【このインタビューは2008年07月25日に掲載されたものです。】
天性の明るさと裏表のない性格で誰からも愛されている「デーブ」こと大久保博元さん。現役引退以降、野球解説者、プロゴルファーなどとして活躍してきたが、今年、埼玉西武ライオンズの打撃コーチとなって13年ぶりにグラウンドへ戻ってきた。今夏は長男も甲子園を目指し熱い闘いを繰り広げた。快進撃を続けるチームのこと、そして息子への思いなどを語ってもらった。
(取材・文/井上理江 写真/田中史彦)
監督に返事するのに2週間以上かかりました。ためらったのは、コーチをやるとしたら、まず2軍で3年はやらなきゃダメだという持論があったから。ゴルフならコーチ資格があるけれど、野球にはそれがない。コーチングも現場経験で勉強していくしかないわけです。それと、ファンに申し訳ない気持ちと、僕の会社、デーブカンパニーのこともあった。タレントをやめたら社員を路頭に迷わせるのではないかと。まわりの方々のお陰で、その心配は解消しましたが。
渡辺監督の思いです。監督は「かつての常勝西武に戻したい」「負けた時の責任はすべて自分が取る」と言いました。その言葉を聞き、一緒に現場に立って責任を一緒に取ろう、それが監督を支えることになると思い、決意しました。 もちろん、「デーブはやっぱりダメだよ」と烙印(らくいん)を押されてしまったら、次はもう野球解説もできなくなるだろうし、人生の終わりかもしれない。そういうリスクを感じたのも事実。でも、監督とはもう24年来の付き合いで、さんざん世話になった。だから一宿一飯の恩義です。監督は僕に「負けても選手に一切プレッシャーを与えないようにしてほしい」「命令ではなく、選手と対話する野球がしたい」とも。そういう監督の考えが好きだからやらせてもらうことにしました。
情報と方向性を出せば、選手は動く。だからまず、相手投手やキャッチャーのクセ、状況などの情報を与える。そのうえで、どういう戦略でいくか、どの選手を使うかという方向性をしっかり選手に伝えるわけです。 あとは「いくら負けてもいい、責任は監督が取ってくれるんだから」と。負けを気にして冷静さを失ったり、失敗への恐怖心を募らせたりすることのほうが僕は嫌なので、それはしてくれるな、というのも伝えます。
何よりもまず、選手との信頼関係をつくることが大切だと思ったから、キャンプ中もよく食事に行ったし、6月の6連敗のあとには一緒にゴルフにも行きました。かつてのプロ野球界には、選手とコーチが飲みに行ってはいけないという暗黙の決まりごとがあったのですが、このタブーを破ってくれたのが巨人時代の中畑清さん。何かあるたびに食事やカラオケによく連れていってくれました。同じことをしているだけですね。特定の選手を連れていって「えこひいき」と言われたくないなら全員連れていけばいいわけだし。でも、こんなふうに選手と付き合えるのも、ライオンズと渡辺監督がそれを許してくれているからです。
野球の話はしないですね。異性の口説き方とか(笑い)。「片岡よ、この顔でオレはけっこうモテるんだよ。お前は顔だけだろう。一部には受けるかもしれないけれどオレは万人受けするんだぞ」なんてね。 もちろん、飲み会だけでなくミーティングや練習でも選手とよく話します。その時は真剣に野球の話も。ただ、「なんで打たなかったんだ」と責めない。「どうして打てなかったと思う?」と質問するかたちで聞きます。これは13年間野球解説者を経験し、多くの選手を取材した中で得た知恵。どう聞いたら答えやすいかがわかっているせいか、選手もいろいろ話してくれます。

1967年茨城県生まれ。本名、大久保博元。小学5年の時リトルリーグ入り。水戸商業高校時代は3年間で通算52本のホームランを放ち、甲子園出場はなかったものの84年ドラフト1位で西武ライオンズに入団。翌年サンノゼ・ビーチに留学。92年シーズン途中で西武から読売巨人軍へ移籍。捕手として1軍で活躍し、6月には月間MVPに選ばれる。94年には巨人日本一に貢献し、95年に28歳で現役引退。その後、持ち前の明るいキャラクターで野球解説者のほか、マルチタレントとして幅広く活躍。各地での講演やトークショー、イベントなどにも出演する。2001年よりプロゴルファーとしても活動していたが、昨年10月、渡辺久信監督の強い要望で埼玉西武ライオンズの打撃コーチに就任。
若手が活躍する新生・埼玉西武ライオンズに注目!
これまでにパシフィックリーグ優勝15回、プレーオフ優勝2回(1982年前後期制の優勝含む)、日本チャンピオン9回という輝かしい成績をおさめてきた埼玉西武ライオンズ。今年1月1日から、チーム名を埼玉西武ライオンズとして地域密着を目指し、新たなスタートを切っている。また、今年は球団創設30周年という記念の年。渡辺久信監督のもと、16回目のリーグ優勝、10回目の日本チャンピオンを目指し、チーム一丸となって頑張っている。
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