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意外性が楽しい、世代の違う人々との共演

低く渋い語り口に、静かに澄んだ目。ややこわもてだが、その表情の片隅に大人の優しさと関西の「おっちゃん」ぽいちゃめっ気、おかしみをにじませる。

数多くの映画・ドラマでひっぱりだこの俳優・國村隼さん。以前は冷酷な役も多かったが、最近はサントリーオールドのテレビCMや、映画「イエスタデイズ」に象徴されるように、理想の父を演じる機会も増えてきた。
(取材・文/井上理江 写真/小山昭人)

――映画「イエスタデイズ」では父と息子の関係が軸の一つです

血のつながりがある関係にもかかわらず、息子は父に対して激しい反抗心を持っていて、コミュニケーションがとれない状況にある。そんな中、父の方は自分が余命いくばくもないという状況になり、心残りがあった。一つはそんな息子との関係、もう一つは過去に別れた女性とその子どものこと。この二つを放っては死ねないという想(おも)いがあって、息子に「昔の恋人の消息を探ってほしい」などという、とても無茶な頼みごとをするわけです。

――どこの家庭でも、親と子のコミュニケーションは難しい課題

そう。だから、僕の世代の方は自分のこととして受けとめられるかもしれないし、身につまされるかもしれない。ただ、この映画全体はファンタジックで、それでいてちょっとほろ苦く、ノスタルジックに仕上がっています。そんな雰囲気を素直に味わっていただけたらと思いますね。

――この映画は監督を始め、主要スタッフ、キャストが30歳前後の若手

32年前の過去に導かれた場面でスニーカーが出てくるんですが、当時はスニーカーなんて言いませんでした。そこまでは彼らも調べて把握しているわけです。で、台本に書いてあったのが「ズック」。さすがにあの時代でもすでに「ズック」とは言わなかった。あの頃言われ出した言葉で言えば「バッシュー」。同世代のスタッフは「そうだ、そうだ」と懐かしそうに笑っていました。そういうちょっとしたジェネレーションギャップも楽しかったです。また、映像のトーンの決め方やビジュアルも彼ら独自の美的センスが光っていて、それが新鮮で刺激的でしたね。

――この映画をはじめ、最近は父親役が多いです。ご自身のイメージする理想の父親とは

父親っていうのは「役割」として存在しているもののような気がします。母と子というのは「肉」というか、有機的に強くつながっている感じがするのですが、父親はあらかじめちょっとはずれた位置にあって、機能として求められるというか。ライオンがそうでしょう。基本的には雌社会で、いざというときに雄がファミリーを守る。あれが男として父親としての理想のあり方のような。距離がある分、子どもの見方も母親とは違う。母親は子どものすぐ横で寄り添って見ているけれど、父親は俯瞰(ふかん)の目線で見守っている、そんな感じかな。

映画は外へ広がる「窓」

――もともとエンジニアになりたかったそうですね

クルマのエンジンが大好きで、設計をやりたいと思い、高専に通っていたのですが、途中でドロップアウト。その後、劇団に入って舞台に出たり裏方も手伝ったりしました。結構楽しかったものだから、ついつい続けてしまって、気づいたら現在に至ってしまったという感じです。

――本気で映画をやりたいと思ったターニングポイントは

あえて一つ挙げるなら映画「ブラック・レイン」に出演したこと。新聞記事に「阿倍野警察が取り壊しになる。その前にリドリー・スコット監督がそこでハリウッド映画を撮る」と書いてあったのを読んで、オーディションを受けに行きました。

――この映画出演で、何が変わったのでしょう

映画というメディアに対する認識です。僕が最初に出演した映画は、井筒和幸監督の「ガキ帝国」です。約1千万円の予算で、ほとんど無許可での撮影ですから、世間から逃げまわり謝り倒しながら撮ったような映画でした。それから8年後に出演した2作目が「ブラック・レイン」。こちらの予算は60億円。ものすごい期間をかけて、世界中駆けまわって製作された映画なわけです。でも、「ガキ帝国」もハリウッド映画もお客さんにとってはどちらも同じ、おもしろい映画なんですよ。「予算が少ない映画だからつまらない」とは絶対ならないわけです。

――システムや予算が違っても、映画は映画なのだ、と

それに気づき、映画ってなんておもしろいモンなんだろうと思うようになりました。映画というメディアそのものが常に外に向いている窓のような気がしたんです。たとえば、日本人向けにと思って作った映画でも、フィルムと上映する場所があれば世界中どこででも観(み)てもらえるわけでしょ。どんどん外へ広がっていける可能性に満ちたメディアなんです、映画って。素直にそこがステキやなあと思えたんですよね。

(写真)國村隼さんプロフィール

1955年大阪府生まれ。81年「ガキ帝国」で映画デビュー以来、出演した映画は100本を超える。97年主演の「萌の朱雀」では、日本人初のカンヌ映画祭カメラドール賞受賞。その確かな演技力と圧倒的な存在感は世界的にも評価が高く、リドリー・スコット監督「ブラック・レイン」(89年)、ジョン・ウー監督「ハード・ボイルド〜新・男たちの挽歌」(92年)、クエンティン・タランティーノ監督「KILL BILL vol.1」(2003年)など、海外の名だたる監督の作品にも多数出演。08年出演作は「銀色のシーズン」「SILK/シルク」「チーム・バチスタの栄光」「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」「神様のパズル」「パコと魔法の絵本」「宮城野」「K‐20 怪人二十面相・伝」(12月公開)など。また、数々のテレビドラマにも出演、NHK「連続テレビ小説『芋たこなんきん』」(06〜07年)ではカモカのおっちゃんを好演、TBS連続ドラマ「あんどーなつ」(08年)では主演を務める。そのほか舞台でも活躍。

お知らせ

映画「イエスタデイズ」
2008年11月1日(土)ロードショー

余命わずかな父に頼まれ、32年前の父の恋人・真山澪を探し始める聡史。思いがけず出会ったのは、70年代を生きる若き日の父と恋人澪だった。驚きを隠しながら彼らと友だちになった聡史は封印されていた父の想(おも)いを知る。そして澪に対する新たな感情も芽生え始めていたのであった――。

斬新な発想と透明感あふれる文体で人気の作家・本多孝好のベストセラー短編集「FINE DAYS」の1編「イエスタデイズ」がついに映画化されました。息子と不器用なコミュニケーションしか取れない父を國村隼さんが好演。息子・聡史はここ数年活躍が目覚ましい塚本高史さん。映像も非常に美しく、ほんわか温かな気持ちになれる作品です。

  • 監督/窪田崇
  • 原作/本多孝好(「FINE DAYS」収録・祥伝社刊)
  • 脚本/清水友佳子
  • 出演/塚本高史 國村隼 和田聰宏 原田夏希 高橋惠子 風吹ジュンほか
  • 配給/エスピーオー
    http://www.yesterdays-movie.com/
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