そうです。私の中に選手と監督の部分があって、監督の私が「自分らしくない走りで妥協していいのか、それでは自分を曲げることになるんじゃないか」と言うわけです。それと、練習でも気持ちを持ち上げる瞬間があるのですが、それも難しくなってきた。高橋尚子らしく走って、それで順位が低いのはしかたない。でも、心身ともに私が求める高橋尚子の状態で走れないならもうやめようと。
心底さっぱりしているというのが正直なところ。ただ、解説の仕事で他の選手にインタビューしたりするのですが、そこで初めて私って相当練習していたんだなあって知りました。本番前、私は40キロを12、3本走るのが当たり前だったのですが、よく走っている選手で4本くらいなんです。もっと自分に甘くてもよかったのかなあ(笑い)。
多くの人に、参加するスポーツとして陸上を楽しんでもらうための啓発活動、子どもたちへの指導、それと以前からエコ活動に関心があり、「スマイル アフリカ プロジェクト」へも参加しています。この三つを柱にしつつ、「走る楽しさ」をより多くの人に伝えられるよう、スポーツ解説者などの仕事にも精力的に取り組んでいきたいと思っています。
私はやはり走るのが好き。だからこそ、引退しても「走る」ことにかかわりたいし、「走る」を続けていきたい。こんなふうに頑張れるのも仲間や声援してくださる方々のお陰。多くの方に支えてもらっていることで、私は突き動かされている気がします。
悪いことも、見方によってはそんなに悪いことでもないって思っているところがあるんです。たとえば、こちらから見ると断崖(だんがい)絶壁でも、反対側から見るとなだらかな坂だったりするんじゃないかと。そんなふうに見方を変えると、案外何でもいい方向へ転がってくれると思っているのが、いいのかもしれないですね。

愛犬ラッピー。落ち込むことがあっても、ラッピーと過ごすことで気持ちを切り替えられる。癒やしてもらっています。
ロッテの重光武雄会長と、アシックスの故・鬼塚喜八郎会長。重光会長は、初めてお会いしたとき既に80歳を超えていたのに、5年後の夢をまるで少年のように目を輝かせて話してくれました。夢だけでなく探究心も旺盛。「ああ、こんな80歳になりたいなあ」と思いました。鬼塚会長は底抜けに明るく元気もあって、そこにいらっしゃるだけで場が華やぐ方でした。人を引きつける才能があり、ステキでした。
小学生のときに読んだディケンズの「クリスマス・キャロル」。すごく感動したのをおぼえています。それからいろいろ本を読むようになり、赤川次郎から始まって、アガサ・クリスティーへ。今も推理小説が大好きで、宮部みゆきさん、東野圭吾さんの作品はほとんど読んでいます。
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