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ひとインタビュー向き合うたびに違う発見がある ベートーヴェンはいつも新しい 第四十八回 仲道郁代さん

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芝居と音楽の共通点

――演奏家としてのこだわりはありますか?

必要以上にこだわりを持たないようにしています。「〜しなければならない」が増えるとかえって自分の可能性を狭めてしまいます。だからジンクスも持ちません。

ただ、ピアノの調律に対してだけはとても口うるさい(笑い)。だって、楽器の状態が良ければ、音も良くなって自分のインスピレーションも広がるし、それが結果としてお客様にもより良い演奏を楽しんでもらうことにつながる。だから、しいて言えば音にはこだわりますね。

――クラシックファンのすそ野を広げる活動にも積極的に取り組んでますね。大人のためのコンサート「ゴメン!遊ばせクラシック」では、芝居の方々とコラボレーションしたユニークな企画が注目されました

芝居と音楽って同じ表現芸術だけに共通点が多いんです。たとえば、脚本と楽譜って同じ役割を果たすものなんだと知りました。同じ「ありがとう」というセリフでも流れによって意味が違うので、その都度言い方も変わるでしょう。それは音楽にも通じることで、同じドレミファソでも前後の流れや、それで何を言わんとするかで演奏の仕方が変わるんですよね。

――言葉の使い方という面でも演劇の方に鍛えられたそうですが

音には言葉では到達できない、その先の世界、とてもあいまいだけれど、可能性豊かな表現の世界が存在している。そこが音楽の素晴らしさです。とはいえ、そこに行き着くには徹底的に言葉を使って考え抜く作業がやはり必要なんです。それがどこまでできているかで演奏の質感も変わる。何となくこんな感じで、といったフィーリングに頼りすぎるといい演奏にはならない。だからこそ、言葉で徹底的に表現しようとする芝居の方々との交流はとても貴重な経験でした。

お茶と懐石料理で心の洗濯

――ところで最近、お茶と懐石料理を習い始めたそうですが

月1回ずつですが、唯一時間を忘れて過ごせる「心の洗濯の時間」になっています。お茶のおけいこには娘と一緒に行ける時もあって、それが何よりうれしい。懐石はしにせ料理店「辻留」で教えていただいています。和の世界って、お茶も料理も季節に合わせたお花やお茶わんをそろえて、お客様のためにものすごく入念に心を尽くして準備をしますよね。そこがステキだなと思っています。落ち着いて、心穏やかに、心を配って、心を尽くす。日本文化の細やかさ、美しさに毎回感動しています。この感覚が演奏や日々の生活に少しでも反映されればいいのですが。実際には茶室を出た途端、現実に戻って「ああ時間がないわ」ってバタバタ走りまわっている。でも、それはもう仕方ないですよね(笑い)。

(写真)仲道郁代さん3つの質問
質問1
これまでの人生で最大の買い物(投資)は何ですか?

楽器(ピアノ)ですね。「ヤマハアップライトピアノ」から始まって、これまでに11台購入しています。それと、いつでも練習できる場所を確保するというのもピアニストにとっては投資ですよね。ドイツへ留学した時も、最初はアパートを借りていたのですが、そこでは昼間の練習ができなくてボロボロの一軒家へ引っ越しました。ドイツは音楽を愛すると同時に「静けさ」もちゃんと愛する国。町の中では昼寝の時間に音を出してはいけなかったんです。ボロ家とはいえ、学生の身で一軒家を借りるというのはかなり大変でした。

質問2
こだわりがある、という生き方をしていると思う人を挙げてください

今、「懐石辻留」の「お料理塾」に通っているのですが、ここのご主人の辻義一さん。いぶし銀のような落ちついた風情で、淡々と美しく、おいしい料理をお作りになる。きちんと丁寧に仕事をされているその姿にあこがれます。

質問3
人生に影響を与えた本は?

「ピアノへの道」(アンドル・フォルデス著)です。あまりに直球なタイトルですが(笑い)、クラシック好きな父の書棚にあったものを小学校高学年のころに読みました。著者のピアノの楽しみ方などが描かれた、ごくごくシンプルな回想記なのですが、当時はこの本を心のよすがにしていました。

アンケート 今回のインタビューについて皆様の「声」をお聞かせください。

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