【2007/11/05掲載】
二枚目俳優として活躍し、山口百恵さんとのコンビでたくさんの映画やドラマをヒットさせた三浦友和さん。百恵さんと結婚し、周囲から常に注視される大きなプレッシャーに負けることなく一歩一歩確かに歩んできた。その人間的な深みが演技に結実し、今やいろいろな役柄を印象的に演じられる存在感のある俳優として、多くの監督からひっぱりだことなっている。そんな彼が、大事にしてきた仕事と家庭について語った。
(取材・文/田中亜紀子 写真/田中史彦)
僕自身、前作がとても好きだったので、続編のお話をいただいた時は単純に参加させてもらえるという喜びがありましたね。前作は僕の父親が非常に喜んでくれた作品だったんです。今回の舞台は昭和34(1959)年の東京ですが、実はうちの家族が山梨から東京へ出てきたのが昭和35年です。だから父も母も僕もこの映画で描かれている景色が原風景としてある。現実はもっと殺伐としていて、こんなにやさしい人ばかりではなかった。かといっていなかったわけではなく、町内に1人、2人とか、いい思い出として残っている人物像がたくさん住んでいるのが、この三丁目ですね。
前作と同じスタッフ、キャストということで、同窓会のようで非常に盛り上がりました。僕の役の宅間先生という医師は、東京大空襲で家族を失い、戦争を引きずっている象徴のような存在です。あまり出番は多くないのですが、三丁目のほのぼのとした逸話の集大成の中、寿司でいえばガリのような、なくてはならない貴重な存在として出させていただいています。
今年は実に5本も、僕が出ている映画が封切られたんです。みんなイメージの違う役で、今年ほどいろんな三浦友和が見られる年はない、と言ってもいいかもしれません。「転々」では、オダギリジョーくんを取り立てるやくざっぽい借金取りの役です。ある日「その借金を自分が払うから、自分が気のすむまで東京を歩くのにつきあえ」とオダギリくんに提案し、2人で東京を散歩する。実は、僕の役の男はひょんなことから自分の奥さんを家で殺してしまい、自首の前に、奥さんとの思い出の東京散歩を気のすむまでしたい、という理由があるんです。
いつも、役をいただく時は「おもしろそうだな」と「自分にできるかな」との気持ちが合った時に、お受けしています。この役の場合は形から入りました。髪はつけ毛をつけ、服や小道具をそろえたら、それらしくなってきましてね。またこの役の夫婦には子供がなく、愛情を持続させるために2人で日々の生活に変化をつけて支え合っているんですが、僕自身も結婚4年目まで子供ができませんでしたからね。子供のいない人生もあるかな、なんて話も当時はしていたから、なんとなくこういう関係も想像はつくんですよ。
前向きな言い方をすれば、それがいろんな意味でプラスになっていると思います。それなりの立場の人をお嫁さんにするわけですから、当時はある程度覚悟していたつもりでしたが、いざ結婚生活に入ってみると、できているようでできていなかったようです。どんな人でも結婚は勢いじゃないですか。だから将来のこともあまり考えていなかった。もっとも将来のことを考えたら、結婚する人なんていなくなってしまうかもしれませんが(笑い)。当時は自分の仕事を考えるよりも、家族がどうしたら居心地よく暮らしていけるか、そのことにエネルギーを使わざるをえませんでしたね。
実際、結婚してから、30代に入ってしばらくは俳優生活の中でもっとも難しい時期でした。僕はそれまで文芸作品やいわゆる青春物の作品をやってきたのですが、30歳を過ぎたらもうそんな役はないわけです。俳優は世間が評価するし、監督がキャスティングをするので、一俳優である自分がどんな理想を持っていても、どうにもならないところがある。僕の場合、なりゆきで俳優になったこともあり、次第にどう仕事をしていいかわからなくなっていった。自分の中に迷いがあると、それが周囲に伝わって、こいつをどういう役につけたらいいか、と周囲も迷うようになるんですよ。その難しい時期がちょうど子供が生まれた頃にかかり、家族を食わしていけるのか、という不安にもなり、きつかったですね。

1952年、山梨県生まれ。60年、小学3年生の時に東京に転居。東京都立日野高校卒業。同級生にRCサクセションの忌野清志郎がおり、高校時代は彼と違うバンド活動を行っていた。卒業後、専門学校へ進学するが退学。家を出て、RCサクセションのメンバーの一人と同居。最初はバンド活動をしていたが、そのマネジャーの紹介がきっかけで映画デビュー。山口百恵とのコンビで主演映画やドラマを次々とヒットさせた。80年、山口百恵と結婚。85年、映画「台風クラブ」でそれまでの殻を破り、以来着実に役柄を広げ、多くの作品で活躍し現在に至る。出演した映画は100本近く、「悲しきヒットマン」「無能の人」「M/OTHER」「茶の味」「ALWAYS 三丁目の夕日」など。今年は本文に紹介した作品を含め、「松が根乱射事件」「22歳の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語」「Mayu‐ココロの星‐」など全5作品が封切られた。
●「ALWAYS 続・三丁目の夕日」
大好評を博した「ALWAYS 三丁目の夕日」の続編が、11月3日から全国の東宝系で公開中。同じスタッフとキャストを動員し、前作をしのぐ感動的な作品に仕上がった。堤真一、薬師丸ひろ子、堀北真希などが演じる鈴木オートの人々の日々、売れない作家の茶川さん(吉岡秀隆)と淳之助(須賀健太)、ヒロミ(小雪)との恋愛模様、そして茶川さんは芥川賞をとれるのか。新たな事件が満載だ。
●「転々」
藤田宜水の小説「転々」を原作に、ドラマ「時効警察」の三木聡監督が映画化。11月10日よりアミューズCQN、テアトル新宿などで公開。オダギリジョー扮するダメ大学生・文哉と、三浦友和扮する、やくざ風な借金とりの福原の奇妙な東京散歩のストーリー。借金を立て替えてやるから散歩につきあえ、という変な提案の陰には、福原が「妻を殺した」という重大な秘密が隠されていた。福原役を演じる三浦友和には、役者としての新たな方向性が垣間見える作品となっている。出演はほかに小泉今日子、ふせえり、松重豊など。
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