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ひとインタビュー映画俳優と呼ばれたい舞台人 今の道楽は子どもの成長 第八十二回 笹野高史さん

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質感と匂いを演じたい

「名前を知られるようになったのは本当にごく最近。60歳過ぎての、ぽっと出なんです」と照れ笑いし、謙遜(けんそん)する。しかし芸歴は長く、映画、ドラマ、舞台への出演数も枚挙にいとまがない。事実、今年公開の映画だけでもすでに10本以上、ドラマも8本以上に出演。どんなわずかなシーンでも圧倒的存在感を放つ。映画「おくりびと」でも彼ならではの滋味あふれる演技で、作品を引き立てる。今、日本で最も忙しい名脇役である。
(取材・文/井上理江 写真/田中史彦)

――映画「おくりびと」は、プロの納棺師の物語です

これまでも、お葬式を題材にした映画はあったのですが、納棺師を主人公にして死と正面から向きあった作品はなかった。よくぞここまで思い切って踏み込んだなあ、と正直驚いたのと同時に、そういう監督、脚本の心意気に惹(ひ)かれました。出演させていただき、本当にうれしかったです。

――笹野さんの役柄は、銭湯の常連客で、実は……

その先を言っちゃうと、ご覧になっていない方に悪いのでここではちょっと(笑い)。簡単に言えば、世間から横目で見られてしまうような仕事の役です。ただ、僕が演じるような人たちだって実在するわけです。その本物の人たちから「違う」と言われたら失敗だと思うし、言わせたくない。それはどんな役のときでも常に意識しています。

――役づくりはどんなふうに

僕は、質感とか匂(にお)いみたいなものを演じたい。それが理想で、うまい、下手というのはどちらかといえば二の次。たとえば、オカマの人たちの清潔感とか、首すじの質感って独特でしょ。何となく違う。そういうのが芝居でやれたら面白いなって思う。昔、よく山田洋次監督に「風景になれる役者になりなさい」と言われました。渥美清さんは主役もできるけれど、すっと風景にもなれる。だから優れていたって。笠智衆さんもぱっと風景に溶け込んだ瞬間、風が吹いてくるような感じがあるでしょ。僕もそういう俳優になれたらと思うんだけどさ。「おくりびと」でも、どんな家庭に育ったのかと考え、その人の生き様、人生から醸し出される質感、匂いをちゃんと演じようと心がけました。

本物と思われたら「しめしめ」

――わずかなシーンの出演でも、すんなり溶け込んでいるのが笹野さんのすごさ

以前、和田誠監督の「麻雀放浪記」にバーテンダー役で出させてもらったときのこと。試写会で「あんた、俳優なんだ。てっきり監督行きつけの店のバーテンだと思ったよ」と声かけられましてね。「しめしめ!」って思いました(笑い)。やはり本物と思われるのが俳優としては勲章です。ただ、「武士の一分」で賞をいただいたおかげで認知度も上がって、笹野っていう役者が演じていることが世間にわかるようになってしまった。それがかえって障害になるのではないかと。

――無名のほうがやりやすかった

友人の柄本明はCMで、佐藤B作は「欽ちゃんバンド」で若いときにガッと売れた。それを目の当たりにしていたから、僕はどうなんだろう?そういうチャンスは訪れるのかと思っていたので、売れたことは本当にうれしいし、ありがたい。でも、なにせこの年齢でぽっと出なので、「名前も顔も覚えてもらえる」という感覚にまだ慣れない。困ったものです。

(写真)笹野高史さんプロフィール

1948年兵庫県淡路島生まれ。日本大学芸術学部映画学科在学中、串田和美の劇団「自由劇場」を知り、裏方として入る。その後、1年半の船乗り生活を経て再び劇団へ。今度は俳優として入り、舞台「上海バンスキング」のトランペット吹き・バクマツ役で注目される。81年同劇団を退団。以後、座友として舞台に立つかたわら、映画、テレビで個性派俳優として活躍。2006年映画「武士の一分」で日本アカデミー賞助演男優賞など数多くの映画賞を受賞。主な映画作品としては「男はつらいよ」シリーズ、「釣りバカ日誌」シリーズ、「美味しんぼ」「学校」「パッチギ!」「寝ずの番」「母べえ」「犬と私の10の約束」など。最新作は08年9月13日公開の「おくりびと」、同20日公開のマキノ雅彦監督作「次郎長三国志」。舞台でも「ミス・サイゴン」「レ・ミゼラブル」ほか、コクーン歌舞伎「三人吉三」「夏祭浪花鑑」に出演。プライベートでは、42歳で結婚、4人の息子の父親である。

お知らせ

ユーモアと感動が融和した異色作、納棺師の物語
映画「おくりびと」9月13日(土)より《旅立ちの》ロードショー

楽団の解散でチェロ奏者の道をあきらめ、故郷・山形へ戻った主人公・大悟(本木雅弘)。面接に訪れたNKエージェント社長・佐々木(山崎努)から告げられた仕事は、なんと納棺師。遺体を棺に納める仕事だった。戸惑いながらも妻の美香(広末涼子)には、冠婚葬祭関係と偽り、納棺師の見習いとして働き出す大悟。そこにはさまざまな境遇のお別れが待っていた……。

人は誰でもいつかおくりびと、おくられびと。すべての人に普遍的な愛を届けてくれる感動の映画です。笹野さんも要とも言える役で出演。

  • 公開/2008年9月13日(土)全国ロードショー
  • 監督/滝田洋二郎 脚本/小山薫堂 音楽/久石譲
  • 出演/本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子、笹野高史
  • 配給/松竹
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