常に時代の半歩先を行く、そう形容される人だ。
セレクトショップという言葉がなかった時代から、欧米に出かけては、自らのセンスで選んできた服を店に並べ、流行を生み出してきた。ロゴ入りトレーナーやスタジアムジャンパー、渋谷カジュアル(渋カジ)と呼ばれるジーンズと紺のブレザー……。間違いなく、日本の男の子たちをずいぶんとおしゃれにした功労者の一人である。
25歳のとき、6・5坪の店を原宿に開いた。原点は大学1年の夏、知り合いが住む米軍キャンプで見た光景だ。広がる芝生に白い家、バスケをする若者、白いジーンズ、スニーカー、バーベキュー、サーフィン。米国西海岸で洋服や靴、スケートボードを仕入れて、店にあこがれを凝縮した。「ニケというスニーカーがはやっていると聞き、それがナイキだと分かるまでだいぶかかったよ」と笑う。
開店から半年、カリフォルニアの若者のライフスタイルを特集した男性誌「ポパイ」(現マガジンハウス)が創刊された。時代の方がついてきてくれた。しかし、ポパイとともに西海岸ブームが到来するや、この人はターゲットを東海岸へ。東海岸が流行すれば、ヨーロッパへ。
半歩先、半歩先を意識するうち、店は女性服、家具、アート作品……と広がった。85年には熊本に出店、東京以外へも進出した。決して店の数を増やしたいと思ったことはないが、いつのまにか70店以上を展開する。この夏はTシャツ専門の期間限定店を広島と新潟に出した。去年からブームになっているアート仕立てのTシャツも、元をたどればこの人に行き着く。
店が提案したスタイルが、あるとき街ゆく人の多くが着るところになる。そんな「劇的変化の瞬間」がたまらない。
「半歩先」の歩幅は広すぎてはだめだ。流行に最も敏感な客の嗜好(しこう)をとらえ、その次に敏感な層をねらう。売れているものだけではなく、興味を持ったけれど買わなかったものにアンテナを張る。話題のレストランやバーやクラブには必ず足を向ける。さすがに最近は踊り明かしはしないそうだが。
ビームスはまた、住宅街やラブホテル街に店を出し、裏路地を若者が訪れるしゃれた通りに変えてきた。その力を高く評価する三菱地所は、東京駅前に02年に開業した新「丸ビル」の正面玄関脇、220坪のスペースに迎えた。いま丸の内はビジネス一辺倒から、買い物や食事も楽しめる街になりつつある。
取材の日はノーネクタイ。ボタン穴が紺色にかがられたシャツがすてきだった。50代の今、ビジネスライクにもカジュアルにもなりすぎない服装を心がける。「ファッションは仕事や肩書ではなく、夢や生きる姿勢や思いやりを表現するものだと思うのです」。自分と同世代に向けて作った丸ビルの店には、そんなメッセージを込めている。
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