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ひとインタビュー社会に溶け込めない自分それが探究心の原動力に 第六十六回 茂木健一郎さん

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本業にこだわることはない

――「クオリア」という専門的な研究だけでなく、著書や講演会、テレビなど幅広く活躍されていますが

「クオリア」の研究は私自身の極めてコアな部分、わずか1000人程度のプロ同士で切磋琢磨(せっさたくま)し、追求していく世界。でもそれだけでなく、脳と意識の関係について、わかりやすい形にして一般の人びとに伝えていくことも、自分の使命だとここ数年感じているところです。それ以外にも声をかけていただいたことには一生懸命取り組みたい。迷った時にはまずやってみるようにしています。

――本業の研究に携わる時間がなくなっても

僕は本業という言い方は好きではないですね。便利なので脳科学者と名乗っていますが、脳科学のために生きているわけじゃない。「クオリア」はライフワークであり、一番大事な僕のテーマではある。でも、それはもしかして哲学と言ってもいいことかもしれない。カテゴリーや肩書にとらわれず、今の僕が世の中に差し出せる贈り物を、一番良い形で出していけたら。そういう気持ちですべてのことに誠心誠意取り組んでいるだけです。

――NHKテレビ「プロフェッショナル 仕事の流儀」の顔としても、広く知られるようになりました

キャスターを担当するまではテレビの特性をよく理解していなかったのですが、番組を通してテレビというメディアの性質や、自分自身の脳の使い方など、実に多くのことを学んでいます。僕にとっては最高の学校ですね。毎回収録に4時間かけてじっくり話をうかがっています。生身の人間の息吹が伝わる、すごくいい番組にかかわらせてもらい、感謝しています。

いずれにしても僕は、いろんな文化に通じることがとても大事だと思っているんです。僕の場合、大学では研究だけでなく院生の教育にも携わっている。ソニーでは企業文化に触れている。さらに、書籍や雑誌の執筆という面ではフリーランスという立場でもある。こうしたさまざまな文化に触れる人生を歩むことで、視野が広がり、多角的に客観的にものごとをとらえられるようになった。おのずといろんな方と出会う機会も広がり、そこで得られたものも大きい。つまり、多文化主義であることが生きていくうえではとても大事なんですよ。

溶け込めない自分が原動力

――常にエネルギッシュに突き進んでいますが、その原動力は

パッション。「情熱」という意味だけでなく、この言葉には「キリストの受難」という意味がある。僕の原動力はこの「難を受ける」という感覚に近いかもしれません。小さいころからずっと日本社会に溶け込めない自分を感じていて、「ここにいたら自分は一生幸せだ」と思ったこともない。どこにも溶け込めない。どこか一つの場所に落ち着いてしまうと、それでエネルギーがなくなってしまい、人生終わりみたいに思ってしまうと恐れているところがあるのかもしれない。だからつい、いろんなことに挑戦してしまうのかもしれないですね。

――世の中に溶け込みたいと思うことは

さすがに今はもうないですね。社会に溶け込めない人間でも、社会に対して作り出していける「何か」がある。そう今は信じられますから。

(写真)茂木健一郎さん3つの質問
質問1
これまでの人生で最大の買い物(投資)は何ですか?

学ぶこと。モノは時間とともに劣化してしまいますが、学びは、継続すれば劣化するどころかますます自分という存在を光らせてくれる。また学びへの投資は決して自分自身を裏切ることはありません。

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質問2
こだわりがある、という生き方をしていると思う人を挙げてください

小林秀雄。私の著書「脳と仮想」でも論じていますが、小林秀雄に強く引き込まれるようになったのは講演テープを聞いたのがきっかけです。それまでは「考へるヒント」「無常といふ事」といった作品のイメージが色濃く、隙のない端正な文章を書く人だとしか思っていなかったのですが、講演における小林秀雄の語り口はまさに古今亭志ん生そのもの。甲高い声でとても情熱的に話していました。語りの文体が非常にラフで、しかも何度も言及していたのは「心脳問題」。一気に魅了され、人生の師として尊敬するようになりました。なかなか追いつけない人を師として仰ぐことは、自分の倫理観を鍛えるためにも必要なことだと思っています。

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質問3
人生に影響を与えた本は?

ニーチェの「悲劇の誕生」。高校1年の時に読みました。ニーチェは本物の天才だと思います。周囲からは否定的にとられたものの、自身の文献学批判を貫いた勇気や意欲に感銘を受けたのだと思います。

アンケート 今回のインタビューについて皆様の「声」をお聞かせください。

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