子どものころから、歌うと拍手をもらえるのが何よりうれしくてね。当時からレコーディングよりもライブが好きでした。姉はクラシックへ進みましたが、声質も性格も違うし、姉にはかなわないと思っていたので、私はマイクを持って情感込めて歌うほうがいいわ、と思い歌謡界へ進みました。
もちろん、辞めたいと思ったことだってあります。でも、そういうときに必ず歌にかかわる何かが起こった。歌に救われた。だから今はもう私の人生は歌うことが使命なのだと思っています。
互いにジャンルの違う音楽を勉強してきましたが、童謡に関しては小学生時代、ひばり児童合唱団で教わったというベースが同じなの。なので、自然に一緒に歌えました。姉妹だからこそ出せるハーモニーが多くの人に支持されたのかなとも思います。何より私たち自身も楽しいんです、この活動が。同じ童謡を何度歌っても全然飽きないですしね。
まず、童謡はほとんどの人が知っている曲ばかり。だから、ヘンに私や姉が自分の思いを込めすぎたりせず、楽曲を崩さないようにして歌っています。聴いてくださる方それぞれの「赤とんぼ」があり、「ふるさと」がある。だからこそ、聴く側の思いが塗り込められる「余白」をきちんとつくり、その人が思い出を重ね合わせるのを邪魔しないようにする。そこはこだわっています。そのため歌い方も実はひと工夫していて。姉は本来、一番美しく響く音程より下げて歌い、それに合わせて私はやや音を上げてアンサンブルを作り上げているんです。歌謡曲や持ち歌を歌うときは、こよなく由紀さおりの世界で歌っているのですが(笑い)。
喜びというより、年々その責任は大きく、重く、深くなっています。冒頭で、緩和ケアセンターで童謡を歌ったことを話しましたが、命の瀬戸際にいる患者さんと、その看護にあたっているご家族の前で、ごくごくふつうに歌うというのは実はすごいこと。本当にさまざまな思いが交錯するのですが、それらを一切受け入れつつ淡々と歌う。非常に難しいことです。でも、私たちの歌を聴いてくださった患者さんが車イスから立ち上がったとか、元気になったという話を聞かせていただくと、私たちも感激すると同時に、そう簡単には辞められないな、と。責任の重大さを感じています。
歌は私のアイデンティティー。先ほど童謡、歌謡曲の話はしましたが、アプローチのしかたが違うだけで、基本的に私にとってジャンルは関係ないんです。表現者として求められればシャウトだってするし(笑い)、何だって歌います。女優の仕事も歌と同じ感覚。表現者としてやれることは何でもやってみたい。そして、そんな私をいろんな角度から観て楽しんでもらえたら。そんなふうに思いますね。

一つはステージで着るドレス。ドレスの色目に合わせて舞台照明なども決めるので、相当ぜいたくにこだわります。ツアーで全国をまわるコンサート用のドレスの場合は、100回着て嫌にならないことが必須条件です。二つめには「音響」があります。自分専用のマイクを始め機材は年々グレードアップ。コンサートでは毎回11トンのトラックで運んでいるんですよ。
女優の樹木希林さん。共演したことはないのですが、彼女の仕事ぶりを拝見したり、以前撮影所などでお会いして話をしたときに、確固たる生き方をしておられる方と感じました。
篠田桃紅さんの随筆「墨いろ」。日本を代表する書家である彼女がこのエッセーの中で、「墨をするとき、墨が真っ黒になる一歩手前でやめることができるのが玄人である」といった意味のことを書いていらっしゃって、まさにそのとおりだな、と。私もコンサートの前にたくさんおけいこをする。自分の中におけいこで覚えたものに加えて自分の思いを塗りこむ作業をするわけです。でも、本番5分前には一度まっさらな状態にする。つまりすべてを忘れる。そんなふうに心をさます状態にして本番にのぞむことができることが本当の意味でのプロなのだと、この篠田さんの「墨いろ」を読んで気づかされました。
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