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ひとインタビュー怠惰と闘いながら芝居に挑む ありがとうの一言で感動を 第六十五回 原田大二郎さん

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感動させる役者になりたい

経験を重ねるごとに芝居は上手になり、感心はされるようになる。でも、芝居は人を感動させなければ意味がない。原田大二郎さんはそう言い切る。「ありがとう」「こんにちは」。この一言だけで、お客さんを感動させる役者になりたい。今年はシェークスピアの「十二夜」に次いでチェーホフの「三人姉妹」と舞台が続く。「短期間でこの2作品はかなり無謀。でも、挑戦する価値があると思ったから」。よく通る、太い声で芝居を語り、鋭い視線で芝居を見続けている。
(取材・文/井上理江 写真/田中史彦)

――役者になると決めたのは大学時代だったそうですが

明治大学のESS(英語部)に入ったら、「東京5大学の英語劇コンテストがあるからオーディションを受けないか」と。最初は断ったのですが「落ちるのがこわいんだろう」と言われ、卑怯(ひきょう)者に思われたくなくて受けることに(笑い)。そのオーディションの課題は、一人アパートに帰ってきて電球をつけたら「ハハキトク」の電報が届いて、という演技をエチュードでやる、というものでした。僕はエチュードの意味も実はよくわからないまま、舞台に立って「ハハキトク」の電報を開く真似をした。そのとたん涙があふれて、とまらなくなった。自分でもわけがわからないんだけれど、妙に気持ちがいい。しかも、まわりの先輩たちも僕の芝居を見て拍手喝采で。

――それがきっかけで、英語劇に主演された

そう、ギリシャ悲劇の「メディア」という芝居。10月のコンテストに向けて5月後半から練習を始めたのですが、何しろメンバーはズブの素人ばかり。芝居なんて誰もわからない。ただただ、台本を読んで毎日練習していました。そんなある日、忘れもしない9月16日です、僕のところに芝居の神様が降りてきたんです。

芝居の神様が降りた瞬間

――というと

イアソンという役を演じていたのですが、自分の中に、自分と役柄が混在しているという感じ。まだ練習の段階で衣装は身につけていないのに、なぜか僕は鎧(よろい)姿、メディアは紫色のドレスを着ているように見える。それで背中のほうに、もう一人の自分がいて、いちいち、せりふの言い方を指示してくれるんです。言われるままに動いているとこれが気持ちいい。芝居が終わると先輩が駆け寄ってきて、握手を求めた。泣いてるんですよ。その時思ったんです。「ああ、芝居はこんなにも熱く人を感動させるものなんだ。一生かけて追求する価値のあるものだなあ」と。それから今にいたるまで一度も芝居を辞めたいと思ったことはないですね。

――神が降りてくるような瞬間を体験できるなんて、なかなかないです

究極の集中力の先に広がる、感動に満ちたフィールドです。スポーツ選手は結構あるんじゃないかな。そういう経験。たとえば王貞治監督が現役時代、ホームランを打つ打席が、僕にはわかった。テレビから圧倒的な集中力が伝わってきたから。若い俳優には時々起こります。ある瞬間から、声が安定し目つきが変わる。自分との対話をしているのです。「役と一緒に生きてるな」と思わせる瞬間。「のってる」って僕らは言ったりします。それも集中力のたまもの。人は集中した時にもう一つ先の境地に進みます。見ている人は、圧倒される。舞台上に実人生を見るのですから。

――では、その究極の集中力が、芝居をする上で目標になるわけですか

いや、目標じゃないね。それは通過点。そんな境地を追い続けてもロクなもんじゃない。追えば追うほど離れていく。要は集中すること。現実に僕は「メディア」で、先輩を感涙させた「9月16日」を追い求めすぎて、本番はダメだった(笑い)。ちなみに、メディア役を演じたのは現在の妻。彼女はあの時賞をとったんだよね。

――奥さんには猛烈にアタックしたとか

告白したのに「タイプじゃない」とあっさりフラれて。この女性を落とせないようでは、僕は役者になんかなれないと思い、2年かけてくどき落としました。

(写真)原田大二郎さんプロフィール

1944年横浜に生まれる。2歳の時、山口県の伯父と養子縁組。明治大学法学部を卒業後、劇団文学座に入座。70年に新藤兼人監督の映画「裸の十九才」で鮮烈デビュー。同作品で70年度映画製作者協会新人賞受賞。以来、そのおおらかな人柄と演技で多くのファンを魅了し続けている。代表作は映画「蒲田行進曲」「敦煌」「極道の妻たち」、ドラマ「Gメン75」ほか。テレビ・映画・舞台での活躍はもちろん、絵画展の開催や講演・文筆活動も盛ん。2001年より母校、明治大学の特別招聘(しょうへい)教授として朗読を指導。明治大学でシェークスピア講座を立ち上げ、その受講生を中心に、文化プロジェクトとしてシェークスピア劇を監修、学生に上演させるなど、活動の幅を広げている。

お知らせ
原田大二郎さんが劇団夜想会本公演「三人姉妹」に主演

郷愁あふれるロシア民謡でつづる、チェーホフ最高傑作の感動作。2004年の夜想会公演でも「こういう舞台が見たかった」「美しく切ない」「愛を求める人の熱情が圧巻」と好評だったこの作品が、今回は新キャストで実現。帝政ロシア末期という時代も国も超えて、登場人物一人ひとりの生き方、苦悩、幸せが現代の日本人の生き方にも通じるものがあり、深い感銘を受けるはず。多くの方々に見てほしい作品です。
作/A・チェーホフ
訳/小田島雄志、マイケル・フレイン
演出/野伏翔
プロデューサー/石村昌一
企画制作/劇団夜想会
出演/原田大二郎、石村とも子、大峯麻友、内山森彦、石山雄大、倉田秀人、山前麻緒、畠垣洋司、他
カルテット/明治大学グリークラブ

  • 日時/2008年4月3日(木)〜7日(月)
  • 場所/東京・新宿 紀伊國屋ホール
  • 入場料(全席指定・税込み)/
    前売り¥5000
    当日¥5500 高校・大学生¥3000(学生証持参) 小・中学生¥1000
    (学割チケットに関しては夜想会のみで受け付け)
  • 予約・問い合わせ/
    ローソンチケット(Lコード 37331) TEL0570-084-003(Lコード必要) TEL0570-000-407(オペレーター予約 10時〜20時)
    キノチケットカウンター 店頭販売のみ 10時〜18時 紀伊國屋書店本店5F
    ロビンフッド・アーチスツ TEL03-5494-6488
    夜想会 TEL03-3208-8051 Eメールyasokai-ishi1968@mbr.nifty.com
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