ふんわりとした柔らかさがあり、自然体。温かな雰囲気が周囲を和ませる。5歳で女優デビューし、7歳のときドラマ「北の国から」の蛍役で一躍有名になった中嶋朋子さん。現在も映画、舞台を中心に活躍し、実力派として高い評価を得ている。そんな中嶋さんがこの秋出演するのが舞台「ヘンリー六世」。「とてつもない大海原に小さなボートでこぎ出していく気分」と不安を感じながらも、この大作への挑戦を心底楽しみにしている。
(取材・文/井上理江 写真/小山昭人)
最初、膨大なセリフのシェークスピア劇を三部一挙に上演するなんて、あまりに無謀すぎると思い、公演理由を演出の鵜山仁さんに聞きに伺ったんです。そうしたら一言「わからない」と。でも、それがよかった。たぶんいろいろ理由を並べられたら、私は尻込みしてしまったかもしれない。「わからない」って言いながら、この壮大なスケールの公演に挑戦しようとしている。その感覚って大切だなと思い、「じゃあ、私も!」とお受けしました(笑い)。ただ、今思うと安易でした。はたして私にできるのか。毎日夢を見ています。セリフがまだ入っていないとかね。こんなことはめったにないんです。
難しい古典にもかかわらず、なぜこんなにもシェークスピアが多くの人に愛されているのか知りたかったから。「シェークスピアには何があるんだろう」とずっと思っていました。ちょうど今年6月、新国立劇場で「夏の夜の夢」を、イギリスで「冬物語」を観(み)ることができたんです。その際、シェークスピア劇には、いわゆる古典だからというのではない、「凄(すご)み」みたいなものが横たわっている気がしました。普遍的なものや様式的なものへのメタファーなど、さまざまなものを内包しつつ、一方でそれらを自らのかかとでけり上げてしまうようなところもあって。演じる者の人間性が如実に出てしまう気もしました。
芝居や作品に対する姿勢がものすごく露(あらわ)にされる。だから、中途半端に臨むととても恥ずかしい思いをすることになりそう。残酷なんだと思う、シェークスピアって。とにかく一筋縄ではいかない。気持ちだけでもテクニックだけでもダメで、役者が楽しむことができなければきっとアウトのような気もします。いずれにしても、今までとは違うアプローチをし、薄っぺらにならないようにしたいです。この「ヘンリー六世」の時代のうねりから発せられるエネルギーを体に入れ込んで、この渦の中で生きるということを全うしたいです。
ハードルがものすごく高いので正直怖いのですが、それ以上に自分でも信じられないくらい楽しみなんです。この壮大なスケールのお芝居の中に勢いよく飛び込もうと思います。ひるまず、やり遂げたいですね。

1971年東京都生まれ。「劇団ひまわり」に入り、5歳でデビュー。国民的テレビドラマと言われた「北の国から」で、22年間の長きにわたり、主人公の娘役・蛍を務める。90年には映画「つぐみ」に出演し、ブルーリボン賞助演女優賞など数多くの賞を受賞。98年に結婚し、長男を出産。以後も、映画、舞台などで活躍、実力派として高い評価を得る。その一方、朗読、執筆、講演でも独特の感性を発揮している。主な出演作は映画「つぐみ」「ふたり」、NHK大河ドラマ「篤姫」ほか、舞台では「幻に心もそぞろ 狂おしのわれら将門」(演出/蜷川幸雄)、「ガラスの動物園」(演出/イリーナ・ブルック)、「CLEANSKINS/きれいな肌」(演出/栗山民也)、「ネイキッド」(演出/デビット・ルヴォー)など多数。今秋、舞台「ヘンリー六世」(演出/鵜山仁、会場/新国立劇場)に出演。また、エコロジストとしての柔らかなライフスタイルも注目を集め、そのしなやかな自然観が共感を呼んでいる。
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