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ひとインタビュー限界を越えた時、力は伸びる それを知ると勝負に熱くなる 第六十四回 伊達公子さん

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「テニスはもういい」と思った

――今、改めて伊達さんにとってテニスとは何だと思いますか

自分が自分で居られる場所。自分を表現できる場所。基本的にスポーツは何でも好きなのですが、テニスは体を動かすことプラス、道具を操らなければならないし、相手がいるのでゲーム性もある。しかも、メンタルな部分も勝負にものすごく影響する。たぶん、6歳で始めたころからそういう感覚が好きで、だからどんどんハマっていったんだと思います。

――でも、引退のときにはまさかエキシビションに出場するなんて思わなかったそうですが

試合は大好きだったのですが、ツアーがあまり好きではなかった。どんな状況でも勝負にこだわらなくちゃいけない。若かったこともあり、それがつらく、また気持ちの整理もつかなくて、これ以上続けたらテニスを嫌いになってしまうかもしれないと思って引退しました。もちろん、あのタイミングでやめたことを今も後悔はしていません。ただ、あのとき「テニスはもういいや」と思っていたのが、時間の流れとともに徐々に変化していったんです、自然に。今は年々「私はつくづくテニスが好きなんだ、テニスと正面から向き合うことが好きなんだ」という思いが深まっていくような気がするほど。

――そう思うようになったのはなぜ

いろいろ理由はあると思うのですが、2000年にグラフが引退する際、東レPPOテニスの決勝戦の日に行った引退試合で、「日本で戦うなら公子」と指名してもらったのが大きいかもしれません。その言葉が背中を押してくれ、チャンスを受け入れようと素直に思えて出場しました。その後、02年にもエキシビションに出場したのですが、このときは現役を辞めて一つのことに無我夢中で没頭することがなくなっていたので、そういう時間を作りたくて、だったと思う。そんな機会を重ねる中で、テニスと向き合うのが楽しいと思えるようになっていった気がします。

引退してから成長したかも

――それにしても現役時代の張り詰めた表情から一転、今はとても朗らかで、やわらかな笑顔の人という印象です

いや、本性を隠していただけで。365日24時間ずっとあんな調子だったらさすがにこわい。でも、現役のころはとにかく勝つために何が必要かだけを考えていて、自分を追い込んでいた。同時に、要らないもの、嫌なものはすべて排除していました。個人競技なので、そうしたいと思えばできるんですよね。ですが、引退して私自身も20代から30代へという年齢や、環境の変化とともに多少は成長したんだと思います。

――ご自身、変わったなあと思うところは

黒と白しかないと思っていた私が、グレーもいいなあと思えるようになったこと。現役時代はグレーを自分に近づけなかった。そういう意味でずいぶん狭いものの考え方をしていたなあとは思う。でも、あのときの私はあれが精いっぱいだったと思うし、あれでよかったんだと思います。

――パートナーのミハエル・クルムさんの影響も大きいのでは

そうですね。マイケル(ミハエルの英語読み)も昨年、5年ぶりに国内最高峰のフォーミュラカーレースに再チャレンジ。結果は思うように出せなかったのですが、今後も挑戦したいという気持ちは持ち続けている。今回、エキシビション出場を決めたのも、実は自分に限界を作らず、チャレンジし続ける彼の姿に感化され、決意した部分も大きいですね。練習に専念できるのも彼の全面協力があってこそなんです。帰宅するとお風呂が沸いていたり、朝食の準備をしてくれたり。本当に感謝しています。

――2人とも、勝負の世界に身を置いています

だから、すぐに勝負にこだわる。2人でランニングなど、どんなスポーツをしていても常に真剣勝負です(笑い)。でも、それはたぶん、2人とも力を抜かず挑戦し、限界を越えたところでまた自身の力が伸びる面白さを知っているからでしょうね。だから、勝ち負けにこだわるというよりも、勝ち負けにこだわって真剣に闘っている瞬間が、2人とも好きなんだと思います。

(写真)伊達公子さん3つの質問
質問1
これまでの人生で最大の買い物(投資)は何ですか?

最近ドイツ製の「huelsta」というブランドのベッドを購入しました。アスリートがベストコンディションをキープするためには「良い睡眠」が必要。回復力もベッドで左右される気がします。そのために機能性、品質どれを取っても優れているブランドのベッドを購入しました。実際、体への負担が減ったような気がしてとても快適です。

質問2
こだわりがある、という生き方をしていると思う人を挙げてください

ニュースキャスターの安藤優子さん。自分というものをきちんと持っていて、一本筋が通っている生き方をされているなあと思います。ジャンルは違うのですが、女性として昔から尊敬しています。

質問3
人生に影響を与えた本は?

「マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった」(ジョン・ウッド著/ランダムハウス講談社刊)。ウッドさんが1999年にNPO「ルーム・トゥ・リード」を設立し、発展途上国の子どもたちのために活動をしていることは以前から知っていたのですが、本が出版されたので読んだところです。私もパートナーと「いつか途上国に学校を造りたい」という夢があるので、共感できるところもいっぱいあったし、すでに彼はそれを一つひとつ形にしているから素晴らしい。ものすごく自分の生き方を考えさせられる部分の多い1冊です。

ジョン・ウッド著
「マイクロソフトでは出会えなかった天職」
こちらから購入できます

アンケート 今回のインタビューについて皆様の「声」をお聞かせください。

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