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ひとインタビュー一つのものにみんなで向かうのが好き。子どもの頃の文化祭みたいに 第七十三回 森口瑤子さん

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仕事が好きでたまらない

人を優しく包み込むような、ふんわりとしたやわらかな笑顔が魅力の森口瑤子さん。数々の作品に出演し、古風な女性から、悪女、コミカルな役柄まで幅広くこなす。引き出しの多さを感じる実力派女優だ。映画「築地魚河岸三代目」では、築地の人びと行きつけの小料理屋の女将(おかみ)、千秋役。控えめな部分と快活で潔い面を併せ持つ千秋という女性を見事に演じている。

(取材・文/井上理江 写真/田中史彦)
――映画「築地魚河岸三代目」は、築地を舞台に繰り広げられる人情物語。森口さんの役は小料理屋の女将、千秋ですが、この役柄に対する最初の印象は

千秋も小料理屋も、映画の中で癒やしの存在として描かれている気がして、それをどう表現したらいいのかな、と台本を読んだときに考えました。とくに、千秋は優しくて思いやりがあって、男性にとってはまさに理想の女性。それだけにプレッシャーもありましたね。

――千秋はいかにも日本女性らしい、控えめな印象ですが

確かにそう。でも、「ただの控えめな女性」ではないんです(笑い)。たとえば、仲卸「魚辰」の大黒柱、英二さん(伊原剛志さん)が好きなのに身を引いて、青果会社の若だんな(鈴木一真さん)の所へ嫁ごうとするのですが、好きな人への「あきらめ」を決してマイナスでとらえていなくて、別の男性との結婚を新たな出発にして前に進んでいこうとします。だから実は、すごく芯が強くて自分の意志で生きている女性なんですよね。そういうところにものすごく共感できたし、大人だなあと思いました。

――とくに好きなシーンは

終盤の中華料理店でのシーンです。非常に人口密度の高いお店の中で、みんながかなり速いテンポで、とてもテンションの高い芝居を繰り広げたのですが……(笑い)。とにかく現場は互いの熱い感情、思いが重なりまくって、うねりのようになってすごい状況でした。撮影時間はむしろ短いほうだったのですが、終わった瞬間、へとへとになるほど力尽きてしまった。

築地の魅力を再発見

――では、森口さんから見た、この映画の魅力は

旬ちゃん(大沢たかおさん)も英二さんも絶対、築地にいそうでしょ。登場人物が本当にリアルで自然に描かれているし、実際の築地に近い雰囲気や臨場感が丁寧に映像で再現されています。だから、築地ならではの活気、エネルギーをそのまま感じ取ってもらえると思います。一人ひとりの個性がとても強烈で、それぞれに人間ドラマがあるので、どの登場人物に感情移入してもらっても楽しめると思います。

――そういえば、森口さんは東京出身。築地にはどんなイメージが

遠くて近い場所でした。実は撮影前の取材で初めて場内へ入りました。思っていた以上にエネルギーがあって、独特の優しさを感じました。場内では、ぶっきらぼうな感じで「ちょっとネエチャン、邪魔だよ」なんて言われたこともありました。でも、その言葉の裏側に独特の優しさを秘めている。私のような部外者に対しても疎外感を持たせないというか。そんなお客さんに対する独特の距離感が気持ちよかったですね。

――ところで、女優になると決めたのは10歳のときだそうですが

映画「ウエスト・サイド・ストーリー」を観(み)て、ジョージ・チャキリスにひと目ぼれしてしまって。「世の中にこんなステキな男性がいるんだ!」とそれから毎日、新聞のラジオ・テレビ欄を見てジョージ・チャキリスが出演している番組がないかチェックしていました。もちろん、ハリウッドの人が日本の番組に出るはずもないのに、10歳だからまだわからなくてね(笑い)。で、どうしたらジョージ・チャキリスに会えるのか考えた末、たどりついたのが「そうだ、同じ仕事に就けばいいんだ」と。

――とにかく会いたかった

そうなんです。ちょうどそのころ学芸会で「村人A」という役を演じたんですが、それがすごく楽しくて。そんな二つのきっかけが偶然にも重なって、いつしか「女優になる」が私の目標になっていました。

――デビューは17歳。ミス松竹に選ばれたのがきっかけです

両親からなかなか許してもらえなかったのですが、17歳のとき、新聞に「ミス松竹」の募集告知があって、父が映画会社が主催のオーデイションなら安心だということで、ようやく受けさせてくれたんです。

――実際に入った芸能界はどうだったのでしょう

「女優イコール華やか」とイメージしていたのですが、実際は映画の世界って地味で職人の世界。厳しい大人の社会に飛び込んでしまい、とにかく最初は恐くてしかたなかった。戸惑うことばかりでした。

(写真)森口瑤子さんプロフィール

1966年東京都生まれ。共立女子短期大学文学部卒業。84年に映画「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」でデビュー。以後、TVドラマや映画、舞台を中心に幅広く活躍。主な出演作に「やまとなでしこ」(2000年/CX)、「祖国」(05年/WOWOW)、「MBO」(07年/WOWOW)、「スワンの馬鹿!〜こづかい3万円の恋〜」(KTV)などがあり、「新日曜美術館」(NHK教育)では司会も務めた。01年、主演映画「Unloved」が第54回カンヌ国際映画祭でエキュメニック賞、金のレール賞をダブル受賞。主演ドラマシリーズ「温泉(秘)大作戦」(ABC)はPart6が今年8月にオンエア予定。6月7日公開の映画「築地魚河岸三代目」(松竹)に千秋役で出演。

お知らせ

思いきり笑える、思いきりキュンとくる。優しさと笑いに満ちた、心温まる感動作。
映画「築地魚河岸三代目」、2008年6月7日公開

商社勤務のエリートサラリーマン赤木旬太郎(大沢たかお)は、ひょんなことから恋人・明日香(田中麗奈)の実家である築地魚河岸の仲卸店「魚辰」を手伝うことに。長年培われたしきたりの中で悪戦苦闘する旬太郎。しかし、そこには本音で人と向き合い、助け合う本当の優しさ、温かな心のつながりがあった……。

中央卸売市場「築地市場」を舞台にした、小学館「ビッグコミック」にて大好評連載中のロングセラーコミックがついに映画化! 活気があり、うそもごまかしもきかない築地で真剣勝負しながら成長していく旬太郎と、彼を見守るまっすぐで、どこか懐かしい人びとの温かな交流を描くハートフルな物語です。

主人公赤木旬太郎を演じる大沢たかおさん他、田中麗奈さん、伊原剛志さん、柄本明さん、伊東四朗さんなど、個性あふれる実力派キャストが共演。森口さんは、「魚辰」スタッフ行きつけの小料理屋「千秋」を営む女性、千秋を好演しています。

  • 監督/松原信吾
  • 原作/はしもとみつお・鍋島雅治(小学館「ビッグコミック」連載)
  • 製作/「築地魚河岸三代目」製作委員会
  • 制作・配給/松竹株式会社
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