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ひとインタビュー仮装して自分のすべてをさらけ出す 「セルフポートレート」という表現 第四十四回 森村泰昌さん

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美術作品に「なる」

ゴッホの自画像を始めセザンヌの静物画といった名画や、マリリン・モンローなどの女優に扮したセルフポートレート作品を20年以上発表し続けている美術家・森村泰昌さん。

何か表現活動をしたい。そう悩み葛藤(かっとう)し続けた森村さんが34歳でようやくたどり着いたのが、美術作品に「なる」こと。それは同時に、ひきこもり引っ込み思案だった自身のすべてを、世間にさらけ出すという自己開示でもあった。
(取材・文/井上理江 写真/三浦健司)

――横浜美術館で開催中の「森村泰昌―美の教室、静聴せよ」展は、美術館を学校の教室と化し、授業を受けているかのように作品を鑑賞。無料音声ガイド付きが面白いですね

たまたまですが、理論社の単行本「よりみちパン!セ」シリーズのホームページで子ども向けの連載を書いていました。そこで小学生の男の子から「森村さんの解説や話は面白い。展覧会でも聞けるんですか?」と質問が届いたんです。それがヒント。僕はピカソやゴッホと違って今を生きている作家。同時代を生きているメリットを生かさない手はない、と。

――森村さんの解説も展示の一つ

そう。肉声という表現があるように、声ってとても肉体的なもの。だからこそ、作家本人の声によるガイドを聞いてもらうことで、展示内容プラスαの何かを感じたり、見いだしてもらえると思います。

カッコいい絵は魅力がない

――独自のセルフポートレート作品という世界を切り開き、20年以上創作活動をされていますが

私の場合、消去法なんです。何か表現活動がしたい。そう思って絵も描いていたし、童話を書き続けたこともあった。でも、どれもいま一つ。好きな美術に携わりながら給与がもらえるからと高校の非常勤講師を掛け持ちしたこともあったけれど、実は学校が大嫌いで登校拒否になってしまったり(笑い)。そんなふうに自分には何ができるのか、を模索する中で見つけた表現方法がセルフポートレートでした。

――自分が美術作品に「なる」。誰もやったことのないことですね

絵画の場合、カッコいい部分だけを表に出して、絵の裏に自分の恥ずかしい部分を隠すことができてしまう。でも、そういう絵ってあまり魅力ないんです。ではどうすればいいかと考え、絵の前に自分が立たなければと思った。それを美術作品に「なる」という表現方法で形にしたわけです。自分が作品になってしまうと後には引けないというか、どうしたって恥も外聞もなく自分すべてをさらけ出してしまう。もともと引っ込み思案だった私だったからこそ、そこまで自分を追い込まないと自分らしい表現方法にたどり着けなかった、またそれだけ切羽詰まっていたんでしょうね。

――直観的に思い切ってやってみたことを世間が評価した

「なんでそんなバカげたことを」という反応もあれば、「面白い!」と言ってくれる人もいる。良しあし関係なく、人から評価されるのがうれしかった。ああそうか、自分を取り繕わず「えいや!」と思ってやると、それは評価される。また表現ってそういうことなのかな、と。それでもっと褒められたいと思うようになって、次は何をしようかと考え創(つく)り続けていたら、結果的にそれが仕事になっていたわけです。

横浜美術館で開催中の「森村泰昌―美の教室、静聴せよ」にご招待 応募はこちらから
(写真)森村泰昌さんプロフィール

1951年、大阪生まれ。京都市立芸術大学美術学部卒。85年、自らがゴッホの自画像になるという、独自のセルフポートレート手法による大型カット写真を発表。以後、一貫してセルフポートレート表現を追求し続けている、88年、ベネチア・ビエンナーレの若手作家展アぺルト部門に選ばれ一躍世界から注目を浴び、以来、国内外問わず数多くの個展を開催。また映画や演劇、パフォーマンスにも参加するなど多方面で活躍中。2006年度の京都府文化功労顕彰事業「京都府文化賞・功労賞」を受賞。著書に「美術の解剖学講座」(平凡社)、「空想主義的芸術家宣言」(岩波書店)、「芸術家Mのできるまで」(筑摩書房)、「踏みはずす美術史 わたしがモナリザになったわけ」(講談社現代新書)、「『美しい』ってなんだろう?」(理論社)他、作品集も含め多数あり。

お知らせ
「森村泰昌―美の教室、静聴せよ」展

横浜美術館で開催中の「森村泰昌―美の教室、静聴せよ」では、初期から現在にいたる約80点を、学校の授業のように紹介。具体的には、ホームルームに始まり、1時間目から6時間目まで、モリムラ先生による授業(無料音声ガイド)として展開していく。最後のセクション「放課後:ミシマ・ルーム」も必見。時代へ受け継がれるべき日本の美術に対する森村さんのメッセージを強く心に刻む仕掛けになっている。

  • 会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1 TEL045-221-0300)
  • 会期: 9月17日(月・祝)まで
  • 10:00〜18:00
    (金曜日は20:00まで開館、入場は閉館の30分前まで)
  • 休館日:木曜日
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