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落語でご飯食べられたら十分です

飄々(ひょうひょう)とした、愛嬌(あいきょう)のある面立ちが印象的。張りのある大きな声と、軽快なリズム。聞いていると自然に噺(はなし)の情景が浮かび、グイグイ引き込まれていく。妙に心地いい落語だ。

入門から11年。21人抜きという異例の大抜擢(ばってき)で今年3月、真打ちとなった春風亭一之輔さん。真打ち披露の記者会見で、柳家小三治師匠も「久々の本物だと思った。芸に卑屈なところがない。しかも人をのんでかかっている」と大絶賛している。
(取材・文/井上理江 写真/小山昭人)

――真打ち昇進おめでとうございます。何か変わりましたか

自分は変わらないのですが、周りの目は変わりますね。二つ目までは甘えられたんです。「二つ目なのにすごいね」「二つ目なのに面白いね」と言ってもらえていたのが、真打ちになるとそうはいかない。なにせ小三治師匠や三遊亭圓歌師匠と同じ土俵に立つことになるわけですから。

――21人抜き、異例の抜擢と言われることに対しては

まあ、断るわけにもいきませんし。それに異例の抜擢といっても世間はすぐに忘れます。死ぬまで落語家をやっていくわけですから、私にとってはむしろ今がスタートという感じ。真価が問われるのもこれからだと思っています。

――3月21日から5月20日まで、単独での真打ち披露興行を行われましたが、本当に堂々とされていたのが印象的でした

師匠にも「クソ度胸がある」と言われます(笑)。もちろん緊張します。でも、座布団に座った途端、どうでもよくなってしまう。

興行初日はカミさんが来て、最終日は子ども3人も来てくれました。カミさんは一度も私の高座を観(み)に来たことがなかったので、大層感動してくれたようです。彼女が私の一番のファンです、たぶん(笑)。小学1年の長男はじっと聞いていて、4歳の次男はまだよく分かっておらず、泣く場面を聞いて「パパが泣いてた」と。2歳の長女はいきなり号泣し、それが客席に響き渡り、私にも聞こえたので「どこかで聞いたことのある子どもの声だな」とアドリブを入れました。

(写真)春風亭一之輔さんプロフィール

1978年千葉県野田市生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒。在学中、落語研究会へ入部。卒業後、春風亭一朝に入門。2カ月の見習い期間を経て前座となる。前座名は朝左久。2004年に二つ目に昇進し、一之輔と改名。同年結婚。05年岡本マキ賞受賞。08年平成19年度国立演芸場花形演芸大賞銀賞、第4回東西若手落語家コンペティション優勝。09年第19回北とぴあ若手落語家競演会大賞受賞。10年「初天神」でNHK新人演芸大賞落語部門大賞および文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞受賞。11年に真打ち昇進が決定し、12年3月21日、真打ちに昇進。単独で真打ち昇進披露興行を開催。出囃子は「さつまさ」、紋は「中蔭光琳蔦」。

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