昨年末、NHK「紅白歌合戦」初出場を果たし、「リストラを乗り越えたシンガー」として一気に注目が集まった馬場俊英さん(40歳)。彼は32歳の時、レコード会社から契約を打ち切られたが、音楽への思いを捨てず、一から自分の手で音楽活動を立て直し、5年後、奇跡的にメジャーの舞台に戻った。何げない日常をつづった穏やかな彼の音楽の奥には、絶望と苦難の日々を乗り越えた不屈の思いが昇華され、頑張っても報われないことの多い大人たちの心に響いている。
(取材・文/田中亜紀子 写真/小山昭人)
ありがとうございます。まさか自分の音楽活動の延長線上に、紅白という華やかな舞台があるなんて想像したこともなかったので、本当に驚きました。紅白決定は親や親族はもちろん、同級生や先輩後輩などがすごく喜んでくれて、急にみんなに郷土愛や母校への愛みたいなものが芽生えたみたいです。
これまで地道に続けてきた活動を、それほどスタイルを変えずに注目してもらえたことで、僕自身もスタッフも大きな自信が持てました。僕は「ライブをコツコツやってきたことは間違ってなかった」と、レコード会社も「こういうプロモーションでよかった」と、そしてコアなファンの方は「自分がずっと好きだった馬場の音楽は間違ってなかった」と、みんなが賞状をもらったような気分でした。発表がちょうどコンサートツアーの間で、決まってからはものすごい盛り上がりで……。僕もファンの方もそのコンサート空間がかけがえのないものに思えましたね。
確かに30代は思い通りにならない時期が続きました。僕は18歳で音楽を志して上京し、28歳でデビューしたのですが、あまりいい結果を出せず、32歳で契約が終了しました。ずっと曲は作りためていたのに発表できないストレスがあり、インディーズ(自主製作)で勝負しようと燃える気持ちもあった。失った自信を取り戻す意味でも、マーケットを意識せず自分の気持ちに沿った音楽を作ろうと思いました。
それまで一緒にやっていたスタッフが、いろいろ音楽の仕事を振ってくれたので、歌える場所があれば居酒屋でも屋形船でも喜んで行きました。並行して曲を作り、自宅の機材で録音して。工場や印刷会社に「CD作りたいんですが」と電話したりして、手探りでしたが、自信作ができた時はうれしかったですね。そしてCDをかばんにつめ、意気揚々とショップ回りに出かけていったんです。自分は売れなくともメジャーで活動していた人間だから、店に行ったら「馬場さん新しい曲作ったんですね」と喜んでもらえると勘違いしてね。ところが世間は厳しくて。自分が手にしているものはこれまでの自分のすべてであり、未来への希望の象徴なのに、聴くはおろか手に取ってさえもらえない。「こういうのいらないんだよね」と言われるたび、「君はいなくてもいい」と聞こえ、悔しくて情けなくて歩いていて涙がとまらなかったです。
たとえわずかでも、CDを聴いてくれた人たちが「よかった」と言ってくれたんです。誰でもそうだと思いますが、抽象的な大きな期待よりも、数は少なくても確かにそこにあるつながりや、その向こうにある必要とされる気配は力になる。それに、ふとラジオなどから自分の曲が流れてくるのを耳にした時、「まだ自分は世間とつながっている、僕はここにいてもいいんだ」と、もう少しがんばろうと思えました。みんな忙しいからCD1枚聴いたぐらいじゃ心に残らないんですよ。さらに力の入った2枚目、3枚目を作って初めて新しい話が進む。実際、メジャーへ戻るきっかけとなった、コブクロがカバーしてくれた曲も2枚目のCDです。またそういう活動で、とても大切なことを教えてもらえたんです。

1967年埼玉県生まれ。小学校3年生から作詞作曲をはじめ、音楽に親しむ。野球少年を経て、高校時代はバンドを組み、18歳で音楽を志して上京。窓ふきや弁当の配達などのバイトをしながら音楽活動を続け、28歳でフォーライフからシングル「星を待ってる」でデビュー。「もうすぐゴング」など3枚のアルバムと計7枚のシングルを出すが32歳で契約終了。その後、自主レーベルを立ち上げ、「フクロウの唄」「鴨川」「Blue Coffee」の3枚のアルバムを製作。2枚目のアルバムが大阪のラジオ局で話題になり、コブクロもカバーしたことで注目され、38歳でメジャー復帰。同世代の心情をつづったアルバム「人生という名の列車」はロングセラーとなっている。昨年4月には大阪野音での3000人コンサートを実現。「スタートライン〜新しい風」で紅白に初出場。イオン、ダイドーブレンドコーヒーなどCMにも楽曲が採用された。昨年は一青窈、秋川雅史への楽曲提供も話題に。趣味はマラソンと野球。
「馬場俊英2008年ツアー」の開催日程が決定しました。予約方法、開演時間、料金など詳細は、馬場さんの公式ホームページ内「ババライブ」をご参照ください。
■2月23日(土)
ハーモニーホール座間
■3月1日(土)・2日(日)
大阪フェスティバルホール
■3月8日(土)
神戸国際会館こくさいホール
■3月9日(日)
京都会館第一ホール
■3月14日(金)
広島アステールプラザ 大ホール
■3月16日(日)
Zepp Fukuoka
■3月29日(土)
名古屋センチュリーホール
公式ホームページ
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