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ひとインタビュー芝居には自分の人生が出る。小さな幸せ重ねて心豊かに 第百二十六回 木村多江さん

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執着捨てようやく女優の第一歩

凛(りん)とした美しさ、品の良さを感じさせる。柔らかな声とどこか寂しげな雰囲気のせいか薄幸な役も多いが、こちらが思わずドキリとするような迫力ある演技も見せる。今や映画やドラマには欠かせない存在感あふれる女優、木村多江さん。11月14日公開の映画「ゼロの焦点」でも、人に翻弄(ほんろう)されながらもひたむきに生きる女性を演じている。
(取材・文/井上理江 写真/小山昭人)

――映画「ゼロの焦点」を改めてご覧になった感想を聞かせてください

時代に抗(あらが)い、男性に翻弄(ほんろう)されながら生きる女性たちが、しっかり描かれていると思いました。松本清張作品の登場人物は、いい人も悪い人も行動の動機が明確なので、ついどの人にも感情移入してしまいます。私自身も観(み)終わった後、「どうしてこんなにみんな悲しいの」と切なくなりました。

――ご自身が演じる久子という女性をどんな風に受けとめていましたか

監督がフェデリコ・フェリーニ監督の「道」と「カリビアの夜」という映画のDVDを私にくださって、これらをイメージしてほしいと。全くタイプの異なる映画なのですが、どちらにもジュリエッタ・マシーナという女優さんが登場し、ひたむきに一生懸命生きる女性を演じていました。それを観て、久子像をイメージし、まずは純粋無垢(むく)であることをベースに演じようと思いました。

――久子は禎子(広末涼子)、佐知子(中谷美紀)に比べて欲がないですね

誰でも何かしら夢があり、「変わりたい」「もっとこうしたい」と思うものですが、久子は違う。人が喜ぶ姿を見て幸せを感じられる人。愛をもらうことはなかったのに、愛を与えることができる。どんなに人に裏切られても、信じることをやめない。その強さはすごいと思いました。

――印象に残っているシーンは

小学校で、中谷美紀ちゃん演じる佐知子と2人で「この道」を歌うところです。久子と佐知子の仲がグッと近づくシーンなんですが、実際に生で演じていて、グッと引き寄せられるものがあって。いまだにあの曲を聞くと、ちょっと胸がつまります。あのシーンは、実際の私が本当に過去に経験したのではないかと思うほど、自分と役との境が全くなかったんですよね。

――ミステリーなのですが、女性3人の生き様に心揺さぶられる作品です

私もこの作品を観て、何が正しくて何が間違っているのか、私はどう生きたいのかなど、改めて考えさせられました。受けとめ方はそれぞれだと思いますが、いろんなことを感じてほしいです。また、他にもステキな役者さんが数多く出演されているし、映像も美しいので、隅から隅まで楽しんでほしいです。

(写真)木村多江さんプロフィール

1971年東京都生まれ。昭和音楽芸術学院ミュージカル科卒。当初は舞台を中心に活動していたが、96年から女優としてテレビ、映画に進出。ドラマ「リング〜最終章〜」「らせん」の好演で広く注目を集める。その独特の存在感でドラマ「救命病棟24時」「大奥」「白い巨塔」「上海タイフーン」や、映画「花とアリス」「電車男」など、数多くの映画、テレビドラマ、ラジオ、CMなどに出演。2008年、初主演映画「ぐるりのこと。」では、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞、高崎映画祭最優秀主演賞など数多くの賞を受賞。特技はバレエ、ジャズダンス、タップダンス、玉乗り、日本舞踊(名取)。

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