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ひとインタビュー仮装して自分のすべてをさらけ出す 「セルフポートレート」という表現 第四十四回 森村泰昌さん

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本物とのズレが本物になる

――制作中、考えていることは?

本物との間のズレをいかに見いだすか、です。作品に「なる」わけですから、できるだけ似せようと努力します。でも100%同じになることはない。微妙なズレが生じる。そのズレって何だろうと考えていくと新たな発見がある。

たとえばゴッホの自画像の帽子ですが、最初は布で作ってみたんです。でも全然似ていない。それでクギを使って、あの帽子独特のトゲトゲ感を表現した。クギを使ったことで本物の自画像からは離れていく。にもかかわらずゴッホらしさは出てくる。うまく言えないのですが、似せようと努力する中で生じるズレと、それによる発見こそが私の作品のエッセンスになっていく。だいたいその繰り返しで作品は仕上がっていく感じです。

――前例のないことをやるしんどさはありますか?

そういうふうに感じたことはないですね。前例のないことだという意識もない。むしろ過去の古き良き時代に存在した前例を、今という時代の器を移し換えて表現するという作業をしているだけ。器を変えたら全然違うものに見える、結果的に新しいものになっている、というだけだと思う。それはゴヤがそうだったんです。古い世界にある大事な価値、思想を忘れなかったからこそ新しいものを創り出した。

――今回、新たに三島由紀夫を取り上げていますが、今後はどんな人、ものをテーマにしたいですか

常に複数あります。三島由紀夫も十数年ずっと考えていて、今回ようやく形になった。「今だ!」と機が熟すのを待っている状態のテーマは結構あります。ただ、今の時代の女優でピンとくる人が案外いないかな。せいぜい「タクシー・ドライバー」のジョディ・フォスター、「俺たちに明日はない」のフェイ・ダナウェイあたりまで。

――現代社会の男性有名人でも作品にしたいと思える人はいない?

独断と偏見で言わせてもらえば、ヘンな平等意識によって本当に際立つカッコ良さが失われている、希薄になっている。21世紀はそんな時代になってしまった気がする。もちろん男性もおしゃれになり、全体の水準は上がっていると思うのですが、作品にしたい人はなかなかいないですね。

西洋美術はわからなくて当然

――では、最後に、私たちが西洋美術をもっと有意義に楽しむ方法を教えてください

美術館へ行ったら、まず絵ではなく来場者を観察する。腕組みをして真剣に見ている人がいますが、案外そういう人に限ってよくわかっていない(笑い)。なぜなら私自身がそうだからです。絵というものはそもそも一人ひとりの作家の勝手な思いで描かれているものなので、そんなに簡単に他人に理解できるシロモノでもない。また作家の立場から言えば、そんなに簡単にわかってたまるか、という思いもある。なので、わからなくて当然。そういう仲間が大勢いることを確認して安心し、その後、全体を俯瞰していく。

――1点1点鑑賞する必要もない

そう。ざっと見てその中に1、2点、心に引っかかる作品があれば、しめたもの。ただ、気に入った作品の感想は言葉にするといいかもしれません。そこから見えてくることって案外多いから。やや気取って口にしてみるといいですよ。自分でも思いもよらない発見があったりします。私自身もそう。作品を人に説明するため、文章や言葉にしてきた。それが自分自身をより深く突きつめることになったり、次のアイデアにつながったりしていますから。

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(写真)森村泰昌さん3つの質問
質問1
これまでの人生で最大の買い物(投資)は何ですか?

「自分」でしょうか。自分がなにかに投資するのではなく、「自分」に投資する、といったようなことを表現活動としてやっているような気がします。他に、大きな買い物だったなあ、投資だったなあと思えることはあまりないですね。

質問2
こだわりがある、という生き方をしていると思う人を挙げてください

こだわりをもって生きている、あるいは生きた人というのは意外と多いと思います。むしろ、こだわりを捨てる、ということにこだわった人のほうがめずらしい。そういう逆説的なこだわりの人っているのか? しいて言えば、仏陀(ぶっだ)でしょうか。

質問3
人生に影響を与えた本は?

「ニルスのふしぎな旅」。少年がガチョウたちと一緒に飛び、旅をする話です。人生に影響があったかどうかはわかりませんが、小さいころ読んだなかで、なぜかこれだけ鮮明に覚えています。もう1冊はマンガですが、「シルバー・クロス」。あまり知られていないと思います。藤子不二雄の初期作品ではないでしょうか。このマンガに出てくるブラック・クロス、アイアンマン、ジーグフリードといったキャラクターを鮮明に覚えています。

アンケート 今回のインタビューについて皆様の「声」をお聞かせください。

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