まずは単純な達成感です。田んぼで作業すると風が気持ちいいとか、空が青いなど五感が刺激されますしね。それに自分で作った米は、作業の積み重ねが背景にあるから、食べる時にそのイメージが広がっておいしいんです。フランス人が「食はイメージだ」と言っていますが、本当ですね。また自分が何も知らないってことがよくわかった。農業や漁業に携わる人って、政治や国際情勢、資源、燃料問題などが仕事と深く結びついているからみんな物事をよく知ってるんです。農薬にしたって、消費者は勝手に安全とか有機農業とかいうけど、実際に作る側は大変なんですよ。日本の農業は消費者が変わらないと立ち行かないと実感しましたね。
都会の真ん中で、消費者と生産者が直接交流して理解し合える場になればいいなと思って始めました。とにかく農業をやっている人はおもしろい人が多いんです。そういう人たちが工夫して作った農作物を消費者に紹介したいという思いが強かったんです。もともと役者って、文化や情報を伝える役目を担ってきたと思うんですよ。この間、大分の姫島にロケに行ったんですが、そこは芝居や踊りがすごく盛んな島なんです。本土からフェリーで1キロの距離の島だけど、昔からよく旅芸人が訪れては、踊りや芝居を教えたり、情報を持ってきたそうです。つまり役者って今のインターネットの役割だったんじゃないかなって思うんですよ。芝居をして役を演じる一方で、役者である僕たちが出かけることでマスコミが取り上げてくれたり注目されたりすることも事実。僕がかかわることで農業や生産者が注目されるなら、僕は喜んで人寄せパンダになりたいと思っています。
この9月で講座の第1期は終了したのですが、どんな人が来るかと思ったら、これが30代前後のバリバリの会社員たち。仕事に役立てたいという人もいるけど、どちらかというとボランティアや社会貢献をしたい、農業を自分なりにプロデュースしたいという人たちが多かったですね。講座修了後も集まってはいろいろ相談していますよ。僕は従来の農業体験ツアーを一歩進めて、自給自足を意識した体験をさせたいんです。たとえばお米5キロを実際に作ってみる。親子3人が1カ月でお米を10キロ食べるとすると、1年に換算すると24分の1のお米を自給自足できたことになりますよね。次の年はもう一歩進めて12分の1まで自給率を引き上げてみようか、というふうに提案したいんです。
すばらしいことだと思います。ですが、僕は思いだけで「引退後に即、農村に移り住む」というのは反対です。農作業はとても体力がいりますからね。自宅のベランダ菜園でシソを作るところから始めてもいいじゃないですか。あるいは、農閑期に農村に手伝いに行って、土地の人になじんでみるとか。何でもそうだと思うけど、自分の特技を生かしながら、できることからやってみたり、興味のあるいろんなことにかかわってみる、という姿勢が大事なんじゃないかと思います。

やっぱり役者になったことですね。僕の場合、勢いでなってしまったから。大学時代にデビュー作の「ドカベン」に出た時は役者を続ける気持ちはなかったけど、演技が下手だったのでスタッフや先輩たち周囲から毎日毎日やめろ、やめろと言われ続けて、かえって反骨精神で目指してしまったんです。その決意がなければ今の自分はなかったと思うと、あの時役者になると賭けてみたことは大きいことですね。
民俗学者の宮本常一さん。この人は学者だけど、とにかくフィールドに出向いた人です。日本全国津々浦々を歩いて、農業、漁業に携わる人たちを始め多くの人を見て著書に書き残しています。地味だけど、こだわりがないと絶対やれないこと。今その本を読むと、名もなき人たちの言葉がとても重く、今後の日本にとても大事なことが書き残されていると感じられるんです。
J・アダムソンの「野生のエルザ」シリーズ。最初は親から読めといわれたんだけど、大好きな本になりましたね。僕はもともと動物好きでしたが、この本に出てくるJ・アダムスンとライオンのエルザとの関係が、たとえライオンと人間でも実の親子みたいな関係に思えて、人間と動物でもこんな関係が作られるんだと、とても印象に残っています。
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