「お前、ここに就職しろ」
就職活動を始めようと思っていた大学4年の時、アルバイト先の青果店の杉本利彦社長から突然言われた。
青果店といっても、丸太6本に波板の屋根を載せてビニールシートを張っただけ。夜はトラックのヘッドライトが電灯代わりの「ぼろっちい八百屋」。
親兄弟は猛反対。「一生スーツも着られず、ねじりはちまきなのか」と悩んだが、「5年後、スーパーをつくる」という言葉に心が動いた。大きな夢も、この人となら実現できると思える魅力と行動力が社長にはあった。「安定よりも夢にかけよう」。腹をくくった。
青果を売る社長の「芸」は天下一品で、「師匠」という言葉がぴったり。激安の商品を仕入れてきては、冗談を言って客を笑わせ4時間で完売。「行列のできる八百屋」と評判になり、10万円だった1日の売り上げは2年後、100万円を超えた。
商売は広がり、エンジンの止まりそうな中古の軽トラは新車の4トントラックになった。車が横転しそうなほどの野菜が毎日積まれてくる。売るそばから、また届く。売り方も工夫した。キュウリなら、3本、袋、ざる、半箱でいくら、と分ける。置く場所も変える。客の反応が変わると、わくわくした。
「顧客の心をつかむ店づくりは師匠とのこんな経験が原点。人がしない努力と創意工夫で不可能を可能にする不屈の精神が今の自分を支えている」
もう一人、「この人がいなければ今の会社はない」という人物がいる。九九プラスの親会社で電気機器メーカーのキョウデングループ会長、橋本浩氏だ。
00年の会社の設立当初、店舗を増やす資金繰りに苦しんでいた。銀行も貸してくれない。そんな時、「日常品がすべてそろう新しいコンビニ」に将来性を見込んだ橋本氏から、10億円の投資と10億円の与信を受けた。これで今のスタイルの多店舗化が大きく動き出した。
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