正直、夫に支えられながらもまだシンガー・ソングライターとして行き詰まりを感じていました。自分の曲が書けないんです。自分のために曲を書こうとするのですが、「小坂明子」が歌いたがってないことを自分自身が一番わかっていた。だから、どうしたら小坂明子の魅力を引き出してあげられるのかと考えれば考えるほど曲が書けなくなって。その頃は年10曲くらいしか書けていないんです。でも、人のためなら曲が書ける気はしていた。だから作曲家としてやっていこうと決意し、知人を頼って上京したんです。
「年に10曲しか書けない人間がなぜ作曲家になれるんだ!?」と猛反対だったのですが、結局ついてきてくれました。上京し、知り合いのつてで松田聖子さん、中森明菜さんなどの曲も、私の曲を気に入ってくれた方の紹介で書かせてもらえるようになりました。そのうちアニメ音楽の仕事が入り、それからどんどん仕事が増え、1週間に90曲書いた時もありました。その頃は年間200曲以上は書いていました。
いいえ。ピアノで作曲するとピアノ向きの曲になってしまうので、楽器は一切使わず、楽譜に向かって机で書きます。だいたい、打ち合わせの時点で曲のイメージが私の中にでき上がっていることが多いので、それを譜面に起こしている感じですね。
どんなに数多くの曲を書いても、依頼された曲の中ではどうしても表現しきれない部分がある。そのことに気づいて。人のために曲を書くのは天職だと思っているんです。でも、それだけでは音楽家として何かが足りないままの気もした。そろそろちゃんと小坂明子としてのメッセージも発信していかないといけないんじゃないか。そんな思いが数年前から自然にふつふつとわき上がってきたんです。懐メロ歌手扱いされるのも嫌でしたしね。それで自分の曲を作り、ピアノインストのアルバムも出したんです。
実は「あなた」を歌っている時に比べ、声がかなり低くなってしまったんです。だからインスト半分、歌半分で行いました。昔の小坂明子のイメージで聴きに来ていただくと申し訳ないなあと思いつつのライブでした。同じ日に2ステージを行ったのですが、1回目は無防備にステージに入ったら、私も観客の方々も緊張してか、空気が完全に真四角(笑い)。かなりぎこちなかったのですが、2回目はとてもやわらいだ、よい雰囲気のライブでした。それで自信も多少芽生え、その後も少しずつライブをするようになりました。
今年になってようやくこんなにステージって楽しかったんだと心から思えるようになりました。昔はお客さんのニーズに自分をはめこまなきゃという気持ちが強かった。でも、今はもっと自然な自分がいて。「気に入ったら来てください」と開き直れる、いい意味での図太さも備わった気がします。だから、私自身が一番自分のライブを楽しんでいるのかもしれません。
大切な宝箱。若い時はそれを開けたら一気に未来へワープさせられちゃった(笑い)。でも、おかげで先に未来を経験し、今、現実を歩かせてもらっているんだと思います。歌詞の最初に「もしも〜」とつけたせいでしょうか、当時の願いや思いはかなわず、あの歌詞どおりの人生ではなかったのですが、そんな若かりし頃の、セピアがかった自分の淡い夢を眺めつつ、今も気持ちよく歌っています。
今までどおり、作詞・作曲・編曲家としての活動も続けながら、自分自身の音楽活動も続けていこうと思っています。徐々にライブへ足を運んでくれる方も増えているので。いずれにしても自分に嘘のない音楽を作り続けたいですね。

高校生の時、両親に買ってもらったグランドピアノ。ずっと関西の実家に置いてあったのですが、一昨年東京へ運んできました。もう何年も弾いていなかったのですが、調律師の方が「『あなた』を作ったピアノでしょ」と言って一生懸命調律してくれました。お陰で今、家でこのピアノを使っています。
夫であり、マネジャーでもある千葉健治さん。まず「我が家にはこたつを置くな」と言われました。「あなたの曲にはこたつとみかんは似合わないから」と。それからファッションやデザインにもすごくうるさい(笑い)。でも、ふだんは口に出して言いませんが、そのこだわりたるや、すごいなあと実は尊敬しています。
鈴木その子さんの著書「新 やせたい人は食べなさいー奇跡の鈴木式・スーパーダイエット」(祥伝社)。この本のおかげで22キロのダイエットに成功しました。そしてスリムになったと話題になって、私自身もダイエット体験エッセー「あきらめないで」(双葉社)を出版、ベストセラーになりました。
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