「サラリーマン金太郎」や「特命係長 只野仁」などの当たり役に代表されるように、男気のある役を多く演じてきた高橋克典さん。さわやかさと色気が同居する甘い笑顔の底には、役がかわるたび体ごと改造するような努力家の一面があった。そんな彼がこれまでどのように役と向き合ってきたのか。 引退覚悟の時期のことや、現在出演中のドラマ「オトコの子育て」まで、ざっくばらんに語ってくれた。
(取材・文/田中亜紀子 写真/田中史彦)
僕はホームドラマ自体、初めての経験です。今回は妻と子どもを置いて6年間も家出をしていた父親が、妻の死をきっかけに3人の子どもたちと暮らし始める物語。僕はダメダメの父親役でして、フリーライターで、仕事もあまり真剣にやってなくてお金も甲斐性 (かいしょう)もない。何気ない日常の暮らしを充分に楽しめる男。子どもに向かって「子育てする気ないから」とか、「負け犬で何が悪いの?」とか平気で言っちゃう。独特で、その半面、普遍的な価値基準の男。
「特命係長 只野仁」の時は、 ギャグのつもりで筋肉をめちゃくちゃ作ったんですよ。今回はその逆で「運動神経を悪そうに」と言われていたので、いっさい運動しないでいたら太ってきて、ものすごく運動神経悪そうになっています(笑い)。ライトコメディーなので、いい加減なキャラに演じていますが、実は価値観の許容量が広い男といいますか。人として生きる上で何が一番大事なのか、実はとてもよくわかっている。けど、それを全面に出さずに、ひょうひょうと生きている。そんな奥の深さを狙っていますが、これが難しい。主役だからある程度色もつけたいけど、強いキャラじゃないし。自然なコメディーって難しいですね。共演の国仲涼子さんはそういう芝居がすごくうまいので、コツを聞いたら才能の問題のようです(笑い)。
そうなんですよ。子どもたちは収録中にもどんどん成長するから、びっくりします。彼らの純粋な芝居に、こちらも反射神経みたいな反応が引き出され、刺激がありますね。共演者の方も個性的で、国仲さんはもちろん、小泉孝太郎さんもちょっと気弱な教師でいい味出しています。またこのドラマ、子どもをめぐる現代社会の難しさもうまく盛り込まれているんですが、その象徴として尾美としのりさんがいわゆるモンスターペアレント(学校に理不尽な苦情を訴える保護者)みたいな、クレーマーの親役でおもしろくてね。
運動会の日付は天気をきちんと分析して決めろとか、作文に将来の夢という漠然としたタイトルはやめろとかね。でも一理あることもあるし、僕にはまだ子どもがいないけど、どっちかというとそっち側の親になりそうです(笑い)。文句を言おうっていうんじゃなくて、教師が何を考えているか知りたいから接触したいというか。僕の両親も教師だったけど、今の世でどんなことを言って教師は人を育てるのか興味あるんですよ。僕は自分が認める教師の言うことしか聞かなかった。たとえばただ「並べ」と言われても、その理由がわからないと納得できないみたいな。何事も何のためというモチベーションがわからないとやる気が出ないので、子どもが学校でその点を学べるといいですね。
僕の場合、それがわかったのはデビューから約10年後。考えるきっかけになったのが「サラリーマン金太郎」です。あれも今でこそ当たり役と言われますが、最初は何であいつが?という声もあった。当時は会社員もやったことなかったし、ガタイだって小さいし。でも本宮ひろしさんの原作が大好きで、彼の描く男の魂、瞳、男がゾクっとするバイブル的な作品をどうすれば演じられるかと必死でした。
毎日毎日考えました。風がびゅうびゅう吹く所に出かけてみたり、富士山に登ったり、ご飯を食べる時にも、ちまちました食べ方をしないで豪快に食ってみたりと、自分を大きくみせることを試していましたね。ガタイの小さい自分でも、視聴者が自分もこんな風に生きてみたいと感じる男の「気概」を見せたいと思ったんです。男ってプライドや気概だけで生きているところがあるじゃないですか。女性と比べて直接的な人類継承能力がないから、プライドでしか生きられない。それまでは自分の夢のためにやってる感もあったけど、このガタイの小さい、何の変哲もない奴が演じることで、見た人に何か感じてもらえたらと思いました。金太郎はとても好評で、主役としても評価されてうれしかったのですが……。

1964年神奈川県生まれ。両親が教師の家庭で育つ。青山学院に初等科より在学。28歳の93年「抱きしめたい」で歌手デビュー。同年「ポケベルが鳴らなくて」でドラマでもデビューし、以後、俳優として数々のヒットドラマに出演。「サラリーマン金太郎」、「特命係長 只野仁」など当たり役がシリーズ化。その他「傷だらけのラブ・ソング」「年下の男」「バツ彼」「女系家族」など、いろいろなイメージの役も演じている。映画は「竜二Forever」「新・仁義なき戦い」など。40歳を前にモデルの中西ハンナと結婚。先日、テレビ朝日開局50周年記念ドラマスペシャル「点と線」にて、ビートたけしと共演し、生真面目(きまじめ)な若き刑事役を熱演した。
従来のホームドラマとは逆説的な設定のファミリーを描く「オトコの子育て」。妻も子どもも置いて6年間も家出していた父親が、妻の死によって子どもたちと同居することになった。子育てなんてしない!と言い放つ、超無責任で脱力したフリーライターの父親役に高橋克典が挑戦。常識はずれの父親のいい加減ぶりが、意外にも子どもたちの助けとなる?! また、そもそも彼の家出の理由に秘密がありそうで……。主な共演者に国仲涼子、小泉孝太郎、滝沢沙織、尾美としのり、鈴木砂羽、加藤茶。子役に夏居瑠奈、吉川史樹、遠藤由実、吉川史樹。脚本は「特命係長 只野仁」の尾崎将也。
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