるボキューズさんにそう言われてびっくりしたし感激もしました。彼は確かにアンバサドゥール(大使)と呼ぶにふさわしい活躍ですが、僕はポン(橋)程度ですよ。でも僕が橋を架けたことによって多くの若者がフランスに渡り、多くの料理人が日本にやってきます。そういう役割が担えればいいなとは思います。

1952年、横浜市生まれ。4人兄弟の三男。都立荻窪高校在学中にフランス文化に傾倒し、70年に料理界へ。78年に結婚して渡仏。ナントやパリで修業して帰国後「ひらまつ亭」を開業。24席で一日70万円を売り上げる。88年「レストランひらまつ」開業、93年「カフェ・デ・プレ 広尾」を開業しカフェブームの火付け役となる。2001年パリに出店し、わずか4カ月後に日本人オーナーシェフとして初めてのミシュラン一つ星を獲得。03年にはジャスダックに上場、04年には東京証券取引市場二部に上場。同年、パリ16区に店舗を増床移転。国内では札幌、福岡、名古屋、東京ミッドタウンなどにも店舗を展開している。
南フランス・モンペリエの双子の三つ星シェフ、ジャック&ローラン・プルセル兄弟と長谷川幸太郎シェフによる2号店「カフェ&ビストロ・デ・フレール・プルセル」が、東京・広尾の「カフェ・デ・プレ」を改装し、4月10日よりオープンし、新しい広尾のランドマークに。食べたくなった時にいつでも気軽に立ち寄れる「大人の社交場」として、1階がカフェ、地階がビストロという作りになっています。
詳しくは店舗公式サイトで
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