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作曲家とピアニスト、両方で一人前

ピアノの音は木の響き。そこに惹(ひ)かれるという。ベーゼンドルファーを愛用しているのも「木の成分が最も強いと感じられるので。あくまでも僕の主観なのですが」。大胆にして繊細。美しく、それでいてどこかもの哀(がな)しさを帯びた旋律は、聴く者の深い所に響く。「パリは燃えているか」「黄昏のワルツ」で知られる作曲家兼ピアニストの加古隆さん。12回目を迎えるコンサート「ライブ イマージュ」でもすっかりおなじみの顔だ。
(取材・文/井上理江 写真/小山昭人)

――映像音楽を集めたアルバム「イマージュ」とリンクしたツアーコンサート「ライブ イマージュ」。加古さんは初回からの参加です

豪華アーティストたちが、限られた時間内で自身のベストを出し尽くそうとして結構「決め球」を投げてくるので(笑)、本当にそれぞれの個性輝くステージが楽しめます。それでいて、ラストには「ライブ イマージュ」ならではの一体感が生まれる。あの独特の高揚感が何ともいいんです。

確か5、6回目のことです。毎年開催とはいえ、1年のブランクがあるので、だいたい初日の演奏にはやや硬さがあるものです。それも新鮮でいいのですが、その年の初日、最後にアンコール曲をみんなで演奏し始めた途端、いきなり全体のボルテージがガーッと上がったんです。一気にみんなで宙に浮かび上がっていくような演奏でした。千秋楽近くならわかるのですが、初日ステージでここまでのテンションになるのは初めてだったので、なんかもうすごいなと。その時の感覚はいまだに忘れられません。

――今年、加古さんのステージはどんなふうに

10回目まではソロアーティストで、昨年は加古隆クァルテットで参加しましたが、今年もクァルテットで出演します。僕の「ライブ イマージュ」での定番の一つ、「映像の世紀」のテーマ曲「パリは燃えているか」を組曲にしてみなさんに聴いていただこうと思っています。

――加古さんご自身は今回で「ライブ イマージュ」を卒業と伺いました。ご自身にとってどんな場でしたか

まさに出会いの場でした。他のアーティストの方々のお陰で、実に様々なお客さんに僕の音楽を聴いてもらうことができました。音楽仲間との出会いもありました。これがなければ、僕と葉加瀬太郎さんが競演したり、あるいは後日、ゴンチチさんに僕のコンサートに来てもらったりということもなかったと思います。加古隆クァルテットの仲間と出会ったのも「ライブ イマージュ」です。自分の活動だけでは気づけなかった、いろんな可能性を教えてくれた場でした。来年、この季節になったら僕はさびしい思いをするでしょう。でも、これからはいいOBとして関わっていけたらいいなと思っています。

(写真)加古隆さんプロフィール

1947年大阪府生まれ。東京芸術大学・大学院作曲研究室修了後、フランス政府給費留学生として渡仏。パリ国立高等音楽院にて現代音楽の巨匠オリビエ・メシアンに師事。73年フランスでフリージャズのピアニストとしてデビュー。76年作曲賞を得て音楽院を卒業し、80年に帰国。代表作にパウル・クレーの絵の印象によるピアノ組曲「クレー」、テレビ番組のNHKスペシャル「映像の世紀」のテーマ曲「パリは燃えているか」、「にんげんドキュメント」のテーマ曲「黄昏のワルツ」など。50以上のCDがあり、最近はエイベックスクラシックスから「PIANO」(2006)、「熊野古道」(07)、「SILENT GARDEN」(09)などを発表。10年にはピアノ四重奏団「加古隆クァルテット」を結成、アルバム「QUARTET」を発表し、作曲家&ピアニストとしての自作品によるリサイタルを精力的に行っている。映画音楽も数多く手がけ、近年は「最後の忠臣蔵」「太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男―」を担当している。

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