シリアスな役から、濃厚でハイテンションなキャラクターまで、どんな役も自分のものにし、強烈な存在感を放っている竹中直人さん。映画監督としての評価も高く、今年公開された最新作「山形スクリーム」では初めてホラーコメディーに挑戦、その才を存分に発揮した。 そんな竹中さんが映画「僕らのワンダフルデイズ」に主演。様々な事情を抱える50代のオヤジたちがバンドを再結成するという大人の青春映画だ。
(取材・文/井上理江 写真/小山昭人)
8年ほど前、当時はまだ飲めなかったのですが、友人につき合って飲み屋へ行ったら、スティービー・ワンダーの「太陽のあたる場所」が流れてきて。聴いていたら何となく「オヤジたちがバンドを始める話をいつか撮れたら楽しいだろうな」とひらめいたんです。その後、プロデューサーの三宅澄さんとお会いした際に何げなく話したら、「いいねえ!」と言ってくれたので実現しました。
僕は歌うだけなので気楽なものでした。スタジオ練習に奥田民生君が顔を出してくれた時、「タンバリンをたたきたい」と言ったらやらせてくれたんだけど、意外に難しくて。それだけは言わなきゃよかったと少し後悔しました(笑い)。今回練習に励み、相当頑張ったのは段田(安則)君と宅麻(伸)君です。何しろ50歳を過ぎて初めての楽器演奏ですからね。でも、それをやりきり、しっかり自分のものにしていたからすごい。さすが役者だなと思いました。
奥田君自身が高校時代に作った曲を、オヤジになって改めて演奏するという想定のもとで作ってくれました。段田君、宅麻君が初めてということを考慮し、コード進行も一番ゆるいものにしてくれた。「キーが高い!」と言ったら、「キーを下げるとコードが難しくなるよ」と言うので、コードは変えず、高いキーのまま歌いました。
さすがに楽しそうじゃないと(笑い)。ただ、オヤジたちは演奏を楽しむために、いろんな悲しみや苦労を乗り越えているわけですが。
たとえば、娘の結婚式のシーンで「笑顔でいれば必ずいいことがある」なんて僕には言えない。代わりに出てきたのは「生きていることは奇跡だ」という言葉でした。実際40歳を過ぎると、ガンで亡くなる人間が結構まわりにいるんです。そんな現状があるだけに「そうそう笑顔でいられないよな」というのが僕の感情にあったから。とはいえ、そのニュアンスは細かく台本に書き込めることでもないので、「ここはこうしようよ」とその場で変えさせてもらいました。

1956年神奈川県生まれ。多摩美術大学卒業後、劇団青年座に入る。83年テレビ朝日系「ザ・テレビ演芸」でデビューし、テレビ、映画、舞台などで幅広く活躍。91年初監督作品「無能の人」でベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。その後、「119」(94年)、「東京日和」(97年)、「連弾」(2001年)、「サヨナラCOLOR」(05年)を監督。最新監督作は今年公開された「山形スクリーム」。役者としても注目され、「シコふんじゃった。」(92年)、「EAST MEETS WEST」(95年)、「Shall we ダンス?」(96年)で、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。96年にはNHK大河ドラマ「秀吉」で、主演の豊臣秀吉役を務め一躍国民的俳優に。近年の主な映画出演作は「まぼろしの邪馬台国」「ハッピーフライト」(08年)、「新宿インシデント」(09年)など。今年10月3日公開の「ロボゲイシャ」、11月7日公開の「僕らのワンダフルデイズ」にも出演。
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