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ひとインタビュー宝塚から映画への華麗な転身 演じるとは命を吹き込むこと 第六十一回 檀れいさん

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生真面目なその素顔

宝塚歌劇団の娘役トップを長く務めた後、映画「武士の一分」で木村拓哉の妻であるヒロイン・加世役として、鮮烈なスクリーンデビューをした檀れいさん。昨年はビール会社のテレビCMで、世の男性たちの胸をときめかせた。しかし、映画を中心に活動する美貌(びぼう)の女優の素顔はなかなか漏れ聞こえてこない。この春、再び山田洋次監督の作品「母(かあ)べえ」への出演を果たした彼女のミステリアスな素顔に迫ってみた。
(取材・文/田中亜紀子 写真/田中史彦)

――山田洋次監督の映画「母べえ」は、戦時下、つつましく幸福に暮らしていた一家が、治安維持法で父親が逮捕され、そこから始まる苦労の中で懸命に生きるお話ですね。最初に台本を読んだ時の印象を教えてください

ある意味で、とても難しい作品だと思いました。1940年から41年という時代は、まだまだその時を生きた方たちがご存命です。そんな近い過去を演じるにあたって、よりリアルに表現しないと失礼になってしまう。とはいっても私にはわからないことも多い。その時代を生きた方たちに「これは違う」と言われてしまうことが一番怖いですね。例えばもっと昔、平安時代や江戸時代の作品だったら、それはそれで難しさもありますが、ご覧になった方が「これは違う」とおっしゃることは少ないですから。

戦争は人の心を狂わせる

――檀さんは吉永小百合さん演じる「母べえ」を助けながら、子どもたちを励ます独身の叔母「久子」役ですが、演じる上で何を大事にしましたか

母べえの家族を支える一人として、本当の家族ではないけれど、親類のチャコちゃんとして、当たり前のようにそこにいる存在感を出したいと思いました。近所の人でもなく、お手伝いの女性でもなく、一家の空気感を壊さず、スクリーンの上で違和感のない存在というか。そのために実際に私が何かをするというより、皆さんの演技のバランスを崩さないように、いい意味ですき間を埋めるように演じていましたね。

――この映画の体験で、ご自身の戦争に対する思いで変わったことはありますか

これまでは戦争というと、戦場で戦っている兵士の姿が最初に思い浮かびましたが、この映画の制作を経験して、もう一つの戦争の形を思い知らされました。外国人と戦うだけが戦争ではなく、日本人同士でも戦いが行われている。人が人として当たり前に生きることができなくなってくる。それがチャコちゃんの「どうして女性がきれいになろうとしちゃいけないの?」という言葉にもつながります。家族を守るために言いたいことも言えない人がいたり、思っていることを言ったばかりに不幸になったり。私には誰が悪いのかはわかりませんが、戦争というものは人を狂わせていくものなんだ、と感じました。

山田監督からもらった宝物

――山田監督の作品に出演したのは二度目でしたが、監督の撮影現場は独特な雰囲気があるそうですね

まだ他の監督さんとのお仕事経験があまりないので、独特かどうかはわかりません。でも監督とスタッフの「いい作品を残していきたい」という意識の高さ、そのためにそれぞれが必死になっている緊張感のある姿勢。そういう現場が私は大好きなので、山田監督に巡り会えて、その現場でお仕事ができたことはとてもうれしいことですね。

――宝塚を退団し、いきなり「武士の一分」に抜擢(ばってき)され、しかも木村拓哉さんの相手役ということで、当時は緊張しましたか

活動の幅を広げるために宝塚を卒業しようと思ったので、これほど早くチャンスに恵まれたことは、本当にうれしかったし光栄でした。木村さんに関しては、もちろん以前からテレビで拝見していますが、変に緊張して意識するより、一人一人の役者として、ここで一緒にいいものを作りたいという思いが強かったです。逆に、特別に意識するのは相手にも失礼のような気がします。また「武士の一分」の時に山田監督から、役者として変にあれこれ考えずに「生地のままでいてください」というお言葉をいただきましたが、それはずっと私の心に残る宝物の言葉であり、忘れたくないですね。

――「武士の一分」でいろんな賞をもらって評価されたことで、何か変わったことはありますか

私にとって役柄の評価とは、みなさんが作品をご覧になって「とてもよかった」と思ってくれた後のごほうびのようなもの。私自身は宝塚時代も、その後もまったく変わっていません。どちらかというと変わったのは周囲じゃないでしょうか。私はもっと上手になっていいものを作りたいので、まだまだ勉強しないといけないと思っています。またフィールドを広げたいと宝塚を卒業し、実際映画やテレビに活動が広がったので、その中で自分がどう歩んでいくのか、自分には何が必要なのかをもっともっと見極めたいですね。

(写真)檀れいさんプロフィール

1992年宝塚歌劇団に入団。雪組公演「この恋は雲の涯まで」で娘役として初舞台。99年より月組の娘役トップとして舞台を務める。99年、2002年と2度の中国公演に参加し、その美貌(びぼう)で「楊貴妃の再来」として現地で人気を博す。03年星組のトップに。05年宝塚歌劇団を退団。06年、山田洋次監督の「武士の一分」のヒロイン役で映画デビュー、日本アカデミー優秀主演女優賞をはじめ、多くの映画賞を受賞。07年は「釣りバカ日誌18」に出演。またサントリーの「金麦」、ANAの「LIVE/中国」などのCMに出演し、お茶の間の話題に。

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「釣りバカ日誌18」

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お知らせ
山田洋次監督、吉永小百合さん主演の「母べえ」が2008年1月26日より全国ロードショー

「武士の一分」から1年、山田洋次監督が、吉永小百合主演で激動の昭和を描く「母べえ」が完成。原作は、黒澤明監督作品のスクリプターを務めた野上照代の自伝的小説。舞台は1940(昭和15)年の東京、戦争反対を唱える父が治安維持法で逮捕され、残された母と幼い2人の娘が、周囲の人々の優しさに支えられ、様々な困難にあいながらも懸命に生きていく姿を描いた感動のストーリー。主人公の家族・野上家は、父と母、娘の初子と照美がお互いを「父べえ」「母べえ」「初べえ」「照べえ」と呼び会う仲むつまじい家族で、主人公の「母べえ」こと野上佳代を演じるのは吉永小百合だ。「父べえ」こと野上滋に坂東三津五郎。滋の教え子で、出版社に勤務する山ちゃんこと山崎に浅野忠信。滋の妹で野上一家を支える野上久子に檀れい。そして、変わり者の叔父に笑福亭鶴瓶ら実力派キャストがそろう。
制作・配給/松竹株式会社

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