私の人生そのもの。あの22年間を取ってしまったら、私の人生の大半を失うことになります。仕事の基本を学んだ部分も大きいのですが、幼い頃から人としてすごく大切な部分をすべて、あのドラマの撮影現場で学ばせてもらった気がします。
私とは全然タイプが違う。でも、私の中から出ているものなので不思議でした。すごくやっかいな姉妹がいる感じ(笑い)。すごく優等生な姉であり、すごくかわいい妹であり。誰が見ても私より秀でているのに比べられる。しかも「でも、同時にそれはあなたですよね」と言われるジレンマ、葛藤(かっとう)もありました。
蛍も私の一つだとどこかで思えるようになった。受容してみたら、なんだ自分とそっくりの部分もあるじゃないかと。私の嫌な部分も蛍にあるし、彼女のお陰で私が育った部分もあると気づけた。とはいえ、そう思えるようになったのは19、20歳の頃。その間ずっとやめたかったのですが、やめられないですよね(笑い)。葛藤を抱えていても次のロケが始まってしまうので。
あの職人気質の大人たちの中に幼い頃から投じられたことが、一番の財産です。過酷な撮影だったのですが、決して子供をあやすような扱い方はせず、あくまでプロとして、一緒に頑張っている同志として認めてくれていたので、頑張ることができた。何より、どんな小さなことにも妥協せずに、子供みたいにけんかをする大人たちの姿は、とてもエキサイティングでした。
そうです。倉本聰先生は父親のようにというのではなく、プロとして厳しかったのですが、愛情も注いでくださった。最初はこと細かく観察されている状況がたまらなく嫌でした(笑い)。でも、私たちをおもしろがって見てくれていたのはうれしかった。話してくれることもワクワクすることばかり。たとえば、「蛍、美学っていうのはね」と言うので私は「えっ、美学って学問があるんですか?」なんてびっくりしたり。そんな日々が楽しかったです。
邦さんこそ一番身近な存在なのに、絶対私たちを子供扱いしません。ドラマの中で純君に敬語で話すように、ふだんも敬語でした。もちろんたくさん遊んでもらったりもしましたが。忘れられないのは、ちょうど16、17歳の頃のこと。「今の君にぴったりだと思います」と、邦さんが中原中也の詩を台本の端に走り書きして、そこを破ってプレゼントしてくれたんです。思春期ど真ん中で「こんなに頑張っているのに誰も何も言ってくれない」とひがんでいた時期だったので、邦さんが見ていてくれたんだとわかり、心が熱くなりました。
「84夏」の中にラーメン屋さんのシーンがあります。お兄ちゃん(純)がお父さんと蛍に自宅の丸太小屋の火事の原因を告白していて、目の前のラーメンに手をつけていないのに店員が片付けようとする。そこでお父さんが「子供がまだ食ってる途中でしょうが」と怒り、「お兄ちゃん食べよ」って私が言うんです。今でもはっきり覚えているんですが、人に言われてやるのではないお芝居が初めてできた瞬間でした。本当にお兄ちゃんがいとおしくてしかたなかった。同時に、そういう感情を呼び起こすお芝居ってすごいなあ、と子供心に思いました。あの感覚は今でも忘れられないですね。

壮大なるスケールの人間ドラマ!
新国立劇場にて「ヘンリー六世」三部作堂々の一挙上演
第一部 百年戦争
第二部 敗北と混乱
第三部 薔薇戦争
2009年10月27日(火)〜11月23日(月・祝)
「ヘンリー六世」は、シェークスピアの作品で唯一、三部にわたる壮大な歴史劇。この大ヒットでシェークスピアは一躍人気作家となった。15世紀イギリス史上名高い百年戦争と薔薇(ばら)戦争までの英仏を舞台に、生後わずか9カ月で王座につき、生涯を通して有力諸侯や王妃に翻弄(ほんろう)されたヘンリー六世と、その周りで権力を争う人間たちのドラマがダイナミックに展開する。200人を超える役が登場するこの大作に、今回は日本演劇界の前線を担う強力なキャスト総勢38人が結集し、三部一挙に上演。日替わりで各部を上演するほか、週末には三部作の通し上演も行われる。鵜山仁芸術監督が長年温めてきた大プロジェクトがこの秋いよいよ始動。新国立劇場ならではの魅力あふれる公演だ。
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