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追跡!フロントランナー

信念と自らの行動力を信じて、各界を疾走する「フロントランナー」たちに迫る! BS朝日の人気番組「be on TV」で放送された中から、選りすぐってお届けします。
beフロントランナーロゴbeフロントランナー 2003年3月1日付け紙面から
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人工心臓も、和歌山のたわしも、かっこよく

――デザインでモノが売れますか。高く売るための「装飾」と考える消費者も多いのでは

川崎

バブル期に、「商品の差別化」と盛んに唱えた企業に責任があります。消費者に勝手な序列をつけ、お金を持っている人にはこのランクの品を、といった横暴な選別をした。そこから抜け出さないと、モノは売れません。

――デザインとは本来、どうあるべきだと考えるのですか

川崎

ある会社で講演をした時、社長さんが、私のデザインした眼鏡をかけていた。気を利かせてくれたのだと思ってたら、「眼鏡店で一番掛け心地が良くて選んだだけ」と。デザイナー冥利(みょうり)に尽きます。消費者はこうだろう、と決めつけるのではなく、デザイナーの意志が必要なのです。

社長相手に喧嘩

――社員デザイナーにそれを求めるのは、難しくありませんか

川崎

海外企業はデザイナーを外部から起用しますが、日本では社員デザイナーが多い。だから、技術・営業部門が優先され、デザインは付加価値としてしかとらえられない。まずトップの意識を変えていかないと。でも、社員上がりでは難しい。オーナー社長でないと、デザイン主導で技術・営業を動かすようなことはできない。

――それで、喧嘩(けんか)ですか

川崎

ある大手企業に頼まれ、デザイン案を持って行きました。説明すると、社長は「で、次の案は?」と。おまえは案を出せ、決めるのは私だ、ってことです。思い切り喧嘩を売って帰ってきました。山に行くのだと思って、ドングリを採ろうか、野鳥を観察しようかと、準備をしていく。すると、浮輪片手の社長が待っている。そんな企業が多い。たいてい業績が悪化するか、倒産ですね。

――消費者の方はどうですか

川崎

日本人はとりわけ、価格で価値を測る傾向が強い。デザイン、特に工業デザインに対して、芸術やスポーツのような批評ができない人が多い。工業製品に、国が「Gマーク」でお墨付きを与えてきたグッドデザイン賞ですら、あまりにも知られていない。とりあえず、国が保証した「いいモノ」は知ってもらいたい。

利用者と対面を

――消費者と企業をつなぐカギは、何でしょうか

川崎

いま一番怖いのはサイレントカスタマー。一度買って文句も言わず、次から買わない人です。企業はユーザーとどう向き合うかが問われています。たとえばナナオは年に一度、1万人の会員ユーザーから希望者を集めた「祭り」を開き、社内の技術者と対面させます。ユーザーのいろんなアイデアを吸収する場でもあります。

――眼鏡、モニターなどが次々とヒットし、仕事の依頼が殺到しているのではないですか

川崎

いま本気で取り組んでいるのが、和歌山県の地場産品「たわし」。真剣に喧嘩しています。82歳の社長さんと何回かのやりとりの後、練り上げたデザイン案を、決定版として持っていった。ところが先方は「一週間預かって考える」。冗談じゃない。だから「いま決めてほしい。あんたが明日死んだら困る」とね。たわし業界は100円ショップの発展などで、本当に厳しい。1週間延びれば、それだけ時代から取り残される。早ければ早いほどいい。だって家族も含めれば、社員の4倍の人を抱えているわけですから。

――なぜ、たわしを

川崎

北陸での経験から、地場産業の再生に興味があります。たわし、って、生活に欠かせない。トイレや風呂、そしてもちろん体にも。暮らしのための基本のモノが、いま安価な中国製品にやられている。でも中国製の性能ってよくわからない。工業製品でも、野菜と同じ「産地直送」があっていい。また、「洗う」ということが哲学的に見えてくる。デザインの面白さがわかる一品です。

ナノテクだって

――人工心臓デザインまでも

川崎

私の背中には、事故の際の手術で金属板2枚が入っています。死んで焼かれたとき、友人たちは「川崎は体にこんなかっこ悪いモノを入れていたのか」と言うでしょう。それは耐えられない。いまは心臓が悪いので、月1回の診察を受け、発作の際の薬も持ち歩いている。もし人工心臓を入れるのなら、かっこ悪い思いはしたくない。せめて、形だけでも納得のゆくモノにしたいのです。

――デザイナーの領域が、実に広範になっているのですね

川崎

もはや学際的でないとだめ。だってナノテクにも、デザインの可能性がある。ロボット工学などの知識も必要です。大学でのデザイン教育も早く、医学並みの6年が基本にならないと。

――それにしても、好きなことに突っ走っている印象です

川崎

だって、いつまで生きられるかわからない体ですから。それに、お金にも執着がありません。もし、ビル・ゲイツが私と同じ事故に遭ったとします。世界一の金持ちでもこの体は治せません。デザインより、一番したいのは、歩く、走る、泳ぐこと。でも、どんなに金があってもできない。

――それでも「権威」です。喧嘩ばかりしていられますか

川崎

うーん。男って50歳を過ぎると、自分のいる業界の利害関係に巻き込まれます。どんどんズルく生きるようになる。私もグッドデザイン賞の審査委員長になって、そう感じます。だからこそ、あえて馬鹿をやりたい。わがまま放題で、喧嘩をふっかける。デザイン界にはまだ、私をしかったり、いさめたりしてくださる先輩や先生がいます。この方たちがいる間は少々馬鹿やってもいいかなと思ってます。亡くなられたら、本当に困りますね。

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